エピローグ 学園祭狂詩曲
舞台の幕が上がる。
アクサレナ高等学園の大ホールを埋め尽くした観客たちは、新たな物語の始まりに期待を膨らませていた。
観客席の最前列、招待客の中にはカイトやダードレイたちエーデルワイス歌劇団の面々の姿も見える。
もちろんカティアの友人たちの姿も。
そして始まるのは、とある学園の学園祭を舞台にした若者たちの物語。
時に笑い、時に衝突しながらも友情を育み、時に恋に悩む……その様を、二人の少女を中心としながら様々な登場人物たちの群像劇で描く青春ストーリーだ。
(さあ、いよいよ始まったよ……!みんな、がんばろうね!)
カティアは舞台袖で、自分の出番が来るのを今か今かと待ち構えていた。
彼女はエーデルワイスの舞台とはまた違った緊張感に身を包まれながらも、やる気に満ち溢れている。
それは彼女だけではない。
舞台に上がる演者の誰もが、同じ気持ちを抱いていた。
そして等身大の若者たちの演技はそれぞれの役にピッタリとハマっていて、劇に説得力を与える。
それは劇作家シクスティンの狙いもあっただろう。
全てのセリフは旋律に乗せられ、歌と踊りが織りなす一風変わった劇……ミュージカルを初めて体験する観客たちは最初こそ戸惑いを見せたものの、それもほんの一瞬のことで、今はその新鮮な驚きに夢中になっていた。
開幕からしばらくすると、舞台の上にカティアやアリシアが登場する。
彼女たちは主役ではないものの、その歌声は他の演者たちよりもよく通るものだ。
エーデルワイスを知る者は直ぐに二人のことを認識し、ちょっとしたざわめきが起きた。
なお、アリシアはもちろん直前までガチガチに緊張していたが、舞台の上ではそれを感じさせないのは流石である。
二人とも今回は主役ではないため、普段よりも抑えているが……やはりその輝きは褪せることなく、観客たちを虜にする。
そして、女優としては初めて舞台に立つカティアは……と言えば。
(……うん、凄く楽しいよ!!)
と、心から舞台を楽しんでいた。
その彼女の内面の溌剌さは、歌声と演技に現れる。
それは同じ舞台に立つ仲間たちにも伝播し、観客をも巻き込んで一体感を醸し出す。
大ホールの中は不思議な高揚感で満たされ、最高の舞台が作り出されていくのだった。
やがて物語は終盤に差し掛かり、演出も歌声もフィナーレに向かってどんどん盛り上げていく。
二人の主役……クラリスとオーレリーの、それぞれの恋物語の結末を迎えたところで大団円を迎える。
そして、美しいハーモニーを奏でる大合唱でフィナーレを飾りながら、若者たちの物語……学園祭狂詩曲の幕が下りた。
大ホール中に響き渡る観客たちの歓声と拍手喝采は、いつまでも鳴り止むことがなかった……




