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織田家の長男に生まれました  作者: いせひこ/大沼田伊勢彦
第二章:安城発展記【天文九年(1540年)~天文十三年(1544年)】
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小豆坂前夜

信広視点の小豆坂導入部分です。


首尾良く親爺から金を引き出した俺は、すぐに安祥城の修理と改築に取り掛かった。

先に使者を城に出してあり、人夫を集めるように指示をしている。


日当は一日40文。前世の金額で言えば4千円だ。

学生バイト並みの賃金だけど、調べたら他国はこの半分以下らしいから、十分だろう。

その上で、握り飯二つと魚のすり身を入れた味噌汁が昼につく。


安祥城に帰ると、城の周りに居る人の多さにまず驚かされた。

留守居の古居ふるいに聞けば、千人近く集まったのだとか。


飯代合わせても一日5百万円の出費だ。大丈夫、問題無い。


まずは城壁の修理をしてから、と思っていたけど、思ったより人が集まったので、城の改築と周辺の開発も同時に進める事にする。


安祥城は森と深田に囲まれている。深田と言えば聞こえは良いけど、実際はただの湿地帯だ。それを土を盛ったり丸太で囲ったりして、適当に田んぼっぽくした所に稲を植えているだけだ。

それで収穫量が安定しませんって、まぁ、そりゃそうだろうな。


そんな訳で区画整理をしつつ田畑を再開発。

城の周囲には防御施設を設置したいから、むしろ丁度良い。


人足を少人数のグループに分けて、それぞれを競わせる。最も早く作事を終えたグループには追加で報奨を払う。

前世の歴史において秀吉が城壁の修理に用いたとされる手法だけど、問題無い。だってまだ秀吉生まれてないか、生まれてても幼児の筈だ。

良い先人の知恵は(まだ起こってない出来事だけど)借りないとね。


忠政さんの娘と広忠の結婚で結ばれた弾正忠家と松平家の和睦が、いつまでも続くと思う程、俺も前世ボケしていない。

明日手切れとなっても対処できるように、できる限りの事をしておかないとな。


それからトイレは決められた場所でのみするよう指示も出す。

これは今後、安祥城周辺を統治するとなった時、汚物をあちこちに撒き散らされないようにするための下地造りだ。

景観が悪くなるのは勿論だけど、疫病の原因にもなるからな。


一応糞尿を集める仕事も募集しておく。


当然、清掃のためだけじゃない。肥溜めを作って肥料としたり、硝石丘を作ったりするためだ。


硝石の作り方をぼかして親爺に伝えたけど、向こうで研究が始まるかどうかはわからないし、こちらでも独自に研究しておいて損はないだろう。

謀反を疑われないように、清掃活動の建前を用意した訳だしな。


……余計怪しいな。いっそ堂々とした方が良いか?


城の周囲にはかなり広い範囲まで空堀を掘らせる。基本はこのまま運用する。

藁と土で隠して落とし穴みたいにするのもいいな。

水を通して何か魚でも養殖してもいいんだけど、そのためには大規模な治水工事が必要になるからな。

それならそのリソースは田畑の開発に注いだ方がいい。



それから暫く、俺は親爺から貰った金で可能な限り開発を続けていた。

足りなくなったらまた催促だ。

歩き巫女を使った諜報活動を始めたらしいし、寺に孤児院を併設した施設の建設も行っているそうだ。


灰吹き法はまだ確立できていないみたいだけど、銅塊を買い集めていると聞く。

水車小屋が一つできたそうだけど、一体そこで何をするつもりなんだろう。何か活用できそうな事あったか? この時代の日本に。


とにかく、俺が伝えた知識を使って弾正忠家の国力が上がり始めた訳だ。

つまり、俺がお小遣いの追加を要求しても断られない状況ができあがりつつあるって事だ。



年が明けて田植えが終わった頃、親爺が兵を率いてやって来た。

最初はまさか俺を討つつもりなのか!? と戦々恐々としたけど、先に入城した使者の書状によると、今川が三河に向けて出陣したのでそれに合わせて出てきたらしい。

動かせる兵、一門衆総動員といった感じで、かなり豪華な顔ぶれだ(弾正忠家比較)。


歓待ついでに資金の追加の要請をしておく。


「五千貫を追加してやる。その代わりお前も兵を出せ」


追加予算なのに元の予算より多額の金が貰える事になった。ついでに出兵しろと言われた。


「今川が動けば松平も動かねばならぬ。お前はそれを抑えよ」


「決戦はいずこで?」


この時期だと小豆坂かな?


「矢作川を渡ってすぐに布陣し今川軍を迎え撃つ。お前は松平勢が動いてから川を渡り、これに横やりを入れよ」


「動かなかった場合は?」


位置的に小豆坂じゃないな。小豆坂合戦とは別の戦なのか、それとも歴史が変わったのか。

あるいは、実際は設楽原だったのに長篠の戦いと呼ぶように、小豆坂付近で戦ったから小豆坂の戦いと呼ばれるようになるのか。


「後詰として控えておれ。万が一に儂らが撤退する時には殿を任せる」


「はは」


さり気に重要で危険度の高いポジションを押し付けられたな。


「それと精製した火薬を持参したので好きに使え」


「硝石が作れるようになったのですか!?」


「そちらはまだだ。硝石は買った。どうやら火薬を欲していたようだったでな、どのように使うか儂に見せよ。別に今回の戦でなくても良い」


「かしこまりました」


木箱一つ分くらいかと思っていたけど、まさか3トンもの火薬をタダで貰えるとは思わなかった。

弾正忠家の財力マジパねぇ。


ちなみに第一次小豆坂の戦いは8月、もしくは12月と資料にあったので、間を取って10月にしてみました。

お陰で今川が異常に鈍足。多分、遠江や東三河を視察しつつゆっくり来てるんでしょう。

小氷河期とは言え、そのため信秀は真夏の炎天下に野営し続ける事に。

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― 新着の感想 ―
[一言] この流れでいくと、桶狭間(田楽狭間)の戦いって起きるんだろかw
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