《第151話》=特別編= ジム仲間とカフェでご飯です by至視点
「異世界だろうと、ここをキャンプ地とする!」の主人公至が、連藤とともにカフェに来店。
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「おふたりは今日、ジム寄ってきたんですか?」
その莉子さんの声に連藤さんが笑顔でこたえた。
「今日は寄ってきてないんだ。ただお腹はすかしてきてる。ね、清水さん」
「あ、はい、腹減らして来ました」
───なんか緊張してる……オレ……やばっ。
それを読み取ったのか、莉子さんが笑っている。
「ワイン飲んだら緊張とれますかね」
フルートグラスで出て来たのは、スパークリングワイン。
細かい泡がグラスで踊っている。
「今日の料理に合わせて準備してます。ただうちは大衆カフェなんで高価なワインは置いてませんから、そこはあまり期待しないでくださいね」
前菜として出てきたのは、人参のフラッペ、タコのマリネ、クラッカーにのせられたクリームチーズだ。
小さな木の皿にのせられた3品は彩りもよく、なにより、温かみのある料理だ。
連藤さんが莉子さんにもワインをすすめ、3人での乾杯となる。
「ゆっくりしてってくださいね」
言いながら離れていった莉子さんを連藤さんが見送っている。
顔はまっすぐなのに、見送ってるように見えるのが、これが愛情なのだろうか。
「今日は簡単なもので、といってあるから、そんな特別な料理はないけど、ゆっくり飲もうか」
「そうですね」
軽くつまみ、飲み干したスパークリングワインだが、しっかりと香りもあって、泡の具合もいい。
繊細な感じがのどごしにやわらかく、空きっ腹にじんわりと響く。
「こうやってゆっくり話すのは初めてだけど、清水さんってアウトドア好きなんだよね?」
「あ、アウトドアが好きっていうよりは、まあ、1人でキャンプしてる女の子と仲良くなりたいなっていう、くだらない理由で始めたアウトドアですけど、今は外でご飯を食べるのにハマってますね」
「そんなに良かったんだ」
「ええ。初めてのソロキャンプがすごく刺激的でした」
「へぇ、それは聞きたい」
連藤さんのグラスにスパークリングワインを注ぎ足した。
そこにするりと現れたのは莉子さんだ。
「清水さん、ありがとうございます」
言いながら俺のグラスにスパークリングワインを注ぎきる。
「次、白ワインを準備しているので、チーズフォンデュをご準備しました」
キャンドルで温めている器には、チーズがたっぷりと入り、くつくつと湯気が立つ。
具材は定番のブロッコリー、マッシュルーム、トマト、鶏ハムに、バゲット、それにジャガイモ。
「ジャガイモ………」
呟いたとき、ふと、連藤さんの顔がこちらに向いた。
「あ、その、初めてのキャンプに行ったときに出会った奴が、すごい芋好きで」
「なるほど。芋好きの人が刺激的だったとか?」
「そんな感じです」
──今頃、厨二の彼はジャガイモを貪り食べれてるだろうか。
栽培はうまくいっているんだろうか………。
思い出したらきりなく心配だ。
「なんか心配なことでも?」
莉子さんにつっこまれ、俺は戸惑いながらも、小さく頷いた。
「その、初めてのキャンプで会った人が、ジャガイモを育てるんだって言ってて、うまく育てられてるかなぁって」
「あー、そういうのって気になりますよね。会いに行ったらどうです?」
「いやぁ……結構(次元的に)遠いので、なかなかすぐには……」
チーズフォンデュをつまみながらの白ワインははかどってしまう。
というか、香りもいいし、味にキレがある白ワインだ。
苦味もなく、ちょうどいい温度なのもあるのか、とにかく飲みやすい。
あまり気にせず飲んでいたけど、ふとボトルを引き上げて見る。
なで肩の細いボトル………!
───これは、アルザスのリースリング!!!!
「アルザスだなんて……!」
大衆カフェなんて嘘だぁぁぁぁ!
普通、オーストラリアの安いのとか、そんな感じなんじゃないんですか!?
