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【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!  作者: O.T.I
第六幕 転生歌姫の王都デビュー

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第六幕 23 『似たもの母娘』

 ブラッドバットの群れを排除した私達は更に坑道を奥へと進んでいく。

 この鉱山は比較的歴史が浅くて、いくつか分岐はあるもののそれほど複雑ではない。


 そして早速最初の分岐点にやって来た。


「どっちから行きます?」


「一通り見て回るからどっちでもいいけど…じゃあ、左から行きましょうか」


「りょ〜かいです」


 今回の依頼は鉱山内に蔓延る魔物を駆除することなので坑道は全て網羅する必要がある。

 迷宮でもないし、左から順に見ていけば漏らすこともないだろう。




 

 そうやって坑道を見回ることしばし。

 特に厄介な魔物はおらず、私達は順調に駆除していったのだが…



「…この気配。ちょっと厄介かも」


 と、唐突にケイトリンが警告を発する。

 気配だけなら私も感じることができるが…


「何がいる?」


「多分、アンデッドですよ。この禍々しさ…かなり高位かもしれない…」

 

 その言葉に皆が気を引き締める。

 そして、暗闇の奥から現れたのは…


「スペクターだと!?」


 黒い瘴気を纏い、ゴーストよりも強烈な存在感を放つソイツは高位アンデッドのスペクター。

 ランクは…Aだ。


 ゴーストと同じような念動力による攻撃や強力な魔法、精神異常をもたらす特殊攻撃、ライフドレインなど厄介な能力を多数持つ難敵だ。


 少し焦りながらも戦闘態勢を取ろうとする。

 果たしてこのメンバーで対処できるか?



 そう思っていると、ミーティアの様子が…?

 

「うに”ゃあーーーーー!!??、おばけぇっ!!あっち行けぇーーっ!![きょくてんこう]!!!!!」


 彼女の絶叫と共に強烈な光があたり一面に満ち溢れ視界を白く染め上げる!


「きょ、極天光!?」


 オオオオオォーーーン…!!!!


 聖なる光にその身を焼かれて、スペクターの怨嗟の声が坑道に反響する。


 そして、強烈な光が消え去った後には…


「…倒した?」


「…みたいだね」


 極天光は退魔系上級魔法だが、スペクターくらいの相手になると一撃で倒すのは難しいはずなのだが…

 おそらく感情の爆発によって魔力が過剰に消費され、威力が増したのだろう。

 ようするに火事場の馬鹿力ってやつだ。


 何にせよ助かったということではあるのだが。


「ミーティア…大丈夫?」


「うう、ママ…おばけこわいよぅ…」


「…だ、大丈夫だよ、もういなくなったから」


 少し引きつりながらも、ミーティアの頭を撫でて落ち着かせる。

 そこまで苦手だったとは…

 経験を積んでもらうのにランク的にも丁度良いと思ったんだけど、可愛そうなことをしたなぁ…



「いや〜、でもミーティアちゃんのおかげで助かりましたよ。流石にスペクターは肝が冷えましたし、[聖套]をかける余裕もありませんでした」


「そうだな…それなりの備えがないと高位アンデッドはキツイぞ」


「…おかしいですね、ギルドの情報では平均Cランク程度、と。平均だからBランクくらいはいるかもしれないとは思いましたが」


「ギルドの査定はあくまでも予想に過ぎないからな。放置されてからの年月、周辺に出没する魔物、鉱山の規模などをもとにな」


「なるほど…では、今回はその予測を上回るイレギュラーなケースだと。でも、このまま探索を続けて問題ないものか…」


「そうですね、護衛の私としては撤退をおすすめしますけど」


 確かに、その方が良いのかもしれないが…


「あれは相当なイレギュラーだと思うし、もう少し様子を見ても良いんじゃないか?」


 とオズマさんが言う。

 そうだね、ここまで来て撤退するにはもう少し様子を見ておきたいところだ。

 撤退するにしてもある程度情報収集が出来れば、依頼も失敗とは見做されないだろう。


「そうですね…ただ、同じようなヤツが現れたら躊躇わず即時撤退で」


「りょ〜かいです!」


「分かった」


「…おばけ出たら逃げる」


 うう…ごめんね、ミーティア。

 もう少し頑張って!


