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鉄血女帝アナスタシア 第七話

大日本帝国宇宙軍 第二巻 絶賛発売中!

イラストはもちろん湖川友謙先生です!


挿絵(By みてみん)


帯のコメントは湖川先生と紫電改三四三などを執筆されております須本壮一先生の御両名から頂きました。


挿絵(By みてみん)


ご購入頂けると嬉しいです!


 そして一ヶ月後 サンクトペテルブルク モスコーフスキー駅


 皇族専用のお召し列車が0番ホームにとまっている。私はルスランに案内され、専用の入り口からそのホームに向かった。


「アナスタシア、本当に行っちゃうのね。日本の王子と結婚するってホントなの?」


 お父様は来ては居ないが、お母様とお姉様方が見送りに来てくれている。みんなちょっと心配そうにしているのだが、すぐ上の姉マリアだけは好奇心に溢れた顔をしている。


「マリアお姉様。それはデマです。そんな目的で行くわけじゃないのよ」


 姉妹の仲でも一番仲の良いマリアが興味津々という顔で手を握ってきた。12歳のこの姉は、私が日本の王子と恋仲になる事をワクワクしながら期待しているのよね。ちょうど色気づくお年頃だけど、ちょっとウザいわ。


「アナスタシア、気をつけてね。無事に戻ってくるのよ。ルスラン、アナスタシアをよろしくね」


 お母様も心配そうにチークキスをしてきた。私もぎゅっとお母様を抱きしめる。


「お母様、心配しないで。これは国のためにも必要なことなのよ」


 お母様には私の夢見のことは話していない。革命が起こってみんな殺されてしまうと聞かされたら、おそらく平常心では居られないだろう。だから、日本の皇室と友誼を結ぶためと説明してあるのよね。


「でも先生ラスプーチンはその必要は無いだろうって言っているのよ。日本は野蛮な国だから皇帝陛下のように暴漢に襲われるんじゃないかって。やっぱり心配だわ」


 お母様が心配なさるのは理解できるのだけれど、それが“ラスプーチンが言うから”というのがやっぱりダメね。これからラスプーチンは国政へもどんどん口を出すようになって国が混乱していくのよね。


 そしてお母様達との別れを済ませて列車に乗り込む。


「姫様。多くの国民が見送りに来ておりますよ」


 駅のホームには近衛兵や王宮関係者しか入れないが、その規制線の向こうには多くの市民が見物に来ていた。皆手を振っていて笑顔だ。


 私はその人たちに笑顔で手を振り返す。でも私は知っている。この笑顔の人たちは数年後、私たちに憎悪と怒りと銃口を向けて来ることを。


 しっかりしなきゃだめね。人は豊かになればそれを壊すような革命や戦争をしなくなる。現状の生活と革命の混乱とその後の生活を天秤にかけて、現状の方が良いと思えば人は革命など起こさない。それが“合理的思考”。蒼龍の言ってた通りね。この人達は今の生活に概ね満足している。だから革命なんて起こそうと思わない。でも、戦争によって疲弊して、明日食べるパンすら無くなってしまったら革命に身を投じても仕方がないのよね。


「姫様、お辛そうな顔をされていますが、やはり日本に行くのは不安でしょうか?先帝陛下の夢見とはいえ、10歳で留学するのはやはり私も心配でございます」


 ルスランが少し顔を曇らせて私の手を引いてくれる。私のことを心配してくれるのは心からありがたい。


「ううん、大丈夫よ。日本に行くのが不安なんじゃなくて、今私たちに笑顔を向けてくれている人たちも、本当に疲弊して食べるパンすら無くなったら私たちに牙を剥いてくるのよ」


 ルスランはハッとした表情を浮かべて民衆の方を見た。そして何かを感じたのか大きく息を飲み込む。


「この者達が牙を・・・・」


「そうよ。だから、国を安定させ民を豊かにすることこそ私たちの使命なの。その為に日本に行って、協力を取り付けなければならないわ」


「それが、高城男爵のご令息ということでしょうか?」


「そうよ。あのクソ野郎の首根っこをひっ捕まえて無理矢理にでも私の“トモダチ”にしてみせるわ!」


 手紙じゃ重要な事を書けないことは理解できるけど、あんな冷たい手紙は無いわ!あいつ、革命が起こって私の家族が死んだ方が良いって思ってるのかしら?


「首根っこを押さえつけて友情がはぐくまれるものなのでしょうか?」


 ああ、ルスラン。そんな残念な人を見るような目で見ないで。涙が出ちゃう。


「姫様。そういえば数日前にお手紙を出されていましたが、高城様への先触れでしょうか?」


「ええ、とっても大事な内容を送っておいたから、これで私のことを無視なんか出来ないわ。ククク」


「姫様、悪い笑みを浮かべてますよ」


 蒼龍からの返事があまりにも素っ気なくて腹が立ったからもう一度手紙を送ってやったわ。“お前の秘密をバラされたくなかったら私の言うことを聞け”ってね。これを開封したときの蒼龍の顔を想像するとちょっと楽しくなって来ちゃった。


 そして出発の時間になった。列車は大きな汽笛を鳴らしてゆっくりと走り出す。私は東京に着くまでの行程を頭の中で思い浮かべた。もうすぐ勝巳に逢えるのね。胸が高鳴ってしまうわ。列車はシベリア鉄道を通ってウラジオストクまで行って、そこから巡洋艦に乗り換えて津軽海峡経由で東京に入るのよね。合計21日間の旅。私の体調を考慮して余裕を持った旅程とはいえ長すぎるわ。私が死ぬ直前の2000年には航空機で半日程度しかかからなかったのに。宇宙だと半日あったら冥王星まで往復できるのよ。やっぱり科学の進歩は重要ね。何としても蒼龍の協力を取りつけないと。


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― 新着の感想 ―
いや、このanother story (?)、もう滅茶苦茶面白いです。この世界のアナスタシアが誰とくっつくのか、今から楽しみです!
更新お疲れ様です。 なんだか脅迫めいた内容のようですが、アナスタシアはあのブチギれガン泣きのあとで、手紙をもう1通蒼龍にだしてたんですね(苦笑) さすがは、100歳のロリババアですね(笑) 彼女を心…
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