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第九十一話 結婚式

<1932年11月>


 高城蒼龍と安馬野和美の結婚式がおこなわれた。高城蒼龍31歳、安馬野和美24歳だ。


「あんた、結婚とか考えないって言ってたけど、教え子に手をだすなんて、サイテー」


 リリエルがいやらしい笑顔で言ってくる。


「教え子って訳じゃないだろ。安馬野の気持ちにも、ずいぶん前から気づいてたし、このまま放置してたら、彼女も婚期逃しちゃいそうだしね・・・」


「なーに言い訳じみたこと言ってんの?本当は嬉しいくせに!私、わかるんだからね!これで私を“おかず”にしなくても済むわね!」


「くっ、このビッチ天使め」


 実際、今世では結婚をするつもりは無かったのだが、黒海の時に見せた安馬野の弱さと、高城への好意に“きゅんっ”と来てしまったのだ。高城は、意外と“チョロ”かった。ちなみに、安馬野が高城の胸で泣いた夜は、あれ以上のことは何もなかった。


 結婚式・披露宴の後は、友人達との二次会が行われた。昭和初期に於いて、結婚式の後の友人との二次会など当然無いのだが、高城蒼龍はどうしても二次会をしたかったのだ。


 場所は、宇宙軍本部の大会議室を使用した。宇宙軍の施設は、福利厚生目的なら実費にて利用することが出来たので、公私混同というわけではない。


「結婚おめでとう!かんぱーい!」


 大岬太郎の音頭で乾杯をする。宇宙軍の創立メンバーは、学生時代に戻ったように楽しんだ。ロシアからは、有馬公爵が来日している。そして、なんと、アナスタシア皇帝もお忍びで来ていたのだ。


※黒海で使用する予定だった九十二式大型飛行艇が余っているので、与圧区画に内装と座席を追加し、ロシアの政府専用機として使っている。今では、北樺太から東京湾まで5時間足らずで移動できる。


ただし、警護は厳重だ。宇宙軍本部の周りには、試製ナイトスコープを装備した狙撃兵が配置されている。ネズミ一匹入ることは出来ない。


 ちなみに、高城蒼龍の妹の桜子は、今は大岬太郎と結婚して大岬桜子になっている。


「和美さん、お兄様のことをよろしくお願いね。お兄様は、ああ見えて甘えん坊でおっちょこちょいなところがあるから、よく手綱を取ってあげてね」


 桜子は、極度のブラコンだった。小さい頃は偶然を装って、兄がお風呂の脱衣場にいるときに入っていき、ドキドキを楽しんだりした。夜中に起きて、兄の布団に潜り込んだりもした。兄と結婚するのが夢だったが、今の法律では出来ないことを知ると、兄より優れた人じゃないと結婚しないと言って、両親を困らせた。その頃の桜子の口癖は、蒼龍が書いた(盗作した)小説の影響で「兄より優れた男などおらぬ!」であった。


「は、はい、一生懸命頑張ります!」


 蒼龍と和美は、そろってアナスタシア皇帝に挨拶に行く。


「皇帝陛下。お越し頂き誠に感謝いたします」


「高城男爵、和美さん、そんなに畏まらないで。私たちは“ともだち”なんだから。それに、男爵も和美さんも、私やロシアにとっては大恩人ですもの。お二人の仲が永遠であるように、ロシアと日本の仲も、私たちの友人関係も永遠だわ。これからもよろしくね」


 和美は、アナスタシアの美しい笑顔と言葉に感動し、涙を流す。私の夫は、何て素晴らしい“ともだち”をたくさん持っているのだろう。


「そうそう。気を遣わなくていいよ、和美さん。しかし、こんな美人さんが高城君のお嫁さんになるなんてね。高城君は、昔から女性に興味を示さなかったから、友人一同心配してたんだよ。結婚も同期の中じゃ最後だしね」


 有馬公爵が高城を“いじる”。


「あんたはもう少し気を遣いなさいよ!」


 有馬の脇腹にアナスタシアの肘が軽く入る。この二人も“おしどり夫婦”だ。


 そして、会場に天皇の侍従が入ってきた。陛下が到着されたと高城に告げる。天皇も“お忍び”で会場を訪れたのだ。


 天皇が会場に入ってくる。一同は起立して、天皇の入場を迎えた。


 宇宙軍の創立メンバーはもちろん動じないが、その奥方達は緊張でカチンコチンになってしまった。一般人にとって、天皇陛下は天上のお方だ。直接見てしまうと不敬になるのではないかと、奥方たちは皆“礼”をしたまま頭を上げない。


「みなさん、頭を上げて下さい。今日は、高城君達のただの友達ですよ」


 天皇はにこやかに皆に声をかける。本当は良子ながこ皇后も同席したかったのだが、身重みおものため、参加は見送っている。


「高城君、和美さん、ご結婚おめでとう。高城君は、結婚は考えないと言っていたが、和美さんの魅力に参ったようだね」


「陛下、恥ずかしいじゃないですか。もう10年も前の話ですよ」


 和美は、天皇陛下と気さくに談笑をする夫をみて、尊敬の念を新たにするのであった。


「天皇陛下、お久しゅうございます。先般の日露安全保障条約の件、誠にありがとうございました。ロシア国民を代表して感謝を述べさせて頂きます」


 アナスタシア皇帝が天皇に挨拶をする。


「皇帝陛下。我が国は“友人”としての務めを果たしただけです。これからも、ソ連の暴虐を封じ込め、世界平和の為に協力していきましょう」


 天皇は、一通り挨拶を済ますと、高城の所へ歩み寄る。


「高城君。今日はこの辺りで失礼させてもらうよ。良子(皇后)が待っているからね。全てが終わったら、その時はみんなで飲み明かそう」


 天皇は満面の笑顔で高城の顔を見る。高城は、その笑顔の奥の決意を読み取った。


「はい、陛下。必ず全てを終わらせ、誰もが安心して生きていける世界にします」


 二人は固く握手を交わすのであった。


第九十一話を読んで頂いてありがとうございます。

結婚しちゃいましたね。「高城達の戦いはこれからだ!(完)」みたいな雰囲気で・・いや、まあ、まだまだ続きますけど・・


完結に向けて頑張って執筆していきますので、「面白い!」「続きを読みたい!」と思って頂けたら、ブックマークや評価をして頂けるとうれしいです!


おもしろくない!と思ったら「★☆☆☆☆」でも結構です!改善していきます!


また、ご感想を頂けると、執筆の参考になります!


「テンポが遅い」「意味がよくわからない」「二番煎じ」とかの批判も大歓迎です!

歴史に詳しくない方でも、楽しんでいただけているのかちょっと不安です。その辺りの感想もいただけるとうれしいです!


モチベーションががあがると、寝る間も惜しんで執筆してしまいます。


これからも、よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] 世の中を平和にするためには、ロシア・中国はもちろんの こと、アメリカも滅ぼさないといけない。それだけじゃな いぞ。悪魔に味方する人間も滅ぼさないといけない。何人 始末しないといけないか知って…
[良い点] 高城さん、和美さん結婚おめでとう。 お幸せに。 深い友情で結ばれたロシアのような友邦国があるというのは良いですね。 天皇陛下の登場にはやはり感動してしまいますね。
[一言] >「は、はい、お義姉さま。一生懸命頑張ります!」 →結婚相手の妹は『義姉』ではなく『義妹』では?
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