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café「R」〜料理とワインと、ちょっぴり恋愛!?〜  作者: 木村色吹 @yolu
第3章 café「R」〜カフェから巡る四季 2巡目〜

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《第145話》久しぶりの開店 2

 三井だけを残して、店を閉めた莉子と連藤は、2人が来るのを待つ。

 そう、巧と奈々美だ。

 連藤は巧に連絡をし、莉子は奈々美に連絡をし、どちらも来られると判断してからは、三井を放って準備をしている。


「……おい、お前ら…別れるっていってる奴らを呼ぶって、オトナとしてど」


 三井が声をかけるも、その声は2人に届かないらしい。


「連藤さん、うちのシャンパン、これしかないんですよね」

「いや、シャンパンというならいいだろ。あとは生ハムとチーズぐらいでいいか」

「時間も時間ですしね」


「聞いてんのかよ!」


 騒ぐ三井を置いて着々と準備を進めたところで、まず、巧が。そこから5分ほどの時間をおいて、奈々美が到着した。


 不機嫌な2人を椅子に座らせ、シャンパンを配ると、


「なんかよくわかんないけど、すごいことになった2人にカンパーイ!!!」


 そう声をあげたのは、莉子だ。


「いやぁ、どんな進展があったんだ、巧」


 連藤は兄のような気分で話しかけるが、一向に巧と奈々美の機嫌が晴れない。

 2人の目は一点に集中している。



 三井だ───

 


「ちょ、三井、お前さぁ……」

「三井さん、信じらんないっ!!!」


 なじる2人をなだめつつ、おこぼれのシャンパンを飲み干した三井はにやりと笑う。



「……いつから、気づいてた……?」



 莉子と連藤は何気なく顔を見合わせると、先に口を開いたのは連藤だった。


「三井、お前が嘘をつくとき、微妙に語尾が上がる。どのタイミングとかは教えないが、そういう発音になるんだ」

「私は三井さんの小鼻。ぷくって膨らむんだよね、嘘ついたら」


 大きくうなだれた三井を巧はごつりと殴った。

 ガタイのいい三井の体がはびくりとも揺れないが、少しは気が晴れたのか、シャンパンを飲み干すと、


「俺と奈々美、婚約しますっ!」


 おおー!!! という、莉子と連藤の声が上がる。


「……ほんとは、莉子さんと連藤さんにはサプライズにして驚かそうって思ってたの」

「俺の仕事も少し慣れてきたし、お互い早くに家族が欲しいなっていうのもあって、それでまずは婚約って流れ」

「なのに、三井さんの演技が下手だから……」

「これだったら、瑞樹に頼めば良かった」


 生ハムを頬張りシャンパンを飲む2人に莉子は笑い、


「残念だったねぇ」


 莉子も同じくグラスを傾けた。


「しかし婚約します、ってことは、まだってことだよな?」


 連藤もシャンパンを飲み込み、香りを楽しみながら尋ねる。

 本来ならウキウキと話していいはずの巧と奈々美の表情がどこか暗い。


「いや、実は……その…

 莉子さん、助けて!!!!!」


 すがりついた2人が言うには、どうも何か隔たりがあるようだ。


 巧の家は、あのゴッドファーザーの父のみの父子家庭。

 奈々美の家は、両親はおらず、母方の祖母のみの祖母家庭。


 なんの隔たりがと思うが……


「私のお婆ちゃん、茶道家なの。だからか、巧の家は華美すぎるとかなんとか言って、私には合わないって……」


「うちとしては、茶道も知ってる奈々美は着物も着つけられるし、作法もできてるし、何よりオレよりも常識的で社交的だから、両手を広げて待ってるぐらいなんだけど……」


「まぁ、その、お婆ちゃんがネックなのね」


「どうにかならない!?」


 泣きつく巧をなだめつつ、莉子は両手を組んで首を傾げてみるが、自分の祖父母は遠くにいるため、さらに言えば、土いじりが大好きな2人は何事にもおおらかだ。


 いつも莉子が祖母に言われるのは、


『莉子ちゃんが楽しいなって思うことが大切なのよ』


 なので盲目の彼と付き合い始めたと言った時も、


『あら、それなら莉子ちゃんが見てない景色が見れるわね』


 なんて、哲学的なことを返された。

 何事にもポジティブで、前向きなのだ。


 そんな祖母にこのことを話したらどうなるだろう………


『心配なのね、奈々美ちゃんのこと』


 私もそうだと思う。


 莉子はふーーんとため息に似た息を吐いたとき、連藤が口を開いた。


「巧、お前はそのお婆ちゃんと話したことはあるのか?」

「したくたって、いつも門前払い」

「……ごめん」

「いや、奈々美悪くないし」


 一気に闇が落ち沈む。


 が、三井はチーズをつまみ、


「んなもん、いい大人なんだから、紙出しちゃえばいいんだよ、紙!」


 莉子に頭が叩かれたのは言うまでもない。

「結婚は家と家のつながりなの! それを無視した末路はあまりいいもんじゃないっ!!」


 小突かれる三井をかばうことなく、連藤は気づいた顔をした。


「んー……俺が思うに、お互いに話せば理解ができるんじゃと思うんだ」


「オレとお婆ちゃん!? 無理無理!」


「ちがうちがう、会長とだよ」


「オレの親父? 親父とどうやって会話させるんだよ」


 三井がずいっと体を乗り出した。


「それ、俺にいい考えがあるぞっ!!」


 シャンパンのお代わりを飲み干した三井が言った。



「『café「R」で偶然食事会作戦』だ!!!!」



 作戦も何も、そのままの作戦だが、どうミッションを遂行するのか……


 酒が足りねぇとぼやく三井を殴り、作戦会議は始まった。


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