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café「R」〜料理とワインと、ちょっぴり恋愛!?〜  作者: 木村色吹 @yolu
第3章 café「R」〜カフェから巡る四季 2巡目〜

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《第104話》はつしごと。

 1月8日、本日より、お仕事始め!

 通常の時刻、朝の6時にセットされた目覚ましで強制的に起きると、お互いに身支度を整え、一緒にマンションを出て仕事場へと向かった。

 なんとなく気恥ずかしい感じもしたが、一緒に手をつないでの出社も面白いものだ。


「今日のランチ、何がいいでしょうか」


 何の気なしに言った莉子の言葉に、


「今日は少しスパイスの効いたものが食べられたら嬉しい」


 連藤のその一言により、『本日のランチセット』が決定した。

 スープカレーである!

 胃もたれ気味なところに、香辛料で喝を入れるのだ!


 冷え切ったカフェに震えながら、暖房をガンガン回し、鍋を火にかけていく。

 お湯でもなんでもいいのだ。とにかく火があればいい。

 まずは厨房だけでも暖かくならなければ……


 野菜を凍える指先で切りながら、フライヤーが温まったので、スープカレーの具となる野菜たちを素揚げにしていく。今回入る具は、鶏手羽肉、ゆで卵、ゴボウ、人参、じゃが芋、ピーマン、エリンギになる。

 手羽は圧力鍋で煮ておいておくことにし、ほかの野菜類は予定通り、油へと投入していく。

 これらの下準備ができていれば、あとは注文が来たら各食材を鍋に放り込み、カレースープで煮れば、簡単スープカレーの完成である。

 しかしながらスープカレーのスープ、どう作るか一生懸命に考えたのだが、今はありがたいことに素が売っている。

 これがまたかなり美味しい!

 簡単鶏ガラスープにその素を溶かし、若干オールスパイスを足して風味を本格的に作り上げ、完成とする。

 ランチにつくサラダやデザートなどを確認し、一通りの準備が整ったところで開店である。


 さっそくと近所のおじいちゃんが来店し、挨拶と一緒にコーヒーを出したところで、OLさんの集団が来店。

 彼女たちはビーフシチューのセットとパスタセットのご注文だ。

 しかしながら本日は祝日のはずなのに、新年の挨拶出社なのだろう。

 夕方メインのサラリーマンの面子もランチに現れた。

 彼らはカレーの匂いに誘われてか、スープカレーを選ぼうとするが、スープカレーの食べ方がよくわらないということで、パスタセットになったようだ。


 そうしているうちに、黒塗りの車が駐車場へとゆっくり入って来た。


「「莉子さん、あけおめ!」」


 少し小麦色に焼けた巧と瑞樹だ。


「あけましておめでと。今年もどうぞよろしく。

 さすが南国帰りですね。いい色がついてます」


「結構焼けないように気をつけたんだけどなー」

 瑞樹は自身の肌を見て言うが、


「あれだけ毎日泳いでたらさすがに焦げるだろ」

 巧が突っ込む。


「よぅ、莉子、連藤との年末年始、どうだったよ?」

 挨拶もほどほどにさらに色黒く染めてきたのは、三井である。


「莉子さん、今日のランチはカレーなのかな?」

 我関せずの連藤だが、このメンバーの中にいると、色白を超えて、透明感も増している気がする。


「本日はスープカレーにしました。

 ご飯はターメリックライスね。サフランなかったんで」

 連藤を席に案内し、他のメンバーも席に着くと、


「俺はスープカレー」連藤が口火を切った。


「俺も同じの」三井が続き、


「したらオレも」巧が手をあげ、


「え、みんな同じ? おれもなのにぃ」瑞樹はしぶしぶとスープカレーと告げた。


「じゃ、4つ準備してくるから。少々お時間ください」

 莉子は水とカトラリーを揃え、彼らの席に備えると、すぐさま厨房へと向かっていく。


 その後ろ姿を眺めながら、巧が口を開いた。


「スープカレーってどうやって食べる派?」


 これは長年論争になっているものでもある。

 みなそれぞれ腕を抱え想像するのだが、


「オレはご飯をスプーンに乗せてから、スープに浸す派」巧が自身の食べ方を披露すると、


「おれはね、ご飯はご飯。スープは飲む感じ」瑞樹が続く。


「俺はスープをご飯にかける派」三井が水を飲みつつこたえると、


「俺は具材を食べ終えたらご飯を入れておじや風に食べる」


 連藤のその回答にメンバーは声を失った。

 彼が、美食家と思っていた彼が、そんな雑な食べ方をするなどとは……!

 唖然としながらも、三井は思い出したのか、


「確かに、莉子ん家で食ったとき、お前、ご飯ガバって入れてたな……」


「なんかそれ、汚くね?」巧が単刀直入にいうが、


「俺としては、具材とご飯と交互に食べるのが難しいんだ。

 目が見えていれば楽なんだろうが、野菜も大きいものが多く、口に運びづらい。

 さらに言えば、かなり熱いスープが最初に出てくる。それをズルズルと啜るのも難しいんだ。

 であるなら、熱々の具材を先に頬張り、具の旨味が溶け出たスープにご飯を投入し、汁ごと食べるのが美味しく、しかも綺麗に食べきれる手段となる」


 3人が、なるほど〜と感心したところで、スープカレーが4つ届いた。


「連藤さんのスープカレー、お肉だけほぐしてます。

 野菜類はほどほどの大きさに整えましたけど、大丈夫です?」


「問題ない。そこまでしてくれてありがとう。

 かなり食べやすいよ」


 さっそくと4人は武器を手にするが、スプーンを持つ者、フォークを持つ者、連藤のようにフォークとナイフを持つ者、しっかり手に携えてスープカレーに挑んでいく。

 水を注ぎ足しに来た莉子に、巧がご飯のおかわりと、1つ質問を投げた。


「スープカレーの食べ方ってあるの?」


 莉子はえーといいながら厨房へと潜り、皿にご飯を盛り付けて、再び現れたが、まだ首を捻っている。


「スープカレーって、微妙な立ち位置だよね。

 スープのくせに、カレーっていう……

 だからか、こう食べろってものはなくって、それこそ、巧くんみたいにスプーンにご飯のせて汁を浸す人もいるし、連藤さんみたいにドボン派もいるし、どれも美味しく食べれたら正解なんだと思うよ?」


「ちなみに莉子さんは?」瑞樹が尋ねると、


「私はご飯にスープをかける派。三井さんと同じ食べ方だね」


 新しいお客が来たのか、莉子は笑顔で言い残し、去って行った。


「食べ方はそれぞれ。うまければいいんだ」

 そういう連藤のスープにはご飯が浸されている。

 なかなか見慣れない食べ方だが、美味しいのならと、それぞれにまたスプーンを口に運ぶのだった。

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