鉄血女帝アナスタシア 第十二話
大日本帝国宇宙軍 第二巻 絶賛発売中!
イラストはもちろん湖川友謙先生です!
帯のコメントは湖川先生と紫電改三四三などを執筆されております須本壮一先生の御両名から頂きました。
ご購入頂けると嬉しいです!
ミッチー(迪宮)との結婚話はお父様が暴走してるけど、絶対にそれは出来ない理由があるのよね。だってお母様の家計は血友病の遺伝子持ちだから、それを伝えたら間違っても后になんて事にはならないもの。アレクセイが発症してるけど今は極秘にしている。それを隠して后を送り込もうとしたってバレたらちょっと問題になりそうね。でもしばらくして血友病だったと判明したって伝えれば大丈夫かな。それにこの時代の日本って純血主義が強いから、外国からの后なんてかなり反対がありそう。めんどくさいことに巻き込まれたくは無いわ。
その後晩餐会が開かれ、乃木希典将軍や元老の方々とも挨拶をした。みんなおいしそうにお酒を飲んでたから私も飲みたくなるわよね。こっそり飲もうとしたら見つかって全力で止められちゃった。やっぱり10歳の体は不便ね。
「公女殿下、旅順で戦ったステッセリ将軍が現在も収監されているとのこと、誠に残念に思っております。彼ほど国と兵士の事を考えていた将軍は他におりません。将軍の名誉が回復されることを強く願っております」
乃木希典将軍。露日戦争でステッセリ将軍率いるロシア陸軍を降伏に追い込んだ勇将よね。今は学習院の院長先生をしている。ものすごいおじいちゃんに見えるけど、確かまだ60歳のはず。この時代の人って本当に老けるのが早いわ。
ステッセリ将軍は旅順攻防戦で敗退し、日本軍に降伏したのよね。戦後、降伏したことが罪に問われて死刑判決を受けたけど、今は減刑されて懲役10年になって服役中のはず。日本軍に降伏したのは確かだけど、総指揮官にはその権限が与えられているんだから罰するのはおかしな話だと私も思うわ。私はお父様に減刑の嘆願書を書くことを乃木将軍に約束した。
「乃木将軍。一つ私からも願い事があるのですが何とぞ叶えて頂けないでしょうか?」
お酒が入ってちょっと頬が赤くなっている今なら受け入れてくれるかな?
「何でしょう?公女殿下。小生に出来ることでしたら何でも大丈夫ですよ。あ、それともう将軍ではないので院長とお呼びください」
よし!言質はとった!
「ありがとうございます、乃木院長先生。それではお言葉に甘えさせていただきます。留学中、院長先生のご自宅に住まわせて頂けますでしょうか?そしてその間、私を実の娘だと思って頂きたいのです」
乃木院長としては正直複雑な話だろう。息子二人をロシア軍に殺されているのだ。息子の仇ともいえるロシア皇帝の娘を、ホームステイとして受け入れて欲しいと迫っている。でも、だからこそなのよ。ロシアと日本の和解と友情の証として、是非とも受け入れて欲しいの。
私は渾身の目力を込めて乃木院長の目をまっすぐに見た。この目を見てもらえれば嘘偽りの無いことが解るはず。私は本気よ。
乃木院長は一瞬時が止まったかのように私の目を見て固まってしまった。おそらく様々な思いが駆け巡っているのだろう。
「それは・・もちろん大歓迎でございます。家内も喜ぶでしょう。子供4人を全て失ってからふさぎ込むことが多くなっておりました。公女殿下のようなかわいらしい方をお迎えできるのは望外の喜びです」
私はその返答を聞いて優しくほほえんだ。
「ありがとうございます、お父様」
◇
「姫様!聞いておりません!大使館ではなく日本人の家で生活するなど皇族としてあってはならぬ事です!」
「あーうるさい!ルスラン!もう決めてきたのよ!乃木院長は人格者で立派な方よ!露日友好のためにも絶対に必要なの!」
大使館に戻って乃木院長の家にホームステイすると伝えたところルスランが激怒してしまった。晩餐会でも部屋の隅で控えていたのだけど、私が日本語で話しているから内容を理解していなかったみたい。もちろんそれを狙ったんだけどね。
「姫様!警護はどうなさるおつもりですか!?送り迎えは大使館の馬車を派遣しますが、家の中の安全が担保できません!」
「家の中で何かあるわけないじゃない!そんなに心配ならルスランも一緒に来てよ!院長には話を通すわ!あなたも軍人なら乃木将軍に教えを請うと良いわ!本当に立派な方なのよ!」
「えっ?私もですか?」
「そうよ!男同士お風呂で背中を流し合ったら?日本のお風呂はゆっくり浸かれて気持ちが良いのよ」
「な、な、な、何をおっしゃるのですか!姫様!」
ルスランが顔をまっ赤にして抗議してる。恥ずかしいのか怒ってるのか微妙ね。公式には男で通してるんだから最後まで男を通しなさいよって言ったらちょっと意地悪すぎるかな?でもクソ真面目なルスランをからかうのもちょっと面白いかも。




