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【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!  作者: O.T.I
第三幕 転生歌姫の新たなる旅立ち

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第三幕 3 『魔軍襲来』

 街に戻ったら依頼の品を納品するついでに、予想外の場所で魔物に遭遇した事を報告することにした。



 ギルドにやってきた私達は、今日も毎度お馴染みスーリャさんに報告をする。


 …この人、いつもギルドにいる気がするなぁ?

 ちゃんと休んでるのか心配だよ。


 ともあれ、納品も終って魔物のことを聞いてみる。


「スーリャさん、最近また魔物の分布がおかしいなんて話あります?」


「いえ、特にそういう話は…。何かあったんですか?」


「実は…」


 北の森でオークに遭遇したことを報告した。




「なる程…ただ、その情報だけで直ちに異常が発生しているとは断定出来ませんね。獣や昆虫などの魔物はある程度生息域が決まってますが、オークなどの人型の魔物ははっきりした生息域が定まってない場合がありますからね」


 そうなんだよね。

 人型は割と環境適応力があるから明確な生息域はあまり決まってなかったりする。



「最近、女性が行方不明になってるとかは?」


「特にこちらに情報は無いですね。しかし、一度に6体と遭遇と言うのは気になります…近場に集落でも作られてるかも知れないですし、上には報告を上げておきます」


 そうだね、こう言う情報は異変の前触れって可能性もあるからちゃんと共有しておいてほしいところだ。


「それにしても、オーク6体を一人で相手にして無傷とは流石ですね」


 …いや、ミーティアが瞬殺したんだけど。

 流石にそれは言えないよなぁ…


 とにかく、報告すべきことは報告したので今日のお仕事はこれでおしまい。

 まだ少し早いけど、宿に帰ってまったりと過ごすことにした。



 この時の報告が後にブレゼンタムを揺るがす大事件に発展するとは、この時はまだ想像する事もできなかった。




















 オーク遭遇の報告をしてから三日後の夕方、ブレゼンタム滞在のDランク以上の中〜高位冒険者に対して緊急の招集がかかった。

 招集がかかった全ての人が来ているわけでは無いだろうが、かなり広いはずのギルドのロビーが手狭に感じるほどの人数が集まっている。


 うちの一座のメンバーで冒険者やってる人は殆ど招集対象だ。

 父さん、ティダ兄、アネッサ姉さん、ロウエンさんももちろん呼ばれている。

 だから今回ミーティアは、ばあちゃんに預けてきた。


 カイトさんや、レイラさんたち元『鳶』のメンバーも来ている。


 このような緊急招集には特別な理由がない限りは応じる義務があり、応じない場合は相応のペナルティがある。


 ちなみに、どのようにして招集を知らせるかと言うと、ギルド証が赤く発光するのだ。

 特殊な魔力信号を受けて…みたいなことらしいけど、詳しい仕組みは知らない。



 そして、皆が集まった頃合いになるとギルド長が私達の前に現れ、今回の招集についての説明が行われた。


「『軍団(レギオン)』だと?」


「そうだ。三日前にブレゼンタム近郊でオークとの遭遇事例が確認され、念の為調査隊を派遣したところ、大規模な魔物の軍団が確認された。軍団(レギオン)を構成するのは、ゴブリン、オーク、トロール、オーガなどが確認されている。進軍速度は遅いものの、どうやらこの街に向かっているようで、あと2日もあれば街まで到達すると見込まれる」


 あのオークたちは先遣隊ということだったんだろうね。

 そこまで組織だって行動してるとなると、相当強力な個体がいるのではないだろうか。


「…規模は?」


「およそ5千」


 その数の多さにギルド内がざわめき立つ。

 しかし、ベテランが多いだけあって比較的落ち着いており、大きな混乱は生じていないのは流石だ。



「異種族混成…てことは、王種(キング)じゃ無く皇帝種(エンペラー)って事だよな」


「ゴブリンならまだマシだが、それ以外の皇帝種(エンペラー)だとS相当だぞ」


「うわ〜、マジかよ。俺のランクじゃせいぜい雑魚を相手するので精一杯だぞ」



「ギルド長、こっちの戦力は?当然領軍は動くんだよな?」


「ああ、それは…」


「もちろんですわ!」


 ギルド長が問に答えようとしたその時、入り口の扉がバーンッ!と開かれてルシェーラ様が颯爽と登場した!