確かに、すんごい美味しいな、これって思ったんですけど、アルザスなら当たり前じゃないですかね!?!?
「適当は適当でも、水みたいな白ワインは飲みたくないだろ?」
そりゃそうですけど!!!!!
「やっぱりアルザスって、こう、家庭料理に合うっていうか、ドイツに近いからジャガイモとかにも合うし、私は好きで、カフェに入れてるんです」
なんなんだよ、ここ………。
絶句する俺をおいて、莉子さんが笑顔で掲げたのは赤ワインだ。
「今日、羊をいれたので、ラムチョップの香草焼きにします。赤ワインはローヌにしました!」
な、なんと!!!
ローヌのワインが飲める!!!
目を輝かせた俺に、雰囲気で連藤さんも気づいたようだ。
「清水さんがローヌ好きとは。それなら、良かった」
「手頃な値段で、料理に合いやすいし。だからよく自宅で飲んでて」
「俺もここで飲むようになって、好きになったんですよ。あ、そうだ、清水さん、初めてのキャンプの話、聞かせてくださいよ」
俺はどうはなしたらいいか、悩み考え、言葉をつなげる。
「その……車で寝られるように改造したんで、オートキャンプ場に行こうと思って。
だけど、ちょっと(次元的に)離れたところに駐車スペースがあったんで、そこで一泊しようと思ったんですよ、(異世界の)景色が良かったし。
で、ただ(異世界だったので)買い物をし損ねてしまって。だからその近くに住んでるジャガイモ大好きな人と、一緒に食材を獲りに行ったり、それこそ森の中を(瞬間)移動したり、罠にかけたコカトリスをさばいたり……。
そうそう、彼の妹にも会って、その子がまた可愛かったりで……結構刺激的な体験でしたよ!
また行けたらと思うので、やっぱ会えない間に太らないように、ジムに通い始めたのはそういう理由もあったり……」
連藤さんはふんふんと大きくうなずいた。
「やっぱり現地で食材を採って食べるというのは美味しいだろうし、清水さんは妹さんのこと、気になるんですね」
「そ、そうですね。すごく(胸が)気になります。また会いたいです」
話す俺たちを莉子さんは眺めてから、
「敬語でしゃべりあってるの、なんか面白い」
空いた皿を取り上げ、次の料理へと取り掛かりに行った。
だけどその言葉でお互いに苦笑いだ。
「こうして改まって話すのは初めてだから、敬語がいいかと選んでたんだが、莉子さんには不自然に見えてたようだな」
「とは言ったって、俺、口悪いですし」
「俺もそんないい方じゃない。気を取り直して、気軽に飲もうか、清水さん」
「そっすね!」
そう言ったところで、クリームチーズの醤油漬けが出てきた。
「まだお肉焼けないから、これと赤で飲んでてください」
空いたグラスに気を遣ってくれたようだ。
赤用のグラスが出され、ワインが注がれる。
濃い赤がグラスの縁で揺れ、好きな甘酸っぱい香り。……グルナッシュの香りがする。
「あ、ありがとうございます、莉子さん」
俺が返すと、彼女はにっこりと笑って言った。
「なんもなんも!」
「……なんも………?」
「ああ、これ、ばあちゃんの口癖なんですけど、私もよく使っちゃうんです。大したことないよーって意味」
「へぇ!」
俺が驚いていると、連藤さんは莉子さんに手で話しかけた。
「莉子さんも落ち着いたなら、赤を飲もう」
「お言葉に甘えて。お肉が焼ける頃、ちょうど落ち着くと思うので、お邪魔しますね」
こうしてはたで見ていると、ふたりの会話の仕方が面白い。
視線でアピールできない分、手をあげてアピールされてる。
ふたりの距離の近さがよくわかる。
俺もスルニスと、そんな距離感、欲しいなぁ………。
思いながら口に含んだ醤油漬けの旨さに、俺は肉を待てずにグラスを空けてしまった。
早く、肉よ来い!!!!
のんびり書いていきます。
異世界だろうと〜は、異世界へ行ってしまった至が、キャンプして帰ってくる話になります
気楽に読める作品です(*´∀`*)完結済み
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