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閑話 リーゼ視点

アキラ君が出て行ってからしばらく。


寝床の準備や夜の警戒をする順番を決め終えてから。

「……やはり何かするべきではないのか?」

ノーラが困ったような顔で言う。


私は軽くため息をつく。

「待つことも仕事のうちよ……?ノーラ」

たしなめるように言う。


ノーラとは長く親友をやっているが、彼女は自分の知らないところで勝手に事態が進行することが好みではない。

特に自分が関係する事だと顕著だ。


「そうですよ、姉さん。……正直僕らはこういう場所での経験が少なすぎます。もちろんいずれ知るべきだとは思いますが、それは今では無いですよ」

ミラン君がフォローしてくれる。


「大体、出て行ってどうするのよ?この格好が目立ってるのはどうしょうもないし、必ずトラブルになるわよ?……それに、学園内ならともかく、こんな勝手も分からない都市で、聴きこむアテもないでしょ?」

この程度のことはノーラも分かってるのは重々承知の上で、言い含めるように言葉を告げる。


ノーラはシオンやルカの方を見るが、ルカはフルフルと首を振り、シオンも

「今回の我々の仕事は待つ事だ。……それに、万が一があったとしても彼一人ならなんとかできるだろう。」

と、刀の手入れをしながら答える。


援護してくれる人がいないと悟ったのだろう。

立ったままだったが、ストンと座り込む。


「あーーーー、もう。私達じゃ力になれないことはわかってるんだが。」

それがわかってても自分で動いて、実際に結果として見ないと納得しないタイプよね。あなたは。

……貴族は他人を上手く使うことが必須条件だから、ノーラには向かない。

かと言って、誰かの妻としておとなしく収まっておけるタイプでも無いわよね。


だから冒険者になった。


私を学校に呼んでくれたことにはとても感謝している。

私は危うくもう妻を3人も持ってるお爺さんの所への輿入れが決まりかけていて、正直諦めていた。

でもそこはさすがはレスティア老のお気に入り。卒業したら一緒にパーティを組もう、という彼女からの手紙1つで状況は大きく変わった。


うまくいけば国内の実力者に貸しを作れるかもしれないと考えた父は結婚を延期し、快く学園に送り出してくれた。

結局、彼女にトラブルがあったため、半年留年することになったものの、それで同級生になれ、同じパーティにもなれたので父はご満悦だった。


既に彼女が家とは縁を切って完全に冒険者として独立するつもりなのは知っていたが、親には教えていない。

最後の自由としてせめて学園生活だけでも楽しもうと思っていたからだ。


……でも、状況は変わった。


頭を掻いているノーラを横目に、私は聞きたくて聞きたくてたまらなかったことをシオンに聞く。


「それでシオン……すごく聞きづらいのだけど、あの鎧は一体何?」

ビクリ、とシオンが震える。


迷宮を出た後に鎧はいつもの鎧に装備しなおしていた為、今は装備していない。でも、装備してたんだから性能は理解しているはず。

一応私も貴族の娘ですからね。武器と防具、それに装飾品くらいは鑑定ができる。下級までだけど。


それが通らないってことは最低でも希少以上、ってことでしょ?

私一人なら鑑定ミスと言う可能性もあるけど、ミラン君やノーラも通している風では無いし。


もしも、だけどあれが名品クラスなら、間違いなく一代爵を賜ることはできる。

さらに魔法の袋ですもんね。この際何処で手に入れたかとかは置いておいて、永続爵で男爵位や子爵位が狙える。


男爵ではやや不足だけど、子爵位なら、私にとってはちょうど格の足りる相手になる。


「……すまないが、せめてアキラに公開の許可をもらってからにしてもいいだろうか」

こちらを見ようともせずに答える。


「品質だけでも教えてもらう訳にはいかないのか?」

立ち直ったノーラが口を挟んでくる。


「すまないが」

にべもない言葉。


「……大体は推測できてますよ。明らかに回避が早くなりましたよね。まるで次に来るのが何処か分かるように」

ミランの推測にすこしだけシオンが震える。

嘘がつけない娘よね。


「回避の仕方や間合いの取り方といい、回避上昇系のスキルは確実と思っていたが」

後ろからシオンを見る立場のノーラはハッキリと違いもわかってるみたいね。


「どちらかわからない、というよりはどちらも持っていると考えるのが適切かと。つまり、スキルが2つもある。推測ですが、『逸品』級です」

ミランが断定的な口調で攻め立てる。


シオンはぎゅっと目をつぶったまま、

「私からは答えられない」

とだけ答える。


でも、それって答えてるようなものなのよね。


シオンを除く皆が大きくため息。

「今後に期待、というつもりだったんだけどなぁ」

と、ノーラ。

「そうね。甘かったわね」

私は苦笑い。


逸品級なんて見たことないわよ。

国王家に代々伝わる秘宝が固有級とは聞くけど、逸品級なんて多分、うちの王国の中でも片手で数えれるレベルの筈。


「どちらにせよ、戻ってきたら色々と聞き出さないとな」

ノーラがボソリとつぶやく。


そうね。本来なら私が止めるところだけど、今回は私も知りたいしね。

基本的に魔法のアイテムは一旦国家に提出し、その代わりに爵位をもらいます。国家に提出したアイテムを使うには貸し出し手続きが必要な形となります。

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