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第三九八話 アメリカ上陸作戦(3)

挿絵(By みてみん)

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作画はダンバインやイデオンの湖川先生がご担当!

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よろしくお願いします!


1942年11月23日 午前6時


 アメリカ合衆国フロリダ タンパ沖


 ここに、日本の空母打撃群が集結していた。


第三空母打撃群

 空母龍鳳  栗田司令


第五空母打撃群

 空母瑞鳳  小沢司令


第七空母打撃群

 空母玉鳳  御須磨司令


 大型空母 3隻

 重巡 5隻

 軽巡(駆逐艦を含む) 85隻

 強襲揚陸艦兼ヘリ空母 12隻 ※21世紀の“ひゅうが型”相当

 その他輸送艦等 191隻


 そして、キューバ基地の日本陸軍からも大部隊が参加する。


 1200トン級上陸用舟艇 300隻

 九八式重爆撃機 250機

 九七式戦闘攻撃機 310機

 零式戦闘攻撃機 500機

 九九式襲撃機 85機


 日本は保有する海軍兵力の半数以上をこの作戦に投入していた。キューバに前線基地を確保できたことによって、これだけの大兵力の運用が可能になったのだ。


 今世の日本では、戦闘をするときには能力係数も入れて敵の5倍以上の戦力を揃えることが必須とされている。5倍の戦力差があれば、ほとんど損害を出すこと無く戦闘を終わらせることができるのだ。


 ――――


 連合艦隊旗艦 重巡摩耶


 連合艦隊司令長官の山本五十六は、目の前の大型ディスプレイに表示されている光点を見ながらマイクを強く握りしめる。


「全軍に告げる。現時刻をもって“ハンバーガー作戦”を開始する」


 ――――


 タンパ沖に展開している強襲揚陸艦から、次々に無人機が発艦していく。前回のハワイ攻略作戦では若いパイロット訓練生に操縦をさせたため、精神に異常をきたす者が続出してしまった。その為、今回は陸軍のベテランパイロットが日本から操縦している。そして、あらかじめ確認している高射砲陣地を破壊していった。


 アメリカ軍陣地では無人機による攻撃が予測されていたが、ほとんどなすすべもなく蹂躙されてしまった。レーダーは妨害電波によって無効化されていて役に立たない。もしレーダーが生きていたとしても、段ボール紙で出来た無人機の捕捉はほぼ不可能だ。近接信管を搭載した高射砲弾も、段ボールの無人機に反応することなく至近弾になったとしても爆発しない。


「くそっ!くそっ!くそっ!何故当たらない!この蚊とんぼがぁ!」


 高射砲弾の雨をかいくぐって迫り来る無人機に対して、アメリカ兵は小銃やサブマシンガンで応戦するがなかなか当たらない。当たったとしても段ボールで出来ている無人機に弾は貫通してしまい撃墜することが困難だった。


 そして、アメリカ軍の120mm高射砲は巨大なため、カモフラージュネットで完全に隠すことが難しい。無人機のカメラからすぐに確認されてしまい、次々に体当たり攻撃によって破壊されていった。


無人機による体当たり攻撃が終わり、ほんの少しの静寂が訪れた。


「損害を確認しろ!すぐに航空機による爆撃が来るぞ!」


 無人機による爆撃はそれほどの威力は無いのだが、そのほとんどが高射砲基部に着弾しており、高射砲の角度や方角を調整するための電気配線やギアを破壊していた。こうなってしまっては、たとえ砲身が無事だったとしても戦うことは出来ない。


 しかし、まだ無事な高射砲も多数残っている。無人機の攻撃が終わったということは、次は航空機による爆撃が来るはずだ。その航空機を迎え撃つための準備をしなければならない。


「上空に敵機!」


 無人機の爆撃による煙がまた立ちこめる中、数機の航空機が空に侵入してきた。大きさから見て、かなりの高度がある。これなら、120mm高射砲の近接信管で撃墜できるはずだ。


 レーダー連動の120mm高射砲は、その砲身の仰角を上げて自動的に狙いを付ける。周りでは、レーダーと高射砲に電力を供給している電源車が激しくうなりを上げていた。


「SCR対空レーダーに敵機を捕捉しました!」


※SCR対空レーダー アメリカ軍が開発した射撃管制レーダー


「よしっ!発射!」


 いつの間にか電波妨害もなくなっていた。そして開発されたばかりのSCR対空レーダーは日本軍機を捕らえ、そのデータはM4アナログコンピューターで解析される。その計算結果に応じて高射砲が自動的に動くのだ。ロックオンした状態で発射をすれば高い確率で撃墜することができる。


