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café「R」〜料理とワインと、ちょっぴり恋愛!?〜  作者: 木村色吹 @yolu
第3章 café「R」〜カフェから巡る四季 2巡目〜

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《第155話》今日は貸切!

 莉子は15時となり、仕込みの準備に取り掛かった。

 今日はカフェを16時までとし、18時からは貸切。

 そのための料理の準備だ。


 まず、鳥もも肉を少し大きめの一口大に切り落としていく。

 次に、醤油、酒、たっぷりのすりおろし生姜にすりおろしにんにく、ちょびっとみりんと、塩胡椒をまぶし、揉み込んでおく。


「……で、いいかな、唐揚げだし」


 今日は珍しく三井、連藤の他に、巧と瑞樹の4人で来店だ。

 そのリクエストが、大量の唐揚げ、だった。


「でも急に、なんでこんなに唐揚げなんだろ……?」


 莉子は疑問に思いながらも準備を整え終えると、冷蔵庫の確認だ。


「……なんだっけ…ちょっとしたサラダもあったらいいんだっけ……。こういうさ、ちょっとした、とかって、あいまいで、ブチギレそう……」


 いいつつも、冷蔵庫の中には葉物野菜と根菜類が用意済みだ。


「今日はカブのサラダにしよ」


 メニューを決めた莉子は、井戸端会議に夢中な奥様方をながめながら予定を組み立てていく。


「来る30分前ぐらいから揚げていきますか……」



 時間通りに店を閉めた莉子は、4人が囲みやすようにテーブルを組み、そこに皿などを用意していく。

 他に唐揚げに合いそうなスパイス類、ケチャップやマヨネーズも準備をしておく。

 しかし今日は台風後のため、蒸し暑い。


「こんななか、唐揚げって……自殺行為だわぁ……」


 時刻を見ると17時をすぎたぐらい。


「先にサラダだけ作っておこ」


 カブをスライサーで薄くきり、葉野菜の上に並べる。

 提供する直前に、炒っておいたくるみを割りながらふりかければ完成だ。

 ガーリックフライも考えたが、唐揚げでたっぷりにんにくを使っているので、そこまでスタミナを……


「つけたほうがいいのかな……? みんな夏バテ気味……とか」


 ということで、後付けでガーリックフライを添えておくことに決める。

 時刻は17時30分になるころ。


 まずは唐揚げのための下準備だ。

 厨房にエイアコンを入れる。

 直接風が当たらないガス周りはほのかに涼しい。


「今日の唐揚げは3度揚げなので、さっそくは始めていきますかぁ……」


 フライヤーに唐揚げを入れていく。

 小ぶりでもフライヤーがあるのはかなり助かる。

 油の温度も一定に保てるし、何より大量の揚げ物にはもってこいだ。


 美味しい唐揚げのコツは、『揚げて休ませる』こと。


 1回揚げ、休ませ、また揚げ、休ませ……とすることで、衣はサックリ、お肉がジューシーに仕上がる。

 莉子は丁寧に唐揚げを揚げていく。

 だが3キロの鶏肉を揚げおえなければならない。

 これは気合の作業だ。


「あっつ……死にそう……」


 ときおり水を飲みつつ、エアコンにあたりつつ揚げ進めていると、ドアベルが鳴った。

 一旦鶏肉を引き上げ、莉子は厨房を出ると、へばり顔の4人がいる。


「お疲れ様でした。氷のラックの中にビールとカバ、冷やしてあります。お好きなのを」


 さっそくとハートランドの瓶に4人は手をかける。

 三井が手際よく栓をはずし、無言の乾杯のあと、一気に飲み干していく。


「……ぷはっ…は……今日は死ねるぞ、マジ」


 暑いの大好き三井でも、今日の暑さは辛いようだ。


「今日唐揚げなんですが、大丈夫ですか……?」


 莉子が言うが、


「そこは問題なしっ! 本当にありがと、莉子さんっ!」


 感激の顔で手を取るのは巧と瑞樹だ。


「どうしても唐揚げ食べたくって……な、巧!」


「家でもなかなか作れないからお願いしちゃって、本当にありがとう、莉子さんっ」


「でも、シニア組はげっそり顔ですね……」


 三井と連藤は食べる前から油にやられた顔をしている。


「莉子さん、もしできたら、お酢やポン酢のようなものがあると嬉しいんだが……」


 すこしでもさっぱり食べたいと表情が訴えている。


「はい。大根おろしもつけますね」


 一瞬にして連藤の顔が輝いた。

 よっぽどさっぱり食べたかったようだ。


「じゃ、仕上げてきますので」


「あ、莉子さん、手伝うっ」

「オレもオレも!」


 瑞樹と巧がついてくるので、冷蔵庫にあるサラダを出してもらったり、大根おろしを作ってもらっている間、莉子は唐揚げの仕上げにかかった。


「ちょっと高めの温度で1分ほど揚げていきますよ……」


 もう莉子の顔は油でぎっとり。

 さらに揚げ物の熱で顔が赤い。


「……できあがりました」


 大皿に盛り付けた唐揚げは、ジウジウと鳴いている。

 油の熱がまだ生きている熱々の唐揚げだ。


「さ、さっそく食べましょうか」


 いいながら莉子も席につくと、改めてビールが配られた。


「よし、今日は唐揚げでスタミナつけるぞー!」


 巧の発声で、今夜の唐揚げパーティが始まったのだった───

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