表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
café「R」〜料理とワインと、ちょっぴり恋愛!?〜  作者: 木村色吹 @yolu
第3章 café「R」〜カフェから巡る四季 2巡目〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

152/218

《第151話》=特別編= ジム仲間とカフェでご飯です by至視点

「異世界だろうと、ここをキャンプ地とする!」の主人公至が、連藤とともにカフェに来店。

https://book1.adouzi.eu.org/n8143ep/ ←異世界キャンプ

「おふたりは今日、ジム寄ってきたんですか?」


 その莉子さんの声に連藤さんが笑顔でこたえた。


「今日は寄ってきてないんだ。ただお腹はすかしてきてる。ね、清水さん」

「あ、はい、腹減らして来ました」


 ───なんか緊張してる……オレ……やばっ。


 それを読み取ったのか、莉子さんが笑っている。


「ワイン飲んだら緊張とれますかね」


 フルートグラスで出て来たのは、スパークリングワイン。

 細かい泡がグラスで踊っている。


「今日の料理に合わせて準備してます。ただうちは大衆カフェなんで高価なワインは置いてませんから、そこはあまり期待しないでくださいね」


 前菜として出てきたのは、人参のフラッペ、タコのマリネ、クラッカーにのせられたクリームチーズだ。

 小さな木の皿にのせられた3品は彩りもよく、なにより、温かみのある料理だ。

 連藤さんが莉子さんにもワインをすすめ、3人での乾杯となる。


「ゆっくりしてってくださいね」


 言いながら離れていった莉子さんを連藤さんが見送っている。

 顔はまっすぐなのに、見送ってるように見えるのが、これが愛情なのだろうか。


「今日は簡単なもので、といってあるから、そんな特別な料理はないけど、ゆっくり飲もうか」

「そうですね」


 軽くつまみ、飲み干したスパークリングワインだが、しっかりと香りもあって、泡の具合もいい。

 繊細な感じがのどごしにやわらかく、空きっ腹にじんわりと響く。


「こうやってゆっくり話すのは初めてだけど、清水さんってアウトドア好きなんだよね?」

「あ、アウトドアが好きっていうよりは、まあ、1人でキャンプしてる女の子と仲良くなりたいなっていう、くだらない理由で始めたアウトドアですけど、今は外でご飯を食べるのにハマってますね」

「そんなに良かったんだ」

「ええ。初めてのソロキャンプがすごく刺激的でした」

「へぇ、それは聞きたい」


 連藤さんのグラスにスパークリングワインを注ぎ足した。

 そこにするりと現れたのは莉子さんだ。


「清水さん、ありがとうございます」

 言いながら俺のグラスにスパークリングワインを注ぎきる。


「次、白ワインを準備しているので、チーズフォンデュをご準備しました」


 キャンドルで温めている器には、チーズがたっぷりと入り、くつくつと湯気が立つ。

 具材は定番のブロッコリー、マッシュルーム、トマト、鶏ハムに、バゲット、それにジャガイモ。


「ジャガイモ………」


 呟いたとき、ふと、連藤さんの顔がこちらに向いた。


「あ、その、初めてのキャンプに行ったときに出会った奴が、すごい芋好きで」

「なるほど。芋好きの人が刺激的だったとか?」

「そんな感じです」


 ──今頃、厨二の彼はジャガイモを貪り食べれてるだろうか。

 栽培はうまくいっているんだろうか………。

 思い出したらきりなく心配だ。


「なんか心配なことでも?」


 莉子さんにつっこまれ、俺は戸惑いながらも、小さく頷いた。


「その、初めてのキャンプで会った人が、ジャガイモを育てるんだって言ってて、うまく育てられてるかなぁって」

「あー、そういうのって気になりますよね。会いに行ったらどうです?」

「いやぁ……結構(次元的に)遠いので、なかなかすぐには……」


 チーズフォンデュをつまみながらの白ワインははかどってしまう。

 というか、香りもいいし、味にキレがある白ワインだ。

 苦味もなく、ちょうどいい温度なのもあるのか、とにかく飲みやすい。


 あまり気にせず飲んでいたけど、ふとボトルを引き上げて見る。

 なで肩の細いボトル………!



 ───これは、アルザスのリースリング!!!!



「アルザスだなんて……!」



 大衆カフェなんて嘘だぁぁぁぁ!


