《第154話》今日も雨の日!
雨の日の日曜日。
本日の売上げはきっと『ほどほど』といったところ……
莉子は長年の経験でそう判断をつけると、今日のランチの準備に取り掛かった。
じっとりと蒸すかと思いきや、室内は意外と肌寒い。
こういう日は、少しさっぱりと、でもちょっぴりあったかいもの……
と考えて、本日のランチは、ちょっと和食に『鶏飯』。
鶏飯とは書いても、見た目は「鶏だしをかけたご飯」。
具材は鶏ムネ肉に、干し椎茸、千切り人参、あとは薬味で三つ葉といりごま、すりおろし生姜でいいだろうか。
「まず、鍋に火をかける前に鶏ムネ肉……」
鍋に水を張り、その中にそのまま鶏ムネ肉をどぼん!
「適当に火にかけて、あとは冷めるまで放置。ちょー楽チン」
その間に薬味の下準備をし、小鉢を今日は三種類。かぼちゃの煮物、きんぴら、冷奴に決め、作り終える頃には、ちょうど鶏ムネ肉も冷めたころ。
「……ほぐすのがめんどうだな、これ」
適当な大きさに切ってほぐし終えると、あとは鶏だしの素で鶏スープを作れば、準備は万端!
いつもの通りに写真に撮ったりしながら、ご飯の確認、さらに他のランチセットはビーフシチューで対応することに決め、付け合せの準備の確認、それらを終えると、莉子は手際よく店内のボードを書き換え、メニュー表に今日の鶏飯の写真を貼り付けると、オープン準備を整えた。
「……連絡きてる」
スマホを見ると、奈々美からメッセが入っている。
『今日、ランチ、遊びに行きまーす! 優といくよ』
可愛いスタンプと一緒に送られていた。
莉子も負けじとスタンプを探して、ラジャーと叫ぶ猫を押す。
『待ってますねー! 今日雨だから、気をつけてきてね』
それだけ返し、
「……一応、今日のお客2名は確保かなぁ」
そう呟いたところで、いつものアラームが響く。
10:50のアラームだ。
このアラームに合わせて店の扉を開き、オープンの看板を出す。
「しかし、ひどい雨だな」
雨足が全く弱まらないアスファルトを眺めながら、莉子はカウンターへと待機する。
雨宿りをするように、ぽつりぽつりと入ってきたお客をさばいていると、ドアベルが鳴る。
「いらっしゃい」
「莉子さん、すっごい雨!」
「わー店ん中、快適〜ちょー気持ちいいー」
奈々美と優のふたりだ。
カウンターに座るなり、今日の鶏飯に興味津々だ。
莉子はいつもサンプルを作り、写真を撮り、味見をしてから、写真を簡易プリンターで出力して、メニューに貼っている。
味の雰囲気も伝えられるし、軽く食事もできるし、もちろん写真もあるので、かなり合理的なやり方だと、莉子は思っている。
「今日の鶏飯、なんか気になるー」
優の言葉に奈々美もつられている。
「ヘルシーだし、スープ系っていいよね」
ふたりで莉子を見上げると、
「「鶏飯、ふたつ」」
「はーい」
莉子は手際よく準備をし、ひとりずつお盆に乗せて渡していく。
鶏のやわらかな出汁の香り、さらにアツアツのスープが鼻をくすぐる。
「「いただきまーす」」
早速、スープをすすったふたりの顔がほころんだ。
「めっちゃ優しい味!」
「ほんと、あったかいし、おいしい……」
各々で味のバランスを見てるのか、薬味を足したり引いたり、忙しそうだ。
莉子は別なお客のコーヒーの準備をしながら、ふたりに話しかけた。
「今日はこのあとデートとか?」
手元を見ながらの会話だが、ふたりも丼を見ながらの会話になる。
「今日はふたりでショッピングに行こうかなぁって。ね、奈々美」
「そう。あと映画とか見ようかなぁって」
「いいね〜」
「莉子さん、見たい映画とかあるの?」
「あるある。あれ、アメコミの」
「「あー」」
コーヒーができあがり、窓際の席へと届けカウンターへと戻ってくると、にやにやするふたりがいる。
「なに、ご飯足りない? おかわり、無料でできるよ?」
「ちがうって」
優の言葉に莉子は首をかしげてみる。
「ね、莉子さん、今日の上りは何時?」
奈々美の言葉にうーんと首をひねり、
「今日は5時ぐらい、かな。やる気ないし」
莉子は外の天気を眺めて言う。
「じゃあさ、あたしたちと、映画いこ! 奈々美と行こうと思ってたの、そのアメコミのやつなんだよね」
「……へ?」
「私と優は先に街に出てるから、あとで合流ね」
「はぁ……」
すぐに別のお客が来たので莉子は対応しているが、ふたりはなにやら楽しそうだ。
「ね、夜のご飯、どうする?」
「あの映画館ならさ、ここ、よくない?」
「あーいいかも、近いし」
「でもさ、こっちのほうが莉子さん気に入るかな?」
「こっちのほうがメニュー多いし、よくない?」
耳の端から聞こえてくる優しさに、莉子の顔が思わず笑顔になる。
「オーナー、なんかあった?」
「いえいえ、嬉しいことがあっただけですよ。さ、今日はなんにします? よくこの雨のなか、来られましたね」
常連たちとの会話は、天気構わず楽しいもの。
莉子は夜の予定のために、仕事を頑張ることに決めたのだった。
鶏ハムも作るんですが、半日以上置いておかなきゃいけないのが大変だったりします。
この鶏ムネの茹で方だと、鶏ハム並みのしっとり感があっていいですよ!!!
ただ中心までしっかり熱を通すのを考えると、今回丸のまま茹でてますが、多少開いてから茹でてもいいかも。
自分は少し開いて、15分ぐらい茹でましたかね。あとは放置で、激ウマな鶏ムネになりました。
茹で汁からそのまま冷ますのがポイント!
ぜひ、お試しをー
【追記】沸騰したら、鍋を火から下ろし、放置!でしっとり柔らかな鶏ムネ肉になります! 火のとおりが気になる方は、水から15分茹でてみて、調整してくださお(*ΦωΦ*)





