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5.遊びもトレーニングになるよ

 作業時間が終わり、昼食の時間になった。生徒たちはそのまま製織所で昼食をとった。よく子供に作業を手伝わせているのか、製織所の食堂の席に半分以上は生徒が座っていた。


 食事後、製織所に来た時と同じ、学生たちは先生に連れられて学習所に帰った。そして、先生に最近この辺に魔物が出ているから気をつけてなどと注意された後、放課になった。


 今ツワトたちは早朝の時と同じ、家に向かう途中お喋りしながら道を進んでいる。


 「お兄ちゃん、あとでいっしょに遊ぼう」


 「いや、遊ばない」


 「ええ! なんで?」


 「今朝はシハトのせいで俺はトレーニングできなかった。だから俺は午後の時間を全部トレーニングに使うつもりだ。というわけで1人で遊べ」


 「1人は嫌、いっしょに遊ぼうよ」


 シハトは諦めずにツワトの袖を引いて強請った。


 「いや、だから午後は……」

 「たまにいっしょに遊んであげたら?」


 ツワトが再び断ろうとしたら、デツィが割り込んできた。


 「アンタがトレーニングしているのをいつも見かけるのに、私は一度もアンタがシハトといっしょに遊んでいるところを見たことはないよ」


 「それは当然だ。俺は一度もシハトと遊ばなかったから」


 …………


 「じゃ、ツワトの午後の予定はシハトといっしょに遊ぶことに決定!」


 暫しの沈黙後、デツィが宣告のように言った。


 「おい! 俺は遊ばないと言っただろう!」


 「シハト、私もいっしょに遊んでもいいか?」


 デツィはツワトを無視してシハトに話しかけた。


 「えっ? ……もちろんいいよ! でも……」


 シハトは一瞬状況を飲み込めずにいたが、理解すると興奮気味に返事した。しかし、すぐに元気がなくなってツワトの顔色を伺った。


 「心配しないで、ツワトは私が説得するから」


 そう言ってデツィはツワトの方に向いたが、ツワトは自分を無視した上、自分の予定をも乱そうとするデツィに抗議せんとばかりに不貞腐れた面持ちで待っていた。


 「俺はいっしょに遊ばないぞ」


 「まあまあ、私の話を聞いてから決めても遅くないでしょう」


 「じゃ早く言え、その方が俺も早く断れるから」


 デツィは一瞬ムッとしたが、一回深呼吸して冷静になった。


 「ツワト、アンタはいつも誰かを守るためにトレーニングしていると言っているよね」


 「そうだ! わかるなら俺のトレーニングの邪魔をするな」


 「いや、邪魔などもちろんしないさ、もしアンタがいっしょに遊ぶならむしろその手伝いになるよ」


 「どういうことだ?」


 「シハト、あとは何して遊ぶ?」


 デツィが回答せずにシハトに話しかけた。そのせいでツワトはまた無視されたと思って抗議したところ、デツィが「ちょっと待って」と返事した。それで無視じゃないとわかったツワトは大人しく待つことにした。

 しかし、やはり不満があるのか、ツワトは不愉快といわんばかりの表情をしている。


 「まだ決めてない」


 「じゃ鬼ごっこにしよう」


 「いいけど、なんで?」


 「その方がツワトは遊んでくれるからよ」


 こんな曖昧な回答に誰が何を言う前、デツィが続けて理由を説明し始めた。


 「ほら、ツワトは普段から鍛えているから身体は同い年のみんなより十分に逞しいでしょう。でも目的の「誰かを守る」に必要な技術は全然ないし、実際に誰かを守った経験もない。

 そこでツワトに他の人を守りながら鬼ごっこをやってもらえば、ツワトにとって訓練になるし、シハトにとってもお兄ちゃんと一緒に遊ぶことができると思って鬼ごっこにしたんだ」


 「おお!」

 それを聞いたシハトは感激の声を上げてすぐ期待のこもった目でツワトを見ている。


 「そうだな、言われてみれば俺は確かに技術も経験もないな」


 「で、どう? いっしょに遊ぶ?」


 「もちろん遊ぶ、むしろこっちから頼みたい」


 「だって、シハト」


 「やったああ! ありがとう、デツィちゃん」


 シハトは嬉しさのあまりぴょんぴょん跳ねてデツィに抱きついた。


 「どういたしまして。ジェンはこのあとどうする?」


 話が一段落し、デツィが蚊帳の外に置かれたジェンに話しかけた。


 「そうですね……今日の授業で先生が教えてくれなかったせいで、余計にその部分のことを調べたくなりました」


 「たしかに前も似たようなこと言って図書館で資料を探していたよね。今日もそう?」


 「いいえ、無駄なので探しません」


 「無駄?」


 「前、探そうと司書さんに聞きましたが、まだ成人してないから閲覧禁止と止められました。そして、こっそり読もうとあちらこちら探しましたがそれらしい本は一冊も見つけられませんでした。多分全部別のところに保管されて司書さんに出してもらわないと読めないでしょう」

 ジェンは残念そうに項垂れてため息をついた。


 「この様子じゃどっちみち成人しないと禁止されるよね、それなら今のように落ち込むより気分転換として一緒に遊ばない?」


 「そうですね、一緒に遊びましょう」


 こうしてツワトたちは遊ぶ約束をし、一旦各々の家に戻って規則に定められた「家事のお手伝い」をこなすのだった。

 そして、再び集まって鬼ごっこを始めた。鬼が何回交代して、おいかけっこも何回繰り返された頃、シハトは今鬼であるデツィを撒いて隠れようと自分を守る形でついてきたツワトといっしょに路地裏に入った。

 しかし、そこには先客である全身血まみれの男と血溜まりで仰向けに寝る女の子がいた。

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