表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/452

第五十六話 清帝国樹立(1)

 遼東湾に上陸した清帝国軍は、奉天に向けて進軍を開始した。上陸に当たっても進軍途中も、張作霖軍の抵抗はなかった。


 張作霖は、奉天に戦力を集中し、決戦に於いて清帝国軍を撃滅する作戦を立てる。そして、満洲全土に配置された各地方軍の司令官と25万の兵士に、奉天への移動を命じたのだが、ここで、張作霖にとって大きな誤算が生じる。


 各地の地方軍が、誰一人奉天に駆けつけなかったのだ。


「くそっ!あいつらめ!調子の良いときだけすり寄ってきて甘い汁を吸ったくせに、いざというときは裏切りか!」


 張作霖は地団駄を踏む。


 もともと、満洲に存在する北洋軍閥軍とは、軍隊と名前が付いているが、地方の馬賊(自警団や地方有力者の私兵)の集合体であった。だれも、張作霖に忠誠など持っていない。


 さらに、事前にKGBと宇宙軍ルルイエ機関の調略が浸透していた。馬賊の頭目には、清帝国樹立後は武装解除と引き替えに、身の安全とある程度の地位を保証する事を約束して、既に恭順させていたのだ。


 清帝国陸軍7万は、何の抵抗もなく奉天まで迫った。奉天に立てこもる張作霖軍は2万人足らず。勝敗の行方は明らかだ。


 そして張作霖の元に、愛新覺羅顯㺭(川島芳子)が清帝国軍参謀本部の大佐として訪れる。


「初めまして、張閣下。清帝国軍大佐の愛新覺羅顯㺭です。清帝国皇帝陛下と蒋(介石)司令官からの親書をお持ちしました」


「ふん、誰かと思えば、川島芳子か。お前の養父(川島浪速)も清の復活に躍起になっていたな。あの廃帝(愛新覚羅溥儀)に、本当に国家の舵取りが出来ると思っているのか?それに、もうすぐ満洲全土から援軍が到着する。そうすれば、形成は逆転するぞ。余裕を持っていられるのも今の内だけだ」


 張作霖は、精一杯のブラフを言ってみる。


「閣下、本当に援軍が来ると思っているのですか?」


「なんだと?」


「満洲の全ての頭目達は、既に我々に恭順しています。閣下をお助けに来ることは、未来永劫ありません」


「ばかな!お前達は既に手を回していたというのか?だから、連中は命令に従わなかったのか?」


「はい、閣下。戦いとは、火ぶたを切る前に勝敗は決するものです。偉大なる漢民族の先人、孫武の書いた“孫子の兵法書”にもあるとおりです」


「そうか。最初から我々に勝ち目は無かったのだな・・・・。頭目達の調略もお前がやったのか?」


「はい、ボクが立案し実行させました」


 本当は高城蒼龍からの指示だが、細かいことは言わなくても良い。相手が自分たちのことを、敵わぬ脅威と認識すれば成功だ。


「ふん、ずいぶんな雌狐に成長したものだな」


「褒め言葉として頂戴いたします」


 そして、芳子は張作霖に親書を渡す。張作霖はすぐに開封し、芳子の目の前で読み始めた。


「内容については聞いているのか?」


 張作霖が芳子をにらむ。


「はい、閣下。内容はボクが草案を作ったので、もちろん知っています」


「何?これもお前が作っただと?」


「はい、ボクが作りました。つまり、そういう事です」


 蒋介石からの親書は、北洋軍閥を率いて恭順すれば厚遇するという内容だった。また、愛新覚羅溥儀からの親書の内容も、ほぼ同じものだ。


「閣下には、3つの選択肢があります。我々に降るか、蒋司令官に降るか、もしくは、ここで戦って死ぬかです」


 芳子の表情には、微塵の不安も無い。張作霖にとって、芳子を捕縛して見せしめに処刑することなど造作も無いことのはずだ。しかし、芳子からは絶対の自信がにじみ出ている。その表情は“これを全て計画したのは私だ、そして、お前の殺生与奪の権利も握っている”と言わんばかりだ。


「しかし、私が軍を率いて降ったとしても、いつか寝首を掻かれるとは思わないのか?」


「清帝国では、有能な人間を必要としています。民衆から吸い上げるだけだった馬賊を駆逐し、そして、民に安寧をもたらし富ませることで、国家の安全と発展を手に入れることが出来ます。その理想を、閣下はご理解頂けると信じます。その為に、閣下のお力を使って頂けないでしょうか?」


 張作霖は腕を組んでしばらく思案している。


「いや、やはり蒋介石の方に行くとしよう。満洲人にこき使われるのはこりごりだ」


 こうして、張作霖は配下の部隊を引き連れて、蒋介石に降ることになった。


 ――――


 張作霖は、地方の馬賊にも声をかけたが、ほとんどの者はついてこなかった。みな、今支配している土地を手放したくないのだ。結局、蒋介石に降るのは、張作霖とその部隊だけだったが、家族も引き連れていくので、まあまあな人数になった。


 移動の日。


 張作霖の部隊が、移動途中で略奪をしないように、十分に食料を与えて送り出す。兵士の家族も移動するので、その数は5万人以上に及んだ。


 ――――


 愛新覚羅溥儀は、清帝国の首都となる“長春”に家族とともに入った。溥儀はそこで、市民と清帝国軍、そして関東軍の歓迎を受けた。


 溥儀は思った。


『やはり、民衆は私を待ち望んでいたのだ!』と


 ――――


 そして、宇宙軍にて清帝国憲法の草案が作られた。内容は、ほぼロシア帝国正統政府の憲法と同じだが、より明確に皇帝の権限を制限している。これは、伝統的に中華思想では、権威と権力の合理的な分離という発想が無いため、皇帝が政治に介入する可能性を排除したのだ。


 ※中国に於いて権威と権力が分離するケースは、王朝末期で帝位の簒奪が行われる直前くらいだった


第五十六話を読んで頂いてありがとうございます。

史実でも、張学良は日本軍に対して無抵抗で退却しましたし。戦闘は少ない方が良いですね。


完結に向けて頑張って執筆していきますので、「面白い!」「続きを読みたい!」と思って頂けたら、ブックマークや評価をして頂けるとうれしいです!


おもしろくない!と思ったら「★☆☆☆☆」でも結構です!改善していきます!


また、ご感想を頂けると、執筆の参考になります!


「テンポが遅い」「意味がよくわからない」「二番煎じ」とかの批判も大歓迎です!

歴史に詳しくない方でも、楽しんでいただけているのかちょっと不安です。その辺りの感想もいただけるとうれしいです!


モチベーションががあがると、寝る間も惜しんで執筆してしまいます。


これからも、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] この頃の愛新覚羅家には霊的護衛の、法術士は 居なかったので音量怨念はモロに来たのだろうな! 日本では天皇家には護衛の陰陽術師がいるので 害念は防がれてるよ?ヨーロッパの王家は子飼いの 魔法使…
[良い点] 満州国か、、、 ロシア帝国正統政府もあるし、長くもつかも。 今の日本は宇宙軍のおかげで予算も潤沢だし、 史実とは大違いだからな。
[気になる点]  実際に住んでるのは漢族なんですから、選挙をして国民党や共産党が勝っちゃったらどうするの?、と思います。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