「やった!日本の攻撃機を撃墜したぞ!」


 発射された120mm弾は日本軍機の至近で爆発し、見事撃墜に成功した。第二次攻撃の日本軍機は50機ほどが確認できたが、次々に爆発して粉々になっていった。


 アメリカ軍の高射砲陣地はその戦果に沸き立った。いくら撃っても撃墜できなかった日本機を撃墜できたのだ。


 しかし、それはレーダー波を出させるための日本軍の作戦だった。


 侵入してきたのは、段ボールの機体にアルミ箔を貼り付けた無人機だ。1500mくらいの高度で侵入したため、アメリカ軍は有人攻撃機だと誤認したのだ。そして、それを発見したアメリカ軍高射砲部隊はSCR対空レーダーを照射して発砲を開始した。


「全機、ARM発射」


 アメリカ軍の射撃管制レーダーを受信した哨戒機から、ARMアンチレーダーミサイルの発射指示が加藤隊に出された。そして、加藤隊の九七式戦闘攻撃機からミサイルが白い煙をたなびかせてレーダー波に向かっていく。この攻撃によって、残っていた高射砲陣地はほぼ全て破壊されてしまった。


 ――――


アメリカ デトロイト 陸軍本部


「フロリダの状況はどうなっているんだ!」


 タンパにあるマクディル陸軍航空隊基地から、攻撃があったとの一報が入った直後に無線も有線も基地と繋がらなくなってしまった。


 無線はおそらく日本軍の妨害電波によるものなのだろうが、有線通信も使えなくなっていることに、陸軍本部は混乱していた。


「スティムソン長官。ジョージア州とサウスカロライナ州の何カ所かで電信鉄塔が爆破された模様です!全力で復旧に当たらせます!」


「なんだと!工作員の破壊活動か!?」


 フロリダとの通信を遮断するために、ロシアKGBのエージェントが電信鉄塔や交換設備の爆破を実行していた。人の住んでいない大地に敷設された長大な電信線の全てを守ることなど、どうやっても不可能なのだ。


 ――――


 ほとんどの高射砲を破壊した日本軍は、九七式戦闘攻撃機・零式戦闘攻撃機・九八式重爆撃機をタンパ上空に侵入させた。そして、地上の陣地に対して爆撃を開始する。


 「日本の攻撃機が接近中だ!上がれる戦闘機は全部上げろ!」


 フロリダ・タンパのマクディル陸軍航空隊基地は、早朝から巡航ミサイルによる攻撃を受けており、すでに滑走路は穴だらけになっていた。それでも重機によって穴を埋め、なんとか300mほどの滑走距離を確保することに成功していた。また、マイアミ他フロリダ半島に存在する基地からもありったけの戦闘機が迎撃に上がって来る。その総数は実に1800機にも及んでいた。


「御須磨司令、マクディル陸軍航空隊基地より航空機が離陸して来ます。およそ200。他の航空基地からも次々に離陸してきます。合計1500以上!」


「まずはタンパ上空の200機を撃滅する。巡洋艦隊、SAM4(艦対空ミサイル)発射」


 哨戒機からの索敵情報は栗田艦隊や小沢艦隊と共有されており、コンピューターが既に攻撃目標を各巡洋艦に割り振っていた。あとは、発射の命令を下すだけなのだ。


 巡洋艦のVLSが開き、1セルに2発装備されたSAM4が次々に空に登っていく。今回の上陸作戦には、重巡5隻、軽巡駆逐艦85隻が参加しており、そのVLSに納められたSAM4は、実に3400発以上に及んでいた。


――――


 「日本軍のミサイルを視認!全機チャフを投下!」


 P47戦闘機の大隊を率いるドネリー少佐は日本軍のミサイルを発見し、チャフを投下する。妨害電波で無線は使えないが、僚機達もミサイルに気づいてチャフの投下を始めた。


 ハワイやミッドウェーでは、チャフには一定の効果があったと聞いている。ただ、最近のメキシコ湾における小規模の戦闘では、出撃して帰還できた機は一機もなく、その効果が薄れているのではないかと噂されていた。しかし、自分たちには命じられた作戦を実行する以外に選択できる手段など無いのだ。


 ドネリー少佐は祈るように近づいてくるミサイルを凝視した。そして、シミュレーションで練習したとおり、ミサイルが1kmくらいに近づいた瞬間エルロンを操作して機体を右に傾け操縦桿を引いた。


 「どうだ!これで躱せるはずだ!」


ドバシャーン!


