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café「R」〜料理とワインと、ちょっぴり恋愛!?〜  作者: 木村色吹 @yolu
第3章 café「R」〜カフェから巡る四季 2巡目〜

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《第146話》café「R」で偶然夕食大作戦!

 作戦といっても、至極簡単だ。


 奈々美の祖母以外、全員、仕掛け人となり、カフェに集合するという作戦である。


 近々お茶会があり、そのあと夕食を祖母と食べることになっているという。

 ここで奈々美には、いつも来ているカフェで食事をしようと祖母を誘ってもう。

 あとは2人が来る時間に、巧と巧の父をセッティングして、ブッキングさせようという魂胆なのだが、果たしてうまくいくだろうか……

 ま、全て偶然と見せかけ、失敗しても偶然だったからで流そう……

 そう決めた、作戦当日───



 連藤と三井はカウンターの奥に腰を据え、様子を見ることになった。

 できれば巧と父が来るのは奈々美たちより後の方がいいのではということになり、2人が到着次第、三井たちが連絡を入れる手筈となっている。


 そんな莉子だが、どんな食事を出したらいいのか戸惑うばかりだ。

 看板メニューのビーフシチューなら問題ないかと、奈々美と打ち合わせはしたが、ほかに何か足りないものはないだろうか……


「おい、莉子、落ち着きねぇぞ」

「ああ。俺たちまで焦る気持ちになる」

「うるさいな、2人とも。2人はそこで見てるだけじゃん」


 そうしているうちに、少し遅れて2人は到着した。

 どちらも渋い着物姿だ。

 祖母の着物は藍色、奈々美の着物は薄橙、どちらも初秋の雰囲気漂うお着物だ。


「いらっしゃい、奈々美さん。

 初めまして、オーナーの莉子です」


 水を運んだ莉子が祖母に挨拶をすると、口をへの字に曲げたまま、目すら合わせない。


「いつも奈々美がお世話になっているようだけど、もっと落ち着いた店のほうがいいじゃない、奈々美」


 莉子は小さく会釈をしてカウンター奥へと戻るが、これは強者だ。

 よく、あんな素直な娘に育ったものだ。


「……莉子、どうだ?」


 小声で聞いてくる三井に、莉子は笑顔を作り、

「大丈夫そうに見える?」

 首を小さく横に振るので、よしと頷いておく。


 しかし、ビーフシチューを食べてくれるか、心配……


 莉子は思いつつも、気持ちを入れ替え、準備に取り掛かった。

 ビーフシチューは1人用の土鍋で温めておき、ご飯は茸と大豆の炊き込みご飯を型にはめて皿に盛る。

 あとは小鉢を3種類準備。1つはひじきや人参が入った白和え、次にナスの田楽、あとは新レンコンの鶏肉挟み揚げを盛り付ければ完成。


「おい、莉子、その挟み揚げ、俺にもあとでくれ」

「うるさい」


 木製のトレイにそれらを並べ、まだグツグツというビーフシチューを乗せると、そっと2人の元へ莉子は運んだ。


「今日はワントレイでご準備しました。

 ご飯は、茸と大豆の炊き込みになってます。塩味です。

 小鉢は白和え、ナスの田楽、あと今日、旬のレンコンが入りましたので、そちらを挟み揚げにしました。お肉は鶏肉を使っています。

 ビーフシチューは手前にあります。お熱いのでお気をつけてください。蓋はこちらで取らせていただきますので」


 言い終えてから、そっと蓋を持ち上げる。

 熱い蒸気がふわりと舞って、香ばしいデミグラスソースの匂いが鼻をくすぐる。


「デザートは栗と白玉のぜんざいをご用意しております。

 ごゆっくりどうぞ」


 背を向けたところで、「少しは気が利くカフェね」そう声が聞こえた。

 料理の掴みはOKのようだ。

 着物のためあまり腕を大きく伸ばすのははしたないだろうと準備したのだが、少しばかり役に立てたかもしれない。


 カウンターに戻ると、連藤が携帯をかざした。


「連絡入れるぞ。多分、来るまでに20分ほどかかる」

「いいんじゃないかな」


 他のお客の料理をさばきながら、時折聞こえて来る声は、祖母のお小言。

 奈々美はそれを黙って聞いている。

 なんとも不思議な光景に見える。


「莉子さん、巧たち、もうすぐ着くそうだ」


 報告する連藤の声に、

「うん……今回の戦いは、熾烈を極めると思う…」

 莉子は静かに呟いた。



 2人の食事は後半だろうか。

 小鉢の中身もほどほどに減ったところで、真打登場!!!

 巧と巧パパである。


「久しぶりだね、莉子さん」


 入ってくるなり声をかけてくるこのダンディーさは健在。

 渋い声で挨拶をされ、莉子は緊張しながら頭を下げた。


「お久しぶりです。先日はお食事に呼んでいただき、ありがとうございました」


「いやいや。またみんなで行こう」


 言いながら巧パパはカウンターに座る三井と連藤に目配せした。

 三井が会釈をし、連藤に肘打ちすると、連藤も軽く頭を下げる。

 連藤に対する対応が意外とぞんざいなのに驚きながら、この2人のやりとりはまだまだ面白いと莉子は思う。


 一方の巧はわざとらしく、奈々美に挨拶をしていた。


「あ……奈々美…さん、も食事ですか」


 (棒)と語尾につけたいほどの、棒だ。

 カウンター組は3人で頭を抱えてみる。

 奈々美の、助けてという視線を拾うことなく、3人で項垂れていると、さすがパパ、一歩前に踏み込んだ!


「こんばんは。奈々美さん、巧がお世話になってます」


 これに答えるしかない奈々美、おしとやかに一言。


「こんばんは。こちらこそ、お世話になっております。

 こちら、私の祖母の美都里です。

 こちら、巧のお父さんの、」


「あのなんだかコーポレーションっていう、会長さんでしょ?

 知ってます。これはどうも」



 ……いや、それ知ってないし……



 多分、聞こえた全員突っ込んでいたと思う。


「横文字にすればオシャレとかいう感じですの?

 で、そちらの息子さん、うちの奈々美にくっついて、本当に迷惑してますの。

 どうにかしてくださらない?」


 おっと美都里婆さん、戦闘モードだぁぁぁぁ!!!!!


「ちょっと、おばあ」

「外ではお師匠と呼びなさい」


 ぴしゃりと言い切った。

 その声に反応したのは莉子だった。

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