表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!  作者: O.T.I
後日談2 グラナの夜明け

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

665/685

幼き皇女の決意


ーーーー エルネラ ーーーー


 何度かあった魔物の襲撃を乗り越え、私達はついにグラナ帝国との国境となっている山岳地帯に入りました。

 グラナ五大峰の一つ、万年雪を頂き常に白く輝く『白輝峰(ベヤステペ)』を筆頭に、急峻な山々が連なるユラン山脈です。

 因みに、ボラちゃんの守護地の霊峰フォスボラスも五大峰の一つですわ。


 そんな険しい山岳地帯ですけど、はるか昔のグラナ帝国最盛期に築かれた街道のお陰で、私やお姉様は馬車に乗ったまま進むことが出来るのです。

 ご先祖さまに感謝しないとですわね。


 とは言っても……せっかく張り巡らされた街道も、グラナの衰退に伴ってその多くが荒廃してしまったと聞きます。

 ここは重要な交易路として使われていることもあってキチンと整備されているのが幸いでした。



 ですが、いくら街道があるとは言え険しい山超えの行程であることに違いはありません。

 これまでよりも格段にスピードは落ちましたし、何度も休憩が入ります。

 私達は馬車に乗ってるから楽ですけど、外の徒歩の人達は大変なのでしょうね……


 そう言えばリシィお姉様も馬車に同乗してもらおうとお姉様がお誘いしていたのですが、『私は馬車より徒歩のほうが慣れてるから』と仰ってました。

 私としては、リシィお姉様ともっと仲良くなりたいのですが……

 ずっと馬車の中で退屈してましたし、私も少し外を歩こうかしら……?

 お付きの人たちはあまり良い顔はしないでしょうけど。



「エル?……少し、外も歩いてみたいのかしら?」


 さすがお姉様です。

 私の気持ちをすぐに察してくれました。



「はい、お姉様。自分の立場は理解してますが、私だって自分の身を自分で守ることぐらいできますわ」


 ふふふ……私はお姉様と同じ東方の秘術である『符術』を修めてますし、更にはカルヴァード大陸の魔法も使えるのです。

 私、とても強いですのよ。

 お姉様も『エルはとても頑張ったのね』と、褒めてくださいました!


 まあ、その能力に目を付けられて、黒神教に捕まって魔族にされてしまったのは失態でしたけど……

 それもあって、今回の帰国の旅に同行する事を、お姉様は最初は渋っていました。

 私はイスパルのカティア様に庇護してもらいなさい……と。


 ですが、私はもう二度とお姉様から離れない。

 そう誓ったのです。


 最終的には、私の気持ちを察してくださったカティア様にも協力してもらい、なんとかお姉様を説得して同行することが出来ました。


 それに私には……役割があるのです。

 それは。



『その前にエルネラよ。そろそろ……』


「あ、もうそんな時間でしたか。では……」


 ボラちゃんの言葉を受けて、私は意識と魔力を集中させます。

 そして、腕に抱いたドラゴンのぬいぐるみに魔力を注ぎ込むと……



『……ふぅ〜。染みるのぉ〜……』


「……ボラちゃん、おじいちゃんみたいですわ」


「本当ね」



 と、言うように。

 私はボラちゃんのお世話をしないといけないのですわ。


 彼の存在を留めるためには女神様達のお力だけでは足りず、もともと親和性が高かった私の魔力を用いる必要がありました。

 それで何とか救うことができたのですが、それでも精神体だけでは不安定な状態だったのです。

 ですから、依代(ぬいぐるみ)に固定化した上で定期的に私の魔力を注ぐ事で安定化させる必要があるのですわ。


 フォスボラスに戻れば自身の存在を留めるくらいには力を取り戻せるらしいですけど……それまでは私が守ってあげないといけないのです!


 ……ペットを飼ってるみたいで、ちょっと嬉しいと思っているのはヒミツですわ。



「じゃあエル……少し外の空気を吸いましょうか?」


「はい!」











 今、ちょうど一行は峠にさしかかるとろこみたいです。

 少し肌寒いですけど、新鮮な空気がとても気持ちいいですわ。


 自分の足で坂道を登る。

 街道は山の斜面を横切るようにして高度を稼いでいく。


「うわぁ〜……お姉様、すごく遠くまで見えますわ!」


「ええ、とても素晴らしい景色ね……」


 眼下に広がる大パノラマ。

 遥か遠くに見えるのは、私達が航海してきた海かしら?

 私達が素晴らしい景色に見とれて立ち止まると、他のみんなも足を止めてくれる。


 あともう少しで峠を超えますから、そうしたら今度は同じようにグラナ帝国が一望できると思います。



 ボラちゃんに乗って空を飛んだときも、もっと見晴らしの良い景色だったのかもしれないけど……

 私が魔族になっていた間の記憶はどこかあやふやで、あまり覚えていません。

 お姉様はそれでいいとおっしゃってくれたけど、誰かを傷つけてしまったのではないか……そう思うと不安な気持ちになってしまいます。


 でも、カルヴァードの方々はとても優しくしてくださって……皆さんとても良くしてくださいました。

 イスパルに滞在させてもらったときも、カティア様やミーティアちゃん、クラーナちゃんと仲良くなれましたわ。



 だから私は、お姉様に協力してグラナ帝国をもっと良い国にして……いつかまたカルヴァードに行ったら、みんなともっと仲良くなりたいと思ったのです。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