表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!  作者: O.T.I
第六幕 転生歌姫の王都デビュー

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

138/685

第六幕 22 『闇の中』

 本日は指名依頼遂行のため、王都郊外の鉄鉱山へ向かう。


 早朝、まだ日が昇りきらないうちから起床する。

 ミーティアも普段起きるよりも相当早い時間だったのだが、スッキリ起きてくれた。

 自分とミーティアの支度を整え終わる頃に、ちょうどケイトリンも部屋の前までやって来て、一緒に城外へ。


 そして、オズマさんと約束した待ち合わせ場所である大北門にやって来た。

 オズマさんはもちょうど同じタイミングでやって来たようだ。


「オズマさん、おはようございます。今日はよろしくお願いしますね」


「おはよ〜!」


「ああ、こっちこそよろしく頼む。ミーティアちゃんもおはよう。朝から元気一杯だな。…今日は無理言って悪かったな」


「いえいえ。迅速確実に遂行できるのが一番ですから。こちらとしても助かりますよ」


「それなら良かった。…ケイトリン?随分大人しいじゃないか…」


「…んあ?な〜に?」


「…どうしたんだ、こいつ?」


 そうなんだよね…

 今朝会った時からこんな感じだ。


「昨日、結構大変な任務があったみたいで、今朝からこんな感じなんです。今日は休んでおけば?って言ったんですけど…」


「おい、大丈夫かよ?そんなんで討伐なんて危険だぞ?」


「あ〜、だいじょ〜ぶだいじょ〜ぶ。歩いてるうちに目〜覚めるから〜」


「もう…レティみたいな事言って…油断してたらホントに危ないよ?」


「大丈夫ですって!ほら、だんだん目が覚めてきました!」


「…無理はしないでよね」


「は〜い」


 ホントに大丈夫かなぁ?












 大北門を出てからしばらくは王都近郊の町並みを進んでいく。

 王都から北に伸びるのは、『巡礼街道』だ。

 旧アルマ王国、現ウィラー王国アルマ地方を経てウィラー王国の王都に至る。


 王都周辺には大小の衛星都市が散在していて、街道周辺は比較的多くの家々が建ち並んでいたりする。

 ただ、王都の北側の地域は他の地域と比べて山地や森林がせり出しており、街道をしばらく進んでいくと景色はがらりと変わって、やがて街道は森の中を進むようになる。



 森の中を通る街道を進み、途中で山地の方へ向かう細い道が分かれる。

 今回の目的地である鉄鉱山はその細い道を更に進んでいった所にある。

 王都大北門を出発して、目的地には大体2〜3時間くらいで到着するといったところだ。


 道はだんだんと傾斜がきつくなっていき、徐々に山道になっていく。

 細いとはいえ鉄鉱石を運び出すために荷馬車がすれ違えるくらいの広さはあり、傾斜も辛うじて馬車が通行できるくらいだろう。


 やがて森を抜けると視界が開け、荒涼とした風景が目の前に広がる。

 草木が生えず直に岩肌を晒す山塊が行く手に現れた。

 道はその山の中腹ほどまで続き、そこに坑道の入り口らしきものが遠目にも確認できる。


 そこに至る途中にはかつて坑夫が宿泊したであろう小規模な集落がある。

 今回はギリギリ日帰りでいけるかな?とも思ったのだが、時間がかかるようであればここを使わせてもらうつもりだ。


 何かトラブルがあったときの予備も含めて、最大でも3日程度と見積もっている。



「あれがアデラ鉄鉱山ね」


 15前の大戦時に鉄需要の増加とともに開発され、戦後も近年に至るまで採掘が行われていたのだが、鉄需要の低下によって採算が取れなくなったため一時休止となった…らしい。

 だが、まだ十分な埋蔵量があると見込まれているのと、これから鉄道の敷設が進行すれば再び鉄需要の増加して価格が高騰してしまうと予測したモーリス商会が目を付けて、これを買取った…というわけだ。




 最後の道を登り、坑道の入り口に立つ。


「…流石に真っ暗だね。これはアレの出番かな?」


「アレってなんです?」


 ケイトリンの問に、私は鞄からとっておきのアイテムを取り出す!


「じゃじゃん!『代行の魔符』〜!」


「じゃ〜