 普通、オーストラリアの安いのとか、そんな感じなんじゃないんですか!?

 確かに、すんごい美味しいな、これって思ったんですけど、アルザスなら当たり前じゃないですかね!?!?



「適当は適当でも、水みたいな白ワインは飲みたくないだろ?」



 そりゃそうですけど!!!!!



「やっぱりアルザスって、こう、家庭料理に合うっていうか、ドイツに近いからジャガイモとかにも合うし、私は好きで、カフェに入れてるんです」



 なんなんだよ、ここ………。



 絶句する俺をおいて、莉子さんが笑顔で掲げたのは赤ワインだ。


「今日、羊をいれたので、ラムチョップの香草焼きにします。赤ワインはローヌにしました!」



 な、なんと!!!

 ローヌのワインが飲める!!!



 目を輝かせた俺に、雰囲気で連藤さんも気づいたようだ。


「清水さんがローヌ好きとは。それなら、良かった」

「手頃な値段で、料理に合いやすいし。だからよく自宅で飲んでて」

「俺もここで飲むようになって、好きになったんですよ。あ、そうだ、清水さん、初めてのキャンプの話、聞かせてくださいよ」


 俺はどうはなしたらいいか、悩み考え、言葉をつなげる。


「その……車で寝られるように改造したんで、オートキャンプ場に行こうと思って。

 だけど、ちょっと(次元的に)離れたところに駐車スペースがあったんで、そこで一泊しようと思ったんですよ、(異世界の)景色が良かったし。

 で、ただ(異世界だったので)買い物をし損ねてしまって。だからその近くに住んでるジャガイモ大好きな人と、一緒に食材を()()に行ったり、それこそ森の中を(瞬間)移動したり、罠にかけたコカトリス()をさばいたり……。

 そうそう、彼の妹にも会って、その子がまた可愛かったりで……結構刺激的な体験でしたよ!

 また行けたらと思うので、やっぱ会えない間に太らないように、ジムに通い始めたのはそういう理由もあったり……」


 連藤さんはふんふんと大きくうなずいた。


「やっぱり現地で食材を採って食べるというのは美味しいだろうし、清水さんは妹さんのこと、気になるんですね」

「そ、そうですね。すごく(胸が)気になります。また会いたいです」


 話す俺たちを莉子さんは眺めてから、


「敬語でしゃべりあってるの、なんか面白い」


 空いた皿を取り上げ、次の料理へと取り掛かりに行った。

 だけどその言葉でお互いに苦笑いだ。


「こうして改まって話すのは初めてだから、敬語がいいかと選んでたんだが、莉子さんには不自然に見えてたようだな」

「とは言ったって、俺、口悪いですし」

「俺もそんないい方じゃない。気を取り直して、気軽に飲もうか、清水さん」

「そっすね!」


 そう言ったところで、クリームチーズの醤油漬けが出てきた。


「まだお肉焼けないから、これと赤で飲んでてください」


 空いたグラスに気を遣ってくれたようだ。

 赤用のグラスが出され、ワインが注がれる。

 濃い赤がグラスの縁で揺れ、好きな甘酸っぱい香り。……グルナッシュの香りがする。


「あ、ありがとうございます、莉子さん」


 俺が返すと、彼女はにっこりと笑って言った。


「なんもなんも!」

「……なんも………?」

「ああ、これ、ばあちゃんの口癖なんですけど、私もよく使っちゃうんです。大したことないよーって意味」

「へぇ!」


 俺が驚いていると、連藤さんは莉子さんに手で話しかけた。


「莉子さんも落ち着いたなら、赤を飲もう」

「お言葉に甘えて。お肉が焼ける頃、ちょうど落ち着くと思うので、お邪魔しますね」


 こうしてはたで見ていると、ふたりの会話の仕方が面白い。

 視線でアピールできない分、手をあげてアピールされてる。

 ふたりの距離の近さがよくわかる。


 俺もスルニスと、そんな距離感、欲しいなぁ………。


 思いながら口に含んだ醤油漬けの旨さに、俺は肉を待てずにグラスを空けてしまった。



 早く、肉よ来い!!!!



のんびり書いていきます。


異世界だろうと〜は、異世界へ行ってしまった至が、キャンプして帰ってくる話になります

気楽に読める作品です(*´∀`*)完結済み

https://book1.adouzi.eu.org/n8143ep/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