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café「R」〜料理とワインと、ちょっぴり恋愛!?〜  作者: 木村色吹 @yolu
第3章 café「R」〜カフェから巡る四季 2巡目〜

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《第123話》莉子の苦悩 前編

 男性 甘え方


 インターネットの白いスペースに、このふたつの文字を莉子は打ち込んだ。

 すぐに出てきた記事は『かまって欲しい時は上に乗れ!』。


「なんだこれ……」


 読んでみると、ほっぺたを引っ張ってみたり、上目遣いでアピールしてみたり、上に乗ってゴロゴロしてみせたり、下の名前を何度も呼んでみる……などなど、どう実践していいのやら。


 というのも、先日連藤に言われたのだ。


「莉子さんはもっと甘えていいんだぞ」


 これの意味はどういうことでしょうか、グーグル先生……


 莉子はさらに調べていくが、ようはスキンシップを増やせということらしい。

 ただ、甘えすぎるとあざとすぎるとか、うっとうしいとか、そんな言葉も出現して、どこまで相手にしてもいいことなのかが全く見えてこない。


「よくわかんね」


 莉子はぼやくと、これから遊びにきてくれる連藤のため、クラフティを作ってみることに決めた。

 このお菓子はカスタードプティングのようなケーキで、簡単に言えばクレープ生地を流し込み、果物と一緒に焼いたものだ。

 今日の閉店は21時としているため、お客もほどほどなので、ゆっくり作業ができる。


 このクラフティに入れる果物の定番はチェリーのようだが、りんごや桃、柿やオレンジでも作れるようだ。

 だが、今回は冷凍のミックスベリーが余っているのでそれにしよう。


 冷凍庫からミックスベリーを取り出し、解凍している間に早速生地を作っていく。

 まずは溶かしバターを作るため、レンチンでバターを溶かした。

 次に乾いたボールに薄力粉をふるって入れ、さらに砂糖とひとつまみの塩を混ぜておく。

 そこに溶き卵を加えて、泡立て器で混ぜていき、黄色いまとまった生地になったら、数回に分けて牛乳で伸ばしていく。今日は生クリームの在庫があったため、多めに加えてコクを出してみよう。


 流し込む型にバターを塗りつけていく。さらにグラニュー糖をふりかけておけば、準備は万端だ。このバターとグラニュー糖が焼ける際に焦げていい風味になるのだ。

 その型に、ミックスベリーを入れていくのだが、余分な水分を取ってから大雑把に並べていく。意外とこの水分が邪魔だったりする。なぜなら溶けた水は赤紫に染まって、一緒に焼くとマーブルケーキのように黒ずんで、美味しくないのだ。


 最後の仕上げに、生地に溶かしバターを混ぜ込んでから型へと流した。

 あとは焼くだけ!

 すでにオーブンは180℃に温めてあるため、そのまま生地の入った型を入れ、まずは20分。

 様子を見て時間は追加していくが、火が入るにつれ、もこもこと盛り上がって焼ける姿は本当に可愛く、美味しそうだ。


 焼いているうちに連藤も来店である。

 いつもの通りカウンターへ腰をかけてもらうと、


「連藤さん、何か食べます?」


 莉子が声をかけるが、連藤は鼻をひくつかせ、辺りを見回した。


「……甘い香りがする」


「ああ、クラフティ焼いてみてるんです。

 あとで食べましょ」


「そうか、それは楽しみだ。

 それなら白ワインで少し腹ごしらえしたいんだが……」


「じゃあ、ポテトサラダと生ハム出しますね。

 あとはチーズリゾットでもいいですか?」


「お願いしたい」


 作り置きのポテトサラダと生ハムを切ってだし、莉子はクラフティの様子を確認しながらリゾットへと取り掛かる。

 よくリゾットはコンソメスープを入れて混ぜて、入れて混ぜてするような作り方が多いが、莉子はほぼ炊くようにして作っている。

 邪道と言われたらそれまでだが、味はまあまあ美味しいので許してほしい。


 深めのフライパンにオリーブオイルを熱しながらニンニクの風味を移していき、そこへ生米を投入。

 透き通るぐらい火が通ったら、お湯をざーっと入れるとパチパチと跳ねながら米がくっつくので、ヘラでよくほぐし、そこへ粉末コンソメ、塩胡椒、風味に白ワインを加えて蓋をする。

 様子を見ながら混ぜてやり、水分を見ながら足して、さらに蒸していく。

 少し柔らかくなってきたかなぐらいで、ピザ用チーズを投入して溶かしこみ、仕上げに生クリームを入れてひと混ぜ、さらに粉チーズを足してひと混ぜすれば、簡単チーズリゾットの出来上がり。

 皿に盛り付け、オリーブオイル、追い粉チーズと粒胡椒をふりかけ、見た目にも少しおしゃれなリゾットの完成である。


 連藤はシャルドネの白ワインを飲みながらポテトサラダをつまんでいたところで、莉子がリゾットを差し出した。


「いつもありがとう、莉子さん。今日のリゾットもおいしそうだ」


 連藤は目が見えないが、香りで出来栄えがわかる特技がある。

 今日のリゾットもなんとかうまくできたようだ。


「お米の具合とかもすごくいいと思うの。

 ゆっくり食べて」


 スプーンを差し出し、連藤に皿の縁を撫でさせた。

 場所の把握ができたのか、連藤は器用にリゾットをすくい、息で冷ましてから頬張った。


 メガネを曇らせながら、幸せそうに微笑む連藤に莉子も思わず笑みがもれる。


 今日のチーズリゾットは生クリームが効いている。コクがでていて美味しい。さらにチーズもピザ用チーズの他に余っているものを入れたようだ。風味に奥行きがある。


「莉子さん、これはワインが進んでしまう。

 濃縮されたチーズを食べているようだ」


「本当ですか?

 私もいただきますね」


 莉子も同じワインをグラスに注ぎ、チーズリゾットを頬張った。

 連藤の言った通り、適当に投げ込んだチーズの臭みがいい味を出している。

 チーズリゾットにこれほど奥行きが出るとは思っていなかった。

 さらに宣言通り、お米の芯が微妙に残っている。アルデンテという状態だ。

 これはめっこご飯ではない。アルデンテなのだ。

 この状態にできると、本当に美味しい。ただのうるち米が、高級食材に生まれ変わった瞬間だと莉子は思っている。

 次回作る時はピザ用チーズ以外に、少し匂いがきつめのチーズも加えることに莉子は決め、さらにワインとリゾットを口へ運んだ。


 あまりの旨さに当初の悩みが消えかけていた莉子だったが、クラフティが焼けたことで思い出した。


 そう、連藤に甘えるのだ。


 甘える……甘える……甘え………


「……こさん、莉子さん?」


 連藤に声をかけられ慌てて返事をするが、特段意味はなかったようだ。

 少し安心しながら、


「クラフティ、冷ましてきますね」


 莉子は厨房へと逃げたが、うまく甘えられるだろうか………

 彼女の不安は募るばかりだ。

KAYAさんよりご提供いただいたネタにて書いてみました!

KAYAさん、ありがとうございます♡

も少し続きますw

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