 ギリギリで躱すことが出来たと思ったミサイルは、ドネリー機の機首の下付近で爆発を起こした。そしてその破片がドネリーの左太ももを貫く。


 「くそっ!ついてねー!部下達は大丈夫か!?」


 ドネリーは機を立て直そうとしたが、エルロンが動かない。どうやら操縦系統が一部やられたようだ。ラダーとエレベーターは正常に動いたので、なんとか機を立て直して僚機がどうなったか確認した。


「う、うそだろ・・・そんなああああ!」


 日本軍のミサイルにたまたま当たったのは、自分がついていなかったからだと思った。しかし、そうではなかったのだ。ドネリーが目にした光景は、穴だらけの滑走路からなんとか離陸した200機の友軍機が、無残に墜落していく姿だった。


 ハワイとミッドウェーの戦訓によって、アメリカ軍のチャフが想像以上に効果を発揮することを確認した宇宙軍では、その対策のためプログラムアップデートを実施していたのだ。そしてそのアップデートは非常に高い効果を発揮する。


 フロリダ半島の各地から離陸したアメリカ軍機は、対空ミサイルによって戦場に到着する前にほとんどが撃墜されてしまったのだ。


 対空砲も迎撃戦闘機も失ったアメリカ軍に、日本の攻撃機を押し返すことは既に不可能だった。日本軍による陸上目標への爆撃は苛烈を極めた。爆弾を投下した日本軍機は、キューバ基地か空母に戻り、再度爆装して飛び立っていく。この反復攻撃は翌朝7時まで休むこと無く続けられた。


 米軍の反撃がほとんどなくなった11月24日午前8時、巡洋艦に護衛された上陸部隊がタンパの海岸に接岸を開始した。


 激しい爆撃によってアメリカ軍のほとんどを撃破してはいるが、それでも破壊されなかった防空壕がいくつかあった。そこに潜んでいた米兵が、果敢にもM1ガーランドやトンプソン・サブマシンガンで反撃をしてくる。


 上陸部隊は反撃に遭った場合、無理な進軍を行うことはせず一度前線を下げるようにしている。そして、支援の九九式襲撃機や九八式攻撃ヘリに敵の座標を送り上空から撃破してもらうのだ。


 日本兵は味方からの誤射を防ぐため、ヘルメットと軍服の肩の所に赤外線を反射するマーカーを貼り付けている。このマーカーによって、攻撃ヘリや襲撃機の赤外線照準器で見ると日本兵であることが一目瞭然だった。


 11月24日 午後3時


 日本軍は橋頭堡を確保することに成功した。


第三九八話を読んで頂いてありがとうございます。

土日祝は休載です。


完結に向けて頑張って執筆していきますので、「面白い!」「続きを読みたい!」と思って頂けたら、ブックマークや評価をして頂けるとうれしいです!


また、ご感想を頂けると、執筆の参考になります!


「テンポが遅い」「意味がよくわからない」「二番煎じ」とかの批判も大歓迎です!

歴史に詳しくない方でも、楽しんでいただけているのかちょっと不安です。その辺りの感想もいただけるとうれしいです!

モチベーションががあがると、寝る間も惜しんで執筆してしまいます。

これからも、よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
いよいよ、本土決戦かぁ。※軍も必死こいて抵抗してくるから、 露助捻ってた様にはいかんだろうなぁ こっちが「本命」なんだろうが、太平洋側から攻める事はないんだろうか? ハワイを再度拠点・要塞化したのは、…
遂に始まったアメリカ上陸作戦。 今更なんですが、今世の日本軍とアメリカ軍の戦闘って、さしずめ近代的装備の軍隊の独壇場な感じですね。 ARMやらチャフを無効化するミサイルプログラムのアップデートやら。 …
そおいやロシア、一応建前は中立なんすよね? ロシア自体も産業の復興とか大変だろうなぁ
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