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第19話 意志の統一

 雅臣たちの『パーティー』は現状3名。

 3/6であり、半分が揃っている状況だ。


 ただしスキル取得を行っているのは雅臣のみ。


 よく考えたうえでスキル構築をするべきだという雅臣の判断により、第一階層は実際に雅臣だけの戦闘力でクリアしている。


 第一階層をクリアしたことにより、第二のパーティーメンバー――アルに言わせれば『従者(Servant)』――が解放されたとするのであれば、第二階層からは実質単独(ソロ)での攻略は難しいと見るべきだ、と雅臣は判断している。


 ――ボス戦はもちろん、通常戦闘もそうだろう。


 魔物(モンスター)単体の強さが極端に引き上げられるということは考えにくいが、第一階層では3体が上限であった同時接敵(エンカウント)数が引き上がる可能性は高い。


 雅臣一人で対峙しきれない数の魔物(モンスター)との戦闘を想定すれば、凜子と花鹿も戦力として考える必要がある。

 またそれこそが雅臣だよりの状況よりも、凜子と花鹿の生存確率を上げることも間違いない。


 となれば将来的なパーティーのカタチを考えて、役割分担をすることは必須だ。

 同じスキル構成のフルメンバーでクリアできるのであればそれもいいだろうが、普通はちょっと考えにくい。


 現実で迷宮探索などしたことなどあるはずもない雅臣の、あくまでゲームに基づいた判断に過ぎないのだが。


 最終的なパーティーのカタチを考えることももちろん重要だが、まずは今の三人で第二階層? を攻略可能なバランスにすることが急務だ。

 まずはそれを最優先目標として、各人の役割を決め、スキル構築する必要があるだろう。

 先を見据えすぎて、今転べば元も子もない。


 それに新規メンバーである花鹿の育成も必要。

 これは新規メンバーが増えるたびにやらねばならない事でもある。


 方針が固まれば第二階層へ挑戦する前に、第一階層で花鹿のレベルを3まで上げておく

ことは最低限で、できれば全員レベル4まで上げておきたいところだ。


 それらを念頭に、雅臣は現状の自分たちの『ステータス』を再確認する。


 (やしろ) 雅臣(まさおみ)

 Level 3 next level 211/800

 HP 101/101 MP 125/125

 STR 54 DEX 51 VIT42 AGI65 INT92 MND 109 CHR 112

 取得スキル4 スキル取得ポイント230

 スキルセット 4/10

 『寸勁:level 3』『魔力付与:level 3』『治癒:level 3』『解毒:level 』

 ジョブ 近接魔法士

 サポートジョブ 現状選択不可

 状況 通常

 装備 登美ケ丘学園の制服(男子)

 

 磐坐(いわくら) 凜子(りんこ)

 Level 3 next level 11/800

 HP 65/65 MP 102/102

 STR16 DEX23  VIT30 AGI30 INT65 MND77 CHR101

 取得スキル0 スキル取得ポイント250

 スキルセット 0/6

 ジョブ 空欄

 サポートジョブ 現状選択不可

 状況 通常

 装備 登美ケ丘学園の制服(女子)


春日(かすが) 花鹿(かじか) 

 Level 1 next level 0/300

 HP 40/40 MP 48/48

 STR12 DEX18  VIT10 AGI28 INT58 MND54 CHR88

 取得スキル0 スキル取得ポイント50

 スキルセット 0/2

 ジョブ 空欄

 サポートジョブ 現状選択不可

 状況 通常

 装備 -


 比較基準などあるはずもないので、これが強いか弱いかなど雅臣にも判断できない。

 一度雅臣のストレージにいれてから『装備(エクイップ)』させなければ、装備はない状態だと見做されるらしい。


 この事実をこの時点で強く認識できていなかったが、雅臣はまたやらかすことになるのだがそれはまだ少し先の話だ。

 

 一番ステータスに恵まれているとはいえ、雅臣が現実での特殊部隊相手に夢想できた点からしても弱くはないのだろうが、敵は魔物(モンスター)


 油断はできない。


 三人相互の連携で個の力がパーティーの力となる際、和算ではなく積算となる構築がどうしても必要だ。


 此処でしくじると、詰むことだってあり得る。

 竜さん六人で当時のプロミはクリアできないのである。


「巻き込んでしまって申し訳ないけど、基本的にはそれでいいかな?」


 ただそれよりも先に、雅臣にはどうしても確認しておかなければならないことがある。


 雅臣自身も巻き込まれたといっていい状況ではあるものの、その上で凜子と花鹿を巻き込んだのは自分だという自覚が雅臣にはある。

そうである以上、そこをあやふやにしておくわけにはいかないし、そこの意志統一がなされていなければ迷宮(ダンジョン)攻略など覚束ない。


 つまり、現在は現実へ帰還できているにも拘らず、再び『トリスメギストスの几上迷宮』の攻略に臨むか否かの意思確認。


 如何にアルが『従者(Servant)』と呼ぼうが、スキル取得や装備関連の一切が雅臣にのみ操作可能であろうが、凜子も花鹿もきちんと意志を持ったひとりの女の子である。


