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鉄血女帝アナスタシア 第十五話

大日本帝国宇宙軍 第二巻 絶賛発売中!

イラストはもちろん湖川友謙先生です!


挿絵(By みてみん)


帯のコメントは湖川先生と紫電改三四三などを執筆されております須本壮一先生の御両名から頂きました。


挿絵(By みてみん)


ご購入頂けると嬉しいです!


 放課後


 私はルスランに“職員室に行ってくるから門の前で待ってて”と伝えて講堂の裏に急いだ。やっと蒼龍の協力を得ることが出来るわ。これで家族も、ロシア国民も救えるはず。


「待たせたわね、蒼龍。ここなら誰も聞いていないわ。率直に言うわよ。あなたの知識を使ってロシアを助けて欲しいの」


 蒼龍はちょっと口をへの字に曲げて私を見ている。なんだかムカつく表情だわ。


「俺の知識と言っても10歳の知識で何か出来るとは思えませんが?まあ、成績は常にトップですけどね」


 何か嫌みなやつね。蒼龍ってこんなやつだったかしら。ちょっと不安になってきた。


「何言ってるの?あなたが21世紀から転生してることは知ってるのよ!ここなら誰も聞いてないんだから隠す必要は無いわ。私も2002年から転生したの。あなたの実験で私の魂のコピーをコンピューターに取り込んで、それでオリジナルの魂が何かの手違いでこの時代に戻ったのよ」


 ※コンピューター 当時は計算機・計算尺・計算を生業にする人という意味で使われていた


 蒼龍は自分自身が過去に戻ったときに、自分の存在する時間軸しか遡れないと言っていた。それなら2002年の私が存在した時間軸なら蒼龍は必ず前世の知識を持っているはず。


 それなのに、蒼龍はキョトンとした表情で私を見ている。そして何か頭の中で考えを巡らせているような難しい表情をして、


「それがあの“脅迫”の中身ですか?ちょっと妄想が甚だしすぎますよ。そんな事が現実に起こるはずはないでしょう?」


 え?嘘でしょ?なんでそこまで隠すのよ。


「じゃ、じゃあなんでそんなにロシア語が出来るのよ?10歳でロシア語の出来る日本人なんて存在しないわ!」


「俺は自分で言うのも変なのですが、いわゆる天才なんですよ。ロシア語は日露戦争のころ習志野の捕虜収容所からロシア軍士官の方をお呼びして教えてもらったんです。父が技術士官だったので、ロシアの技術を学ぶためにね。それに、英語とフランス語ドイツ語もできますよ。公女殿下だって日本語とフランス語と英語が出来るって挨拶で言ってたじゃないですか。いっしょですよ」


「わ、私は転生したからよ。10歳で多言語を使えるなんて普通は無い。ねぇ、ここには私と蒼龍しか居ないのよ。隠す必要なんて無いわ。お願い、前世の記憶があるって言って」


「申し訳ありません。何度も申しますが俺には何を言われているのかわからないのです」


 私は言いようのない不安に襲われる。胃がキリキリと痛み出して吐き気がしてきた。体中に冷たい汗をかいているのがわかる。


「ねぇ、嘘って言って。“ごめん、アナスタシア。ちょっと意地悪をしただけなんだ”って。それとも、記憶が封印されてるの?何かをすれば思い出すの?」


「おそらく、アナスタシア様が知っている蒼龍と俺とは別人だと思います。それに、手紙の通り欧州で戦争が起きたりロシアで騒乱が起きたりしても俺や日本とは関わりの無いことです」


 関わりが無い?自分たちだけが安全ならそれで良いってこと?前世の蒼龍なら絶対にそんな事は言わない。本当に別人なの?


「なんで・・・そんなに他人事なの?みんな死んじゃうんだよ!何千万もの人が殺されるのよ!目の前で家族みんな殺されたことがあるの!?野犬に喰われてる赤ちゃんと母親の死体を見たことがあるの!?皮と骨だけになって餓死した死体の山を見たことがあるの!?このままじゃ、みんな殺されるのよ!お姉様達も・・・・たくさんの国民も・・・・・・ううう・・・・お願い・・・・助けて・・・・ねぇ蒼龍・・・・あなたにはその力があるんでしょ?ロシアを助けてくれるんだったら、私の命だってあげる・・・・・・、お願い、蒼龍、お願いだから助けて・・・・・」


 本当に転生者じゃないのかもしれない。転生していたとしても前世の記憶が無いのかもしれない。それでも一縷の望みを信じて蒼龍にすがりつく。両手で蒼龍の制服を掴んで強く揺さぶった。だって私には蒼龍しか頼れる人が居ないのよ。蒼龍が前世の記憶を持って無いんだったら、みんな、みんな殺されちゃうのよ。


「みんな死んじゃうの!私の目の前で殺されて、ルスランは私を守る為に命を捨てて・・・・そんなの嫌!絶対に嫌!なんとかみんなを助けたいの。だから・・・お願いします・・・蒼龍様・・何でもします・・・・私のこのか、体もあげます・・・・だからお願い・・・助けてください・・・」


 私の目からは止めどなく涙があふれ出している。これは絶望の涙だ。これから一人で戦っていかなきゃいけない。でも、未来に何が起こるか知っていても、私一人じゃみんなを、世界を救えないのよ。


「公女殿下、残念ですがそんなモノでは協力できませんよ。俺はロリコンじゃないのでね」


 えっ?“ロリコンじゃない“?


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― 新着の感想 ―
まぁ、ロシアの文豪(笑)ウラジミール・ナボコフが『ロリータ』をおフランスで出版するのは1955年ですからねぇ。1910年にロリコンという言葉は・・・。
まぁ蒼龍からしたら「コイツ、何者だ?」と警戒するでしょう。 でも、現代でしか通じない言葉をポロッと零してしまいましたねw 蒼龍、本編でも結構やらかしてましたからねぇw
更新お疲れ様です。 おろろ、なんだか風向きがおかしくなってきましたかね? アナスタシアが、あまりにも混乱して身体を差し出すなんて言っちゃってるし。 蒼龍もかなり警戒しているようだけど、ちょっと待って…
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