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【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!  作者: O.T.I
後日談3 学園祭狂詩曲〈ラプソディー〉

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学園祭


 ある日の学園、放課後にて。


 その日、エーデルワイス歌劇団の公演も急ぎの公務も特に無かったカティアは、合唱部の活動に顔を出していた。


 邪神征伐の英雄姫である彼女も、学園で過ごす姿は他の生徒たちと変わらない。

 今も合唱部の少女たちと、練習の合間のお喋りに交じって楽しそうな笑顔を見せていた。


 合唱部は普段、音楽室や体育館、各ホールなど、演劇部や音楽系の各団体と場所を融通しあいながら活動している。

 今日の活動場所は音楽室だった。




「もうすぐ学園祭ですね……。ウチの出し物って、去年と同じ感じなんですか、クラリス先輩?」


 そう話題を切り出したのは、二年生の男子部員だ。


 いくつかのグループに分かれて談笑していた部員たちだったが、その言葉に視線を一斉に部長であるクラリスに向けた。



「そうね…………でも、毎年同じことをやるのも面白くないかしら?今年はカティアさんもアリシアさんもいるから、注目度もこれまでと段違いでしょうし……」


 彼女は男子部員の言葉にそのように応えた。


 すると今度は名前を呼ばれた二人には注目が集まる。

 カティアは「ほぇ?」といった感じでキョトンとし、アリシアは「あわわ……」と恥ずかしがっている。



 アクサレナ高等学園の合唱部と言えば、コンクール上位入賞の常連であり、部員たちは一般的な学生のレベルを大きく凌駕する実力を持っている。

 しかし、カティアとアリシアは、王都ばかりか国内外にその名を轟かせる『エーデルワイス歌劇団』が誇る歌姫。

 高レベルな部員たちを更に上回る歌唱力の持ち主であり、その知名度も抜群だ。

 なので、クラリスが言う通り、今年の学園祭の注目度はナンバーワンと言っても過言ではない。



「なにかこう……あっ!と驚かせたいと思わない?」


「確かに、何か凄いことやりたいですね」


「でも、何をやるんですか?」


「「「う~ん……」」」



 クラリスの提案に、部員たちは賛同の意志を見せるものの、すぐには具体案は思いつかない様子。


 しかし、その提案を聞いたカティアの目は『きら~ん』と輝いていた。

 そして、彼女はそれを提案する。


「でしたら、こういうのはどうですか……」


 それは彼女の新たな野望の第一歩。

 エーデルワイス歌劇団の歌姫カティアが、さらなる成長を遂げるための秘策を、ついに実行する時が来たのだ……







 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆





 ところ変わってエーデルワイス歌劇団の(やしき)にて。

 談話室の一角で、カティアは劇団専属の脚本家兼演出家のシクスティンと、看板女優の一人であるロゼッタの夫妻と話をしていた。



「学園祭……ですか?」


「そう。そこでウチ……合唱部の出し物を考えてるんだけど、シクスティンさん達に協力してもらえないかな~……なんて」


 学園から帰宅した彼女は、さっそく合唱部で提案した『出し物』の相談をしているのだ。



「お~っほっほっほっ!!ごほっ!!げふっ!…………学生の催し物に、プロが協力するのは良いのかしら?」


「(咳き込むくらいなら高笑いやめたら良いのに……)まあ、かたい事言わないでよ。そもそも私だって一応プロなんだしさ」


 意外と常識的な事を言うな……と、カティアは思った。


「それで、僕の協力とは……何をすれば?カティアさん合唱部でしたよね?僕は歌のことは専門外なんだけど……」


「それはですね……ほら、前に話したことがあったじゃないですか。アレ(・・)を実践してみたいな~……って」


アレ(・・)って……あぁ、アレですか。ふむ……面白そうですね。上手く行けばエーデルワイス(うち)でも……」


 カティアの言いたいことを察した彼は、どうやら興味を示している様子。

 以前カティアからその話を聞いた時も、面白そうだとは思っていた。

 これまで実践する機会には恵まれなかったが……プロの公演ではない学園の催し物なら実験的な事もやりやすいし、観客の反応も見ることができる。

 そんな事を頭の中で考えたシクスティンは……


「分かりました。僕で良ければ協力しましょう。ロゼも頼めるかい?」


 と、快諾し、妻にも協力を頼む。


「お~っほっほっほっ!!!何のことだかさっぱりですが、ワタクシが協力するからには大成功間違いなしですわよ!!」


「(さっぱり分からないのに凄い自身だな~)……二人とも、ありがとう!じゃあ、あとは……演劇部のオーレリーさんにも話をしないと」




 こうして、学園祭に向けて大きなプロジェクトが動き始めるのだった。


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