鉄血女帝アナスタシア 第二話
大日本帝国宇宙軍 第二巻 アマゾンや楽天市場で予約出来ます!
イラストはもちろん湖川友謙先生です!
帯のコメントは湖川先生と紫電改三四三などを執筆されております須本壮一先生の御両名から頂きました。
ご予約頂けると嬉しいです!
翌日
「ルスラン、この手紙を日本の学習院初等科に通っている高城男爵の嫡男に届けて欲しいの。名前は蒼龍様よ」
「日本の貴族にですか?」
ルスランは手紙を受け取ってあからさまに困った顔をしている。そりゃそうよね。ずっと宮殿で育ってきた私が日本の男の子の事を知ってるなんて不自然すぎるわ。
「そうよ。この蒼龍様もあなたと同じように夢で会ってるの。だから内緒で送ってくれないかしら?」
この時代でも既に国際郵便は普及している。海底ケーブルでウラジオストクと日本は繋がれているので電信もつかえないことは無いのだけど、それこそ秘匿性は皆無ね。それに、電信代金はとても高いので、私が個人で使うことなんか出来ない。時間はかかってしまうけど国際郵便しか無いわね。日本とは既に第二次露日協約が結ばれていて国交に問題はない。露日戦争で悪化した関係も、満州権益の分割とアメリカの干渉の拒絶という共通利益によって今では友好国と言っても良いくらいになっている。間違いなく届くはず。
公女からの信書なので検閲はされないとは思うけど、万が一を考えて蒼龍なら解る、蒼龍にしか解らない内容で認めた。
『高城蒼龍様 そして おっちょこちょいな天使様 へ』
内容は概ね以下の通りだ。
・血が止まらなくなる病気の治療方法を教えて欲しい。
・今後起こるかも知れないヨーロッパでの大規模な戦争とロシアでの騒乱を防ぐにはどうすればよいか?
・近いうちにどこかで会うことは出来ないか?
私の弟、ロシア帝国皇太子のアレクセイは血友病を発症している。その治療法が無いため、お父様とお母様は神秘主義に傾倒してしまい怪僧ラスプーチンを引き込んでしまった。この男とお母様との醜聞が報道されて国民の心がさらに皇室から遠ざかってしまったのよね。
そういえばあのラスプーチンとお母様って本当にヤッてたのかしら?貞淑そうなお母様がそんな事をするなんてちょっと信じられないのだけれど。
ラスプーチンのアレは33センチもあったらしい。そんな事を書いてある文献を読んだことがあるのだけど、それをお母様が・・・・
うぇ
気色悪いことを想像してしまった。ちょっと酸っぱいモノがのど元まで登ってきてしまったわ。
それに比べれば勝巳のはささやかだったわね。いやいや、そんな事はどうでも良い事よ。東京に郵便が届くまで約二週間。そこから返信が来るとしても早くて二週間。一ヶ月は先の話ね。その間にロシアの現状を調べないと。
ルスランに命じて現状のロシアの状況を調べさせた。前世ではこの時期は当然子供だったので何も知らなかったし、大人になってからある程度学習したけど残っている文献からしか情報を得ることは出来ない。つまり、表面的なことしか知らないのだ。しかし、今なら生の情報が手に入るはず。蒼龍の助力をもらう前でも出来ることはあるはずよ。
「姫様。ご指示のあったレーニンとスターリンの現状が解りましたので報告いたします」
二週間ほど経過して、ルスランが調査してくれたことを報告に来た。
「レーニンは現在パリに居住しているようです。ただ、ボリシェヴィキの活動は下火になっており、党員も最盛期の10分の1ほどに減っています。政府もそれほど問題視はしていないようです」
1911年当時はロシア第一革命から6年が経過し、国民の革命への熱は冷めていたと言って良い。実際、ストライキの発生回数も激減していたのだ。
「なるほど。レーニンは解ったわ。スターリンは今何をしているの?」
国外に居るレーニンにはすぐに手を出し難い。労働運動も下火になっているそうなので、私の力で国内を豊かにすればこのまま自然消滅してくれるかも。
“だめね。そんな甘いヤツじゃ無いわ。ちょっと希望的観測が過ぎる。油断しててはダメよ”
「姫様がスターリンと呼んでいるのはおそらくヨシフ・ジュガシヴィリの事だと思われます。ジュガシヴィリは銀行強盗に協力した罪で、先週までソリヴィチェゴドスクにて流刑に服しておりました。今はヴォログダに移送されて当局の監視下に置かれています」
「えっ?流刑?身柄を確保しているのね」
スターリンが何回か逮捕されていたことは知っていたけど、この時期は流刑にされていたのね。それは好都合だわ。
「ルスラン、あなたにお願いがあるの。ちょっとこのスターリンを殺して来てくれないかしら?」




