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第二十九話 農業革命と戦後恐慌

<農業革命>


 1919年5月


「リリエル、空気からパンを作るよ!」


「はぁ?何言ってるの?そんな事、神様にだって出来ないわよ!」


 1900年代初頭に開発された、肥料を生産するための方法「ハーバー・ボッシュ法」は、空気中の窒素から肥料を大量に作ることが出来るため、空気からパンを作る方法と呼ばれている。


 当時「ハーバー・ボッシュ法」の特許はドイツが持っていたが、第一次世界大戦によるどさくさで「敵国資産」として接収し、日本での製造準備がされつつあった。


「1900年代初頭から100年間、ハーバー・ボッシュ法で肥料が生産されていたんだけど、2023年に新しい触媒が開発されてね、それまでは500度以上の高温が必要だったけど、たったの100度ちょっとの温度で生産できるようになったんだよ。プラントの設計図は完成しているから、あとは作るだけだな」


 摂政殿下の口利きで、大江戸瓦斯株式会社の協力を得ることができ、東京湾埋め立て地に1号プラントが建設された。


1920年3月 プラント稼働開始


 設計こそ出来てはいたが、それでも、そうとう無理をさせて、工期を大幅に短縮させた。


「大江戸瓦斯さんには、頭が上がらないな」


 窒素肥料に必要なものは、水素と窒素と熱。窒素は空気中に無尽蔵にある。水素は、石炭を低酸素状態で加熱し、石炭ガスとして取り出すことが出来る。


 このようにして、空気と石炭から肥料を生み出すことが出来るのだ。


 プラントの建築工事は順調に進み、1920年3月に稼働が開始された。製造工程は、ほとんどを大江戸瓦斯に委託している。もちろん、特許関連は宇宙軍の外郭団体で抑えてあるので心配ない。


「まずは、月産1,000トンの生産開始だな。同規模のプラントの建設工事も始まったから、生産量はすぐに倍増だ。輸出もどんどん増やしていこう」


 同時期に開発している農業機械の普及もあいまって、農業生産は劇的に向上していくことになる。


<戦後恐慌>


1920年3月


 欧州大戦での大戦景気から続く大正バブルが、とうとうはじける。いわゆる戦後恐慌の始まりだ。


 株価は、大正バブル期を頂点として、1930年代初頭まで下がり続け三分の一程度まで下落する。そして、欧州大戦の景気で急成長した企業の多くが破綻し、そこに融資をしていた銀行も相次いで破綻するのである。


 少し時間を遡って、1919年2月


 摂政に就任してすぐの1919年2月、摂政は原首相と高橋是清大蔵大臣を招聘した。


「原首相、高橋大臣、急遽来ていただいて感謝する。このところの過熱気味の景気について、何か対策を取っているのだろうか?そのあたりを詳しく聞きたい。」


「はい、殿下。物価急騰対策については「暴利取締令」を施行して常に監視をしております。また、景気の過熱ですが、労働者の給与は上昇してきており、賃上げが軌道に乗ってくれば、景気の均衡はとれてくるのではないかと存じます」

※人件費の上昇によって企業の利益を圧迫し、景気の過熱を防ぐと言うこと。


「そうか、しかし、現在は欧州向けの輸出が好調だが、来年の今頃には、欧州の工業生産も回復してくるであろう。そうなれば、余剰の生産力をもてあまし、倒産する企業も出てくるのではないか?また、それに伴い、銀行の破綻も心配されるのでないか?」


「はい、殿下。殿下にそのようなご心配をおかけするのは、臣の不徳の致すところでございます。景気の過熱防止のために、公定歩合の引き上げを検討いたします。また、企業には、欧州の生産力回復を見越して、過剰な投資の抑制を呼びかけるようにいたします」


 しかし、土地の値上がりを見込んで既に過剰な融資がされており、また、欧州から需要の高かった化学工業分野の工場増設も進んでいた。この時点では、もう後戻りできない状況になっていたのだ。


「高城よ、景気の舵取りとは、なかなかうまく行かぬものだな」


「はい、殿下。今儲かっているのに、投資を中止して来年に備えるという判断は、なかなか出来にくいものです。公定歩合を引き上げたことにより、景気の過熱を防いだとしても、公定歩合引き上げで景気を減速させてしまったと、非難される可能性もあります」


 摂政は、大正バブル崩壊を見越して、大規模な公共事業プランを内閣に検討させた。当時の日本は、大戦景気で財務状況は改善し、財政黒字化を実現していたので、予算が通りやすかったのだ。バブルがはじけてからでは、財政に不安があるとの理由で、予算が付きにくい可能性がある。1920年3月までに公共事業プランがまとまったのは僥倖であった。


 ・全国の主要河川に水力発電所の大増設

 ・電力周波数の60hzへの統一

 ・主要幹線道路のアスファルト化の推進

 ・東京湾の大規模埋め立て事業

 ・主要鉄道路線の複線化の推進

 ・東京と大阪の地下鉄敷設

 ・官営製鉄所の建設


 これらの公共事業を行い、失業者の吸収を図った。製鉄所の建設は、当時、鉄鋼は必要量を国内生産で賄えていなかったため、将来の需要増に対応したものだ。また同時に、1920年以降は、金融機関の不良債権処理の解決に取り組んだことにより、史実に比べて戦後恐慌の影響を小さくすることは出来た。


 しかし世界はこの後、史実通り世界恐慌が発生し、ブロック経済化へ進んでいくのである。



第二十九話を読んで頂いてありがとうございます。

農業は国の礎ですからね!それと、大正バブルがはじけてからの慢性的な不景気って、いまのバブル崩壊後の平成・令和に酷似してますね。


完結に向けて頑張って執筆していきますので、「面白い!」「続きを読みたい!」と思って頂けたら、ブックマークや評価をして頂けるとうれしいです!


おもしろくない!と思ったら「★☆☆☆☆」でも結構です!改善していきます!


また、ご感想を頂けると、執筆の参考になります!


「テンポが遅い」「意味がよくわからない」「二番煎じ」とかの批判も大歓迎です!

歴史に詳しくない方でも、楽しんでいただけているのかちょっと不安です。その辺りの感想もいただけるとうれしいです!


モチベーションががあがると、寝る間も惜しんで執筆してしまいます。


これからも、よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] 公共事業プランの中に鉄道を狭軌から普通軌への改軌を盛り込むのも良いのではと思った。 物流と交通インフラの為に是非…
[一言] 電力周波数統一してて笑っちゃいました。現代負けて泣く(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
[一言] 21世紀技術を使って水とCO2で光触媒を使って ラジカル水を使った人工燃料を作って火力発電と 船の動力であるディーゼルエンジンとガスタービン エンジンを開発しよう!
感想一覧
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