第百八一話 バトル・オブ・ブリテン(8)
今回の作戦は、オランダ方面、ベルギー方面・フランス方面の3方面から出撃して、日本艦隊を攻撃するというものだった。そして、シェルマン少尉の部隊は日本艦隊に最も近いベルギーの基地から飛び立ったため、日本軍と最初に会戦することになった。
日本の戦闘機と空中戦になったが、どんなに後ろを取ろうとしても追いつくことは出来ず、ほとんど機銃を発射することは出来なかった。一瞬、射線を横切った敵機に対して発砲したが、撃った機銃弾は敵の遥か後ろを通り過ぎただけで終わった。
シェルマン少尉は周りの友軍機を見回す。かなりの戦力を失ったが誰も戦意を失ってはいない。それに、オランダとフランス方面から飛び立った部隊は無傷の可能性が高い。まだやれる。俺たちは世界最強のルフトバッフェなのだ。
隣の機がこちらに近づき主翼を揺らす。そして、前方に敵艦隊を見つけたと合図を送ってきた。
シェルマン少尉は前方の海域を凝視する。よく見ると前方30kmから40kmくらい向こうの海域に、20隻くらいの艦船が見える。おそらく情報にあった日本艦隊だ。日本軍の戦闘機は機銃を撃ち尽くして帰投していったが、向かった方向が艦隊方向ではなくイギリス本土方面だった。おそらくイギリスの陸上基地に向かったのだろう。
シェルマン少尉は、それは正しい判断だと思った。もし、空母に戻って補給をしようとすれば、着艦中や甲板作業中を狙われるだろう。着艦前の日本軍機と我々が戦闘になれば、対空砲も誤射を恐れて撃つことは出来ない。
ただし、それは空母艦隊が丸裸になると言うことでもある。
最初、日本軍の戦闘機が来たときには、戦闘機を犠牲にしてでも空母艦隊を守るのだろうと思っていた。しかし、戦闘機が機銃弾を撃ち尽くした後は、空母を見捨ててイギリス本土に向かってしまった。
今なら、日本艦隊に大打撃を与えることが出来る。気がかりは、ロケット弾が日本艦隊に残っているのかどうかという事だけだ。
「なんだ!?」
日本艦隊から突然多数の白煙が上がった。かなり距離があるので、何が起こっているか正確にはわからなかったが、シェルマン少尉の本能は、これは自分たちに向けられた強烈な殺意であると警鐘を鳴らしていた。
その白煙はたなびくわけでも無く、こちらの方向に向かってきているように思えた。それもすさまじい数だ。
「ロケット弾だ!」
これは間違いなく“あの”ロケット弾だ。さっきの攻撃では、どうやったのかは解らないが爆撃機隊のみをロケット弾によって攻撃をしていた。今回も爆撃機隊が危ない。
シェルマン少尉は操縦桿を前に倒し降下を始める。他のBf109も一緒に降下を始めた。皆同じ思いだ。自分たちより少し下方を飛んでいる爆撃機隊の前に出て、一発でもよいから敵のロケットを撃ち落とすことを決意した。
「は、速い!」
そのロケット弾はすさまじい速度で飛翔してきた。先ほどの戦闘でも、ロケット弾の速さに驚いたが、急に攻撃をされたのでその時は正確な速度を把握することが出来なかった。だが今回は、発射の直後から目で追うことが出来ている。そしてそのロケットは、40kmくらい離れた敵艦を飛び立った後、20秒ほどで既に半分の距離を飛んでいる。ということは、時速3,600kmもの速度が出ているということだ。
「くそっ!させるか!」
なんとかロケット弾より早く爆撃機隊の前に出ることが出来た。そしてロケットに機首を向けて照準を付ける。
しかし、照準を付けることが出来たロケット弾は、機銃の発射ボタンを押す前に後ろに抜けて行ってしまった。そして、1,000mほど後ろの爆撃機が次々に爆発していく。
ロケット弾は止めどなく飛んでくるが、どれ一つ狙いを付けて撃つことが出来なかった。
「いったい何なんだよ!」
爆撃機隊は必死で回避行動を取るが、それはことごとく無駄な努力に終わってしまう。日本軍のロケット弾は、逃げる爆撃機に進路を変えて向かっているのが確認できた。しかも、目視できる限り一発のハズレも無い。
日本艦隊にたどり着く前に、多くの、本当に多くの戦友が散ってしまった。ドイツの誇りを取り戻すべく、過酷な訓練に耐えてパイロットになった優秀な若者ばかりだ。戦争が終わったら、ヨーロッパの新秩序のためにその能力を発揮して、永遠の平和と繁栄をもたらす人材だ。それがまるで“ゴミのようだ”と言わんばかりに次々と海の藻屑と消えていく。
「くそっ!くそっ!くそっ!」
シェルマン少尉は己の無力さをただ嘆くことしか出来なかった。
――――
山口艦隊は、敵編隊の最上部を飛ぶ機体はおそらく戦闘機であろうと判断し、爆撃機と思われる敵を優先的にロックオンしていた。
ジョンソン大佐は双眼鏡でミサイルの行方を追う。その向こうには数え切れない黒い点が浮かんでいて、それはどんどんと増えている。ドイツ軍の大軍だ。
「あ、あんなにたくさん・・・」
そして、ミサイルの発射から40秒ほど経過した時、双眼鏡の中で次々に爆発が起こるのが見えた。
ジョンソンは、何年か前に香港で見た正月の爆竹を思い出す。連続した爆発が起こり、白い煙が出る様は、まさに爆竹のそれだ。
しかし、一つ違いがあるとすれば、双眼鏡の向こうの爆竹は、人の命も一緒に弾けているという事だった。
――――
「SAM-4の全弾爆発を確認。撃墜確実800以上」
CDCからの通信が山口多聞のインカムに入る。
「よし!次は対空戦闘だ!全艦全砲門、全自動射撃開始!」
第百八一話を読んで頂いてありがとうございます。
ドイツ軍、退却は許されてないんでしょうね・・・
完結に向けて頑張って執筆していきますので、「面白い!」「続きを読みたい!」と思って頂けたら、ブックマークや評価をして頂けるとうれしいです!
また、ご感想を頂けると、執筆の参考になります!
「テンポが遅い」「意味がよくわからない」「二番煎じ」とかの批判も大歓迎です!
歴史に詳しくない方でも、楽しんでいただけているのかちょっと不安です。その辺りの感想もいただけるとうれしいです!
モチベーションががあがると、寝る間も惜しんで執筆してしまいます。
これからも、よろしくお願いします!