 そして、私達は再び探索を続ける。










 その後はスペクター程の難敵に遭遇することもなく順調に魔物を駆除していく。

 蔓延っているというだけあってかなり多くの魔物に遭遇したが、多くは〜Dランクで、時折Cランクが混ざる程度。

 まさに駆除と言った感じだ。


 ミーティア以外は今回初めてパーティを組むメンバーとなるが、連携も徐々に慣れてきた。


 前衛はオズマさん。

 片手長剣と盾を持つスタイルで前衛として安定しており、ターゲット取りも安定している。


 ケイトリンは器用な斥候タイプと勝手に思っていたのだが、意外にも正統派の騎士らしい両手剣(クレイモア)でアタッカーである。

 と言うか拡張鞄でもよくそんなの入ったね…

 父さんやカイト程ではないが、冒険者にしたらBランク上位者くらいの実力はありそうだ。

 ただ、私の印象も間違ってなくて、彼女は魔法も色々使えるみたいだし、器用に他の役割もこなせるだろう。

 枠にはまらない…何をしでかすかわからないところがある。


 私とミーティアは状況に応じて物理アタッカーと魔法アタッカーを切り替えてる。




 そうして魔物の駆除を進めて行ったが…突然ソイツは現れた…!


「次は…げっ、また面倒な…」


大蜚蠊(おおごきぶり)か。雑魚ではあるが数が多くてすばしっこいのが厄介…」


 …何でコイツらは定期的に私の前に現れるのか?

 落ち着け、落ち着くんだ(カティア)

 ふぅ〜…Be cool! Be cool!

 【俺】は別に平気だったんだから!

 私だって他の虫は平気でしょう?

 ほら、良く見て!

 同じでしょう?

 ………いや、違う。

 ぜんっぜん、違う!無理!

 と言うわけでプッツンします。

 (ここまで0.05秒)


「ぎやぁーーーーっっっ!!??GYAAAAAーーーー!!!でたぁーーーっ!!!」


「「「!!??」」」


 でたっ!!

 デタッ!!

 デカイ!!多い!!

 ………ぷつん。


 ここは[灼渦]で焼き尽くして…いや、待て!

 それはこの前怒られたでしょ?

 冷気もカイトにドン引きされたから…じゃあ、雷撃で。

 でも半端な威力じゃ跡形が残ってしまうから上級じゃないとね。

 よし!私落ち着いてるわ!(0.005秒)


「しねぇーーーーーっ!!![滅雷]っ!!!」


 即座に最大限まで練り上げた魔力を、魂の絶叫とともに前方に叩きつけるように全力全開で開放する!!


 まるで極太のレーザー光線のような強力な雷撃が黒い悪魔を飲み込む。

 プラズマ状態の超高温となった空気は、またたく間にソイツらをその残骸すらも残さずに蒸発させてしまう。


 数秒間かけて放出された電光が収まると…


 パリッ…バチッ…と余韻のように帯電した空気が音を立てるその場には…魔物は影も形も無くなっていた。



「よしっ!!悪は滅びたっ!!」


「わ〜、パチパチパチ」


「「いやいやいやいや…」」


 む?

 冷静に対処したはずなのに、なんで二人はドン引きしてるのかな?


「なんという似たもの母娘なんでしょ〜ね…でも、スペクターはともかく、あんなのに上級魔法なんてぶっ放さないでくださいよ…」


「…魔力の無駄使いだろ」


「…雷撃はお気に召さないと。[灼渦]の方がよかったかな?」


「いや、そうではなく…」


「そうだよね。二次被害を考えるとやっぱ[絶凍気流]だったかな。でも、雷撃も間違ってないと思うよ?」


「「だめだこりゃ…」」


「うん、納得してもらえたようで何より」


「「…はぁ〜」」



 さ、嫌なことはさっさと忘れて次いきましょ、次。



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