鉄血女帝アナスタシア 第十四話
大日本帝国宇宙軍 第二巻 絶賛発売中!
イラストはもちろん湖川友謙先生です!
帯のコメントは湖川先生と紫電改三四三などを執筆されております須本壮一先生の御両名から頂きました。
ご購入頂けると嬉しいです!
「そうでしたか。それほどまでに・・・・。皆も知っての通り、ロシア皇帝の四女のアナスタシア様だ。6年前の日露戦争では戦った相手だが“昨日の敵は今日の友”という言葉もある。今日から皆と一緒に勉学に励まれる。日露の友好のためにも仲良くするように」
「初めまして、アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァです。憧れていた日本に来ることが出来てとても嬉しく思っています。みなさん、仲良くしてくださいね」
私は涙を流しながらもニッコリと微笑んで西洋風カーテシーをした。日本式なら頭を下げるのだろうけど、ここはみんなが見たことの無い西洋風の挨拶がいいわよね。
教室を見回すと、一番前の真ん中の席にミッチーが座ってる。その隣が私の席でその隣が勝巳だわ。そしてミッチーのすぐ後ろが蒼龍だ。そのほかに宇宙軍のみんなが座ってるわ。
あんまりジロジロ見たらちょっと失礼かもしれないので、出来るだけみんなを見回すようにして笑顔を振りまいたわよ。クラスを代表してミッチーが挨拶をしてくれた。聡明そうなお子様ね。育ちが良いのがわかるわよ。
ん?
ミッチーの制服、破れてる?肘の所に当て布がしてあるわ。どういうこと?ここって皇族と貴族だけが通う学校よね。しかも皇孫なのに制服がボロボロ?今の日本ってそんなに貧しいの?いや、さすがにそんな事は無いはず。これって勝巳の言っていた、日本人が三度の飯よりも大好きっていう“倹約”なのかしら?ロシアじゃ考えられないわね。貴族の子弟は身なりをきっちりとすることを求められるのよね。そうじゃ無いと平民にバカにされるって思うから。貴族や皇族の女は街に奉仕活動に出ることが時々あって、その時はさすがに質素なナース服のような白い服を着るのだけど、当然新品か新品同然の物を用意させるのよね。皇族が破れた服で人前に出ることなんかロシアではあり得ない。でも、こういう質素な所が国民から愛される所以なのね。
「はじめまして、迪宮殿下。わからないことがたくさんあると思うから、いろいろと助けてね」
すぐに勝巳に声を掛けたいのだけど、まずは皇族の礼儀として皇孫殿下のミッチーに挨拶をした。ミッチーは「こちらこそよろしくお願いします。公女殿下」と言って顔をまっ赤にしている。かわいい。続いて反対の席を見て同じように挨拶をした。10歳の勝巳だ。本当に可愛いわ。このまま連れて帰ってしまいたい。ロシア帝国の力でなんとか出来ないかしら?
その後みんなと一緒に授業を受けた。先生から何回か答えを求められたから完璧に返答してやったわよ。みんなの驚く視線が気持ちいいわ。ふふん。
授業の合間の“業間”って言うのかしら?その間、誰も話しかけてくれない・・・。勝巳もミッチーもガチガチに緊張しているのがわかるわ。私が視線を向けるとみんな顔を背けるのよね。日本人の男の子ってちょっと奥ゆかしすぎない?
授業中、勝巳が消しゴムを落としてそれが私の足下に転がってきた。それに気付いた私は優雅な所作で拾い上げて勝巳の方を見る。そして消しゴムについたホコリをフッと息をかけて払ってから勝巳の席に置いてニッコリと笑みを送った。子供って好きな異性の気を引くためにわざと消しゴムを落としたりする事があるけど、そうなのかしら?もう私の魅力にメロメロなのね。顔をまっ赤にしているわ。かわいい。
みんなが緊張している中で蒼龍だけは違った。私が蒼龍を見ると、きっちり視線を合わせてニコッと笑みを返してくれる。やっぱり中身は10歳じゃないわね。よかったわ。ここまで来て蒼龍がただの10歳の子供だったらどうしようかと思ってた。見た目は子供、頭脳は大人で安心したわよ。
そして私は蒼龍に話しかけた。
「ちょっと蒼龍、あなたに話があるんだけど」
(Эй, Сорю, мне нужно с тобой поговорить.)
「なんでしょう?お嬢さん」
(Что такое, юная леди?)
思った通りだわ。10歳でロシア語を理解する日本人なんていない。間違いなく高城蒼龍は転生者ね。
「放課後、講堂の裏に来てくれないかしら?誰にも聞かれたくない話があるの。このままロシア語で大丈夫?」
「大丈夫ですよ。話とは、あの脅迫文のことですか?」
「ダー」
私はニヤッとした笑みを返して前を向いた。勝巳は初めてあったときにロシア語を使えたけど、それは初等部を出て御学問所に入ってから勉強したって言ってたからまだ蒼龍との会話は理解できていないはず。周りのみんなはちょっと不思議そうな表情で私を見てる。
ああ、勝巳、これは浮気じゃ無いからね。勘違いしないでよね。




