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café「R」〜料理とワインと、ちょっぴり恋愛!?〜  作者: 木村色吹 @yolu
第3章 café「R」〜カフェから巡る四季 2巡目〜

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105/218

《第105話》今週は定休日なし!

 火曜日が来たものの、今週は定休日を返上しての営業である。

 8日に初仕事であるのに、翌日が火曜日だからと休んでしまっては、休みすぎ!

 というより、莉子自身が落ち着かない状況に……

 これほどに長いお正月を過ごしたのも初めてであったのに、1月の営業日数が減っているにも関わらず、それを挽回せずに過ごすのも経営者として、少し恥ずかしい気もするし、さらに言えば、まだまだ在庫の作成などできておらず、営業しながら厨房を回したい希望もあったのだ。


「というわけで、夜も営業するけど、今週は夜ご飯は作れないかも」


 そういつものメンバーに告げると、がっくりと肩を落とした。

 特に落胆がひどいのは連藤だ。

 まるで絶望に打ちひしがれた自殺志願者のようだ。


「連藤、今にも事切れそうだな」三井が連藤の頬をつつくが、無反応だ。


「ちょ、れ、連藤さん……

 昨日も話したじゃないですか。

 それに、週末は来てくれます…もんね……?」


 莉子が途切れ途切れに言うと、


「もちろんだ!」即答で返って来た。


「来週は定休日がありますので、今週はごめんなさい」


「……いや、俺も少し取り乱したようだ……」


 照れつつ謝るふたりを3人は声を潜めて様子を伺うが、


「……三井、なんでこんなことなってんの?」巧が三井の袖を引き、尋ねると、


「……いや、どうも、お互いに行き来することを決めたらしいんだわ……」呆れたように呟き、


「なるほど。それで代理、取り乱してたんだぁ……」瑞樹がさらに呆れたように言葉を落とした。


 気を取り直してコーヒーを飲み込むが、三井が思い出したように顔を上げた。


「月末ごろでいいから、アメリカのワイン、飲まないか?」


 というのも今年はサンフランシスコで年越しをしたそうだ。

 そのときの友人からナパ・バレーのおいしいワインを頂いたそうなのだ。


「マジでうまいがアルコールの度数がヤバイ。

 じっくり飲める日がいいんだ」


「料理は?」


「やっぱ豪快にステーキとかがいいだろう」ここで口を挟んだのは連藤である。


「わかりました。したらTボーンステーキとかどう?」


「Tボーンってなに?」目を輝かせて尋ねる瑞樹に、


「サーロインとヒレ肉が同時に味わえるステーキのことです。

 それとフライドポテトでいきましょう!」


 莉子はカウンター内にあるカレンダーに○を付けた。

 27日である。


「勝手に日にち決めるなよ」尖る三井を鼻先であしらい、


「肉の調達に日数がいるのです……

 というわけで、27日、何が何でも夜の時間を空けること!」


 莉子が言い放つと、それぞれに返事が返ってくる。

 よしよしと思っていたところで、瑞樹が少し萎れた顔を浮かばせている。


「瑞樹くん、どうしたの?」


「あー…うん、そのぉ……」


「はっきり言いなさい」


「うん。そのね、12日の夜、優ちゃんとデートで、莉子さんに挨拶兼ねてご飯食べたいねって言ってたんだけど、……無理だもんね…?」


 彼女たちにも新年の挨拶をしなければなぁ……

 莉子は数秒間考えたのち、


「いいよ、ご飯、作るよ。

 ただ簡単なのになるけどいい?」


 子犬のように大きな瞳を輝かせ、ありがとうと言われると嫌な気はしないものだ。


「瑞樹に甘いんじゃねーの?」巧がふてくされたように言うが、


「ま、今週は臨機応変。基本夜はご飯作らないという感じで。

 さ、もうすぐ昼休みも終わるんじゃないの?」


 それぞれに時間を確認しだし、唸りながら立ち上がった。


「「「「あー……サボりたい………」」」」


 4人の意見がこれほどまでに揃うとは珍しい。


 莉子は小さな生チョコを1個ずつ手渡し、

「気分転換の時に食べてください。その生チョコおいしいんだよ」


 巧と瑞樹はチョコにつられて少し元気が出たようだ。

 連藤はいつもどおり微笑んで、「コーヒーとともにいただくよ」その声音に思わず莉子の耳が赤くなる。

 自身もこの条件反射をどうにかしたいとは思っているが、なかなか治らないのである。

 三井はそんな莉子を鼻で笑い、「俺もコーヒーと一緒にいただくわ」胸ポケットにチョコを入れ、歩きだした。


「三井さん、胸ポケット入れっぱなしだと、チョコ溶けるから出してね!」


 莉子の声は届いただろうか……

 ドアが閉まる前には言った気もするが……



 —————翌日。


「莉子、お前、クリーニング代払えよ!」


「言ったもん、私言ったもん!」


「大人気ないぞ、三井……」


「でも莉子のチョコで俺のスーツが潰れたのは本当だろうが!」


 年が明けても変わらない関係で何より。だが、喧嘩はほどほどにして欲しいと思う連藤だった。

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