 ゲームにおけるノンプレイヤーキャラクターではない。


 彼女たちが「うん」と言わなければ、雅臣がどれだけ迷宮攻略を声高に叫んだところでどうにもならない。

 しかも迷宮での死が「本当の死」である可能性も捨てきれない、となればなおのことである。


「うん。――正直に言えばちょっと怖いけど、社君の言うとおりだと思う」


「――かまわない」


 それに対する凜子と花鹿の返答である。


 雅臣はリスクも隠さずに説明している。

 その上で「自分がやりたいから」以外の攻略するべき理由を説明し、理解と同意を得たのだ。


 曰く。


 アルに代表される、どうやら冗談ごとではなく国家規模の組織がこの異常事態に強い興味を持って関わってきているということ。


 アルはああいったが、自分たちが「攻略をしない」となればあらゆる干渉を仕掛けてくるのは間違いないだろうということ。


 その点においても、自分たち自身が手出し不可能なくらいに「強くなる」ことは有効であろうという判断。


 そして何もかも謎に包まれたままではあるが、『トリスメギストスの几上迷宮』が実在し、そこで力を得ることができる状況が用意された必然性があるはず。


というのが、雅臣が迷宮攻略を続行すべき最も大きな理由だ。


 危険を避けることを優先して力を得る機会を放棄し、()()()()に対処できなくなる。


 これをもっとも雅臣は危惧している。

 雅臣の愛するゲームや創作の世界では「お約束」だ。


 力を得ることが可能な場で可能な限り鍛えるのは、その力をもって対峙すべき事態が必ず発生するからだ。


 そんなゲームやアニメじゃあるまいし、という理屈であることは百も承知だが、ゲームやアニメとしか思えないような事態が起こっているのが現実となれば「どうすればいい」という正解などありはしない。


 ならばゲームやアニメから得た考えであっても、()()を想定して行動するべきだと雅臣は提案したのである。


 そしてその提案に、凜子も花鹿も同意したというわけだ。


従者(Servant)』が『有資格者(Deserver)』に抗うことなど基本的に不可能なのだが、三人とも自由意思をもってもいるためにその事実には思い至らない。

 迷宮攻略開始までに一番苦労したCHR100というステータスは、雅臣が選んだ5名に対して絶対的な力を発揮するのだ。


雅臣の理屈は、確かに一定の説得力を持ったものであることは確かだろう。


 だが状況的に、雅臣の突拍子もないともいえる理屈に現実感を持たせたのは、先の体験もさることながら、今三人の置かれている状況が大きいことは間違いない。


「お、落ち着かないね……」


「…………同感」


 二人の意見には雅臣も全面的に同意する。


 お嬢様である凜子であれば、あるいは慣れているんじゃないの? と思わなくもないが、()()()()()に制服姿でいることが落ち着かないのかもしれない。


 こんな場所――三人が今いるのは、近隣で最も高級なホテルの最上位の会議室である。


 アルが


『打ち合わせする必要があるだろうし、まずは丁度いいところへお連れするよ』


 などと言いつつ断りもなく『転移(テレポート)』をかまし、強制的に連れてこられたのだ。

 アルがフロントに説明すると、どう見てもただの高校生三人組であるにも拘らず最上級の対応でこの会議室へ通された。


 ――「丁度いい」という言葉を辞書でひけ、アル君め。


 高層階にあり、外に面している部分はすべて一枚硝子になっており、景色は素晴らしい。

 通されてしばらくしてから「失礼します」と持ち込まれた飲み物や料理は、三人でどうしろというんだと言いたくなる量もさることながら、そんな知識が疎い雅臣でもとんでもなく手の込んだ――有り体に言えば高価なものだということが一目でわかるもの。


『打ち合わせが終わったら、街をぶらつきでもすればいいんじゃないかな? せっかくの休日なんだし』


 などと言いながらアルは消えてしまったが、さっき渡されたカードをうっかり使ったら妙な騒ぎになりそうだと雅臣は警戒している。


 先の経験にあわせて、此処まで手の込んだ――金に糸目を付けないという言葉をそのまんま具現化したような対応をされてしまえば、雅臣の論にも現実感が出ようというものである。


「――僕もそう思う。だからさっさと決めるべきことを決めてしまいましょう」


 雅臣の提案に、凜子も花鹿もまじめな表情で頷いた。


 確かにデートのようなものとい言えなくもないかもしれない。

 だが凜子や花鹿が求めているのは高校生らしいそれであって、これはなんか違う。


 何事にも「らしさ」というのは必要で、それがあって初めて「背伸び」というものも楽しく感じることができるのだ。

 一足飛びになってしまえば、居心地の悪さが勝ってしまうものらしい。


 さっさと決めるべきを決めて、街を散歩でもする方がよほど自分たち()()()


 世界でたった一人と、その一人が選んだ五人にしか許されていない立場に自分たちが居ることを、今はまだ本当の意味で理解できていない三人である。


 だから「さっさと決めてしまおう」などという言葉も出る。


 自分たちのパーティーをうまく構成できるかどうかによって、世界の命運を左右することになるなどとは思いもしていないのだ。


 せいぜい自分たちの命に関わるかもしれないから慎重に、程度。


 だが雅臣はゲーム攻略と捉えた事柄に対するコダワリは半端ないものがある。

 アルなどはそれが奏功することを祈るような気持ちなのかもしれない。


 世界を左右する力の在り方が、今から決定されようとしている。


次話 盾と剣とその主

2/22投稿予定です。


読んでいただけると嬉しいです。

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