 ああ…最初の頃の深窓の令嬢のイメージは遥か彼方へ…


 そしてお嬢様に続いてリファーナ様もいらっしゃった。

 閣下と違って流石に護衛を伴ってる。



「ギルド長さん、お邪魔するわ。ごめんなさいね話の腰を折って」


「おお、リファーナ様!こちらにいらっしゃったと言う事は…」


「ええ、ブレーゼン領軍およそ三千。何とか動かせる目処がついたわ」


「…それでもまだ戦力差がありますな」


「ごめんなさいね。常備兵以外も呼集してようやく、と言うところなの。街の守備にもある程度残さないといけないし」


「大群相手なら広域殲滅魔法で先制すれば良いのですわ。カティアさん?あなた達でしたら使えるのではないですか?」


 と、お嬢様が私に話を振ってきて、みんなの注目を浴びる。

 私は自分が使えるであろう魔法の中から期待に答えられそうなものを考えてみる。



「う〜ん、そうですね…[轟天雷]が一番広範囲かつ高威力かなぁ。一発撃ったら魔力スッカラカンになると思いますけど、特別魔法耐性がある相手でも無いみたいですから相当数削れるとは思います」


 以前使った[日輪華]と同様に、本来の【私】では使えないけど、ゲームのカティアでは使うことのできた魔法だ。

 ゲームで使えたものが使えるようになってるのはいくつか実証出来てるので問題ないはず。


「私は触媒さえ用意できれば[灼天龍]が使えます。一撃でお終いなのは同じですね」


 と、リーゼさん。

 炎系統の特級魔法だね。

 自力では行使できなくても、魔法触媒などの事前準備をすれば使用できるケースはある。


「私は[氷葬烈破]かしら〜。リーゼちゃんと干渉しないように注意しないとね〜。私も一発撃ったらお終いね〜」


 アネッサ姉さんは得意の冷気系統の特級魔法だ。


 雷撃、炎、冷気の特級魔法三重奏だ。

 相当数削ることが出来るんじゃないかな?



(…全部特級じゃねぇか)


(地形が変わるぞ)


(何でこいつら冒険者なんかやってるんだ…宮廷魔導師レベルだろ)


(リーゼって確か『鳶』のメンバーだったんだよな?…めちゃくちゃ火力あるじゃねぇか。調査専門とは一体…)


(…あれ?もしかして楽勝じゃね?)


 いやいやいや、それでも相当数残るだろうから、あなた達も頑張りなさいな。



「…想定以上でしたわね」


「では、先制攻撃はカティアちゃん達三人にお任せします。リーゼさんの触媒の方はこちらで手配しましょう。特級魔法三発もあれば相当削れるとは思いますが、それでもニ〜三千くらいは残りましょうか」


「そうですな、それでようやく数としては互角と言ったところですか」


「ええ。何とか群れを率いる…おそらく皇帝種(エンペラー)を倒せば瓦解するとは思いますが…」


「領軍の指揮はお母様が執りますが、正直なところS相当の魔物の相手が出来るほど個々の力が優れてるわけではありません。そこで、皆さんの中でも高位ランクの実力者の方を選別していただき、私とともに遊撃隊として動いて頂きたいのです。他の方にも、上級種を見つけたら可能な限り対処をお願いしたいところですわ」


「えっ!?お嬢様自ら最前線に出られるのですか?」


 私はびっくりして、思わず大きな声を上げてしまう。


「ええ、もちろんです。ブレゼンタムの危機なのに、我が侯爵家の者が先陣を切らないなど武門の名家としての名折れですから。それに、カティアさんなら私の実力もご存知でしょう?…ふふ、実戦経験を積んでおいて良かったですわ」


 あ〜、確かにタイミングが良いというか…

 戦いの心構えの面ではこの間の依頼は無駄にはならなかったね。

 そして、その実力も私やカイトさんも認めるところだ。


「本当は私が出てひと暴れしたいところですが、ここは娘に譲ります。領軍の立ち回りとしては大将を討ち取るまでは街の防衛と被害を最小に抑えることを優先にして指揮を執ります」


 …奥様も奥様で、見た目とセリフのギャップが酷い。

 娘を心配するどころか、しょうがないから譲ってやるみたいな感じだ。



「分かりました。こと戦闘面で上位の者といえばやはりダードレイ一座の者たちと、あとは何人かB〜Aの中から選別でしょうな」


「…ルシェーラ嬢ちゃん、遊撃隊ってことは少数精鋭ってことか」


「ええ、ダードおじさま。雑魚は無視して一気に大将を目指すつもりですので、囲まれても対処できるくらい単独での戦闘能力が優れた方で組織したいところです。最終的にSを相手にする事を考えると、10名くらいは欲しいですわね」


 大将の周りにも上位のヤツがいるかもしれないから、それくらいは必要だろうね。


「じゃあ、うちからは俺、ティダ、ドルク…は遊撃に向かんか」


「ハスラム、デビッド、クライフあたりか」


「そうだな。魔導師も欲しいところだが…アネッサは一発撃って終わりか」


「そうね〜、中級程度ならまだ撃てるとは思うけど、S相手は厳しいわね〜」


「私、魔法は厳しいけど前衛戦力としてなら動けるよ」


「あ、カティアさんには頼みたい事がありますわ」


 といって、ちょいちょいと手招きされる。

 そして、周りの人に聞こえないように小声で話しかけられる。


(カティアさん、あの[絶唱]って秘密にされてるんですの?)


(いえ、特には。…ああ、戦力の底上げって事ですね)


(ええ、出来ればお願いしたいと。効果範囲はどうでしょう?全軍にかけられれば良いのですが…)


(私が味方と認識する相手で歌声が聞こえる範囲であれば…[拡声]と併用すれば全軍対象も不可能ではないと思いますが)


(そうですか!ではお願いしますわ!)


 私のスキルで犠牲を少なくできるならもちろん協力は惜しまないところだ。

 あと私にはリリア姉さんの加護もあるからね。

 かなりのブーストが期待できるだろう。



 お嬢様とお話している間に、遊撃隊の選出もできたようだ。

 うちの一座からは先程名前が上がった5名、Aランクの前衛職の人が一人、魔導師はアネッサ姉さんには及ばないものの、上級攻撃魔法が使えるBランクの人から2名、あとはカイトさんだ。

 そこにお嬢様も入れて10名となる。




「よし、これでこちらの陣容は決まりましたかな?」


「そうですね。あとは戦端を開く場所ですが…穀倉地帯が荒らされるのは避けたいところです。そうすると直ちに進軍を開始するとして接敵するのに妥当な場所といえば…」


「ブレゼア平原…ですね」


 私達がオークに遭遇した森よりも更に先。

 徒歩であれば数時間といったところだろう。



「はい。とにかく我々領軍はこれより早急に進撃準備を整えて進撃を開始。ブレゼア平原に陣を敷いて迎え撃つ体制を整えます。冒険者の方たちは我々よりは身軽でしょうが、明朝早くには出立して我々と合流して下さい」


「分かりました。みんな聞いたな?各自準備を整え、明朝の出立に備えてくれ。何か質問事項はあるか?」


「緊急招集とは言え、報酬は出るんだよな?」


「ああ、それはそうだな。今回の作戦に参加したものには……」


 その質問を皮切りに、質疑応答が行われ、それらが全て終わるとこの場は解散となった。



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