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café「R」〜料理とワインと、ちょっぴり恋愛!?〜  作者: 木村色吹 @yolu
第3章 café「R」〜カフェから巡る四季 2巡目〜

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《第152話》=特別編= ジム仲間とカフェでご飯です by至視点

「異世界だろうと、ここをキャンプ地とする!」の主人公至が、連藤とともにカフェに来店。

https://book1.adouzi.eu.org/n8143ep/ ←異世界キャンプ

 キャンプだったらどんな料理とワインを持っていくか。

 なぜか連藤さんとそんな会話になり、2人であーだこーだと意見を出し合う。


「メインの料理がバーベキューなら、アメリカとか、どうだろ」


 その連藤さんの意見に、


「でも、アメリカってめっちゃ度数高いから、結構ガッツリきちゃうしなぁ」


 俺はすっきり「うん」と言えない。

 確かに牛肉なら間違いなく似合う!

 ただぐびぐび飲むとそのまま死ぬので、よろしくない。


「それならニュージーとかどうです?」


 莉子さんだ。

 両手にはラムチョップのステーキだ!


「フランスはおいしいんですけど、そんなに気軽さはないし。イタリアもいいけど、例えばジンギスカンとか、そういうのはニュージーも似合うかもって」


 さらに盛られたラムチョップのステーキは香草の香りが引き立っていて、最高に美味しそう!

 さっそくと、ナイフを入れると、肉は柔らかい。

 脂身の方はカリッと火が通されていて、食感も楽しそうだ。


 断面を見ると……


「すごっ! いい焼き加減っ」


 思わず声を上げてしまうほど、表面はしっかり焼き付けられ、中は桜色にそまり、ちょうどいい火の加減だ。

 ひと口頬張ると、獣臭い匂いが一瞬するが、すぐ甘みのある脂が口に広がる。

 さらに、肉は柔らかくほろほろとほぐれて美味しい。

 塩もミネラルのある塩のよう。特別なソースはなくても、しっかりマリネされたお肉はこんなにおいしいなんて!


「めっちゃ、美味しいです、莉子さん!」


 俺が興奮気味に言うと、ワインを注ぎ足しながら莉子さんが笑う。


「それならよかった。もう店もクローズにしたからゆっくり食べてください」


 添えられたポテトもしかり、いんげんのソテーもしかり、簡単な付け合わせだけれど、とても食感よく、さらにワインによく似合う。

 ローヌのワインは個人的な意見だけど、ちょっと田舎くさいワイン。

 エレガントさはシャトーヌフぐらいになればあるけれど、普通のローヌなら、果実味いっぱいの味とスパイシーな香りが口いっぱいに広がる。

 その香りと味が好きでよく飲むけれど、こういう獣臭い肉には、本当に似合う。


「手頃な金額で、それなりの味が飲めるのがローヌの面白いところだな」


 連藤さんの言葉に思わず頷いた。


「ほんと。度数もそんなに高くないし、旨味はあるし。やっぱり、キャンプに持っていくなら、これじゃないです?」


「前、持って行ったのもローヌのワインなんだろ?」


「もちろん! 赤ワインたっぷりのカレーに合わそうと思ってたんで。でも、そこの地鶏と合わせたらめちゃくちゃ美味しくて! ほんと、あのコカトリス、もう一回食べたい」


「こか……?」


 莉子さんの声が聞こえる。

 俺は慌てて言い換えた。


「ウコッケイ!」


「なんか変な鳥の名前だから、驚いちゃった」


 莉子さんは笑いながらワインをぐいっと飲み込んだ。

 グラスの持ち方も、飲み込み方も、慣れた感じだ。

 いつもこうしてふたりで飲んでるんだろうか。


「ふたりで、いつも飲んでるの、わかります」


 聞こうと思ったのに、なんでわかるなんていっちゃったんだろ、俺。

 だけど、俺の言葉に連藤さんが笑う。


「いや、莉子さんは毎日カウンター越しに飲んでるからな」

「全部、味見ですから。店主として当たり前のことをしてるだけです」


 莉子さんが言い切ったとき、後ろからベルの音がする。


「あ、ラザニア作ったんで、それ食べません?」


 莉子さんはグラスを置くと、素早く取りに厨房へ戻っていった。


「彼女、忙しないだろ?」

「でも、連藤さん、嬉しそうっすね」

「俺は莉子さんの足音が好きなんだ。動いてる足音。彼女がそこにいるのがわかるだろ? 俺は目が見えないから、存在は音でしかないんだ。だからゆっくり落ち着いている人より、パタパタ動く人の方が俺は好きだ。彼女に出会って気づいた」


 目が見えないはずなのに、連藤さんの目は莉子さんを見てる。

 間違いなく、視線がある。


 やっぱり、このふたりの関係、めっちゃ憧れだわぁ……。


「おまちどうさま! トマト味の肉たっぷりラザニアです。絶対ワインに合うから!」


 莉子さんはさらに取り分けてくれたけど、すぐに頬張れない熱さだ。

 なんとか息を吹きかけ頬張ると、じんわりとあまくって、それでいてちょっとだけスパイシーで、食感のいい肉の形が残ってる。


「莉子さん、これも美味しいですっ」


 再びワインを飲み干した。

 飲みっぷりがよかったのか、莉子さんは笑う。


「こんなにゴクゴク飲む人、なかなかいません。至さん、お強いですね」


「へ? いや、間違いなく莉子さんの料理がうますぎるんですよ!」


「それは言えてる。俺も気を緩めて飲むと、グラス5杯飲んでることもある」


「ほぼ1本飲んでるっすね」


「そうなんだよな……ワインは翌日残りにくいからいいんだが、ほんと飲みすぎるのは注意したい」


「でも明日はお休みですから、ゆっくりしてってください」


 言いながら莉子さんは新しいボトルに手をかけている。


「この赤ワイン、ローヌではないんですけど、イタリアのワインで、味が濃くていいんですよ。ちょうどラザニアに合うのでぜひぜひ」




 ────連藤さんに連れてこられたcafé「R」は、本当に素敵なお店だった。

 リーズナブルな料理にワインが楽しめて、しかもオーナーの莉子さんは気さくな方だし、特に料理は美味しいし。


「連藤さんの会社、近くて羨ましい」


 俺の会社も近かったら、間違いなく通ってると思う。

 それぐらい、居心地のいいカフェだった。


「……次はアメリカかなぁ。がっつりしたの飲みたいな。あれなら厨二も喜びそうだしな」


 帰り道につい口走る厨二の呼び名。

 1人暮らしが長いと、独り言がかなり増える。



「はぁ……はやくスルニスに会いたいなぁ……」



 俺の願望は近々叶うのだが、そんなところで叶えて欲しくはなかったと思っている。

 会社で『魔法使い』と呼ばれることになるのは、この出来事のせい。間違いなく。

 ま、この話は、また別のときに────

特別編、完結!


異世界だろうと〜は、異世界へ行ってしまった至が、キャンプして帰ってくる話になります

気楽に読める作品です(*´∀`*)完結済み

https://book1.adouzi.eu.org/n8143ep/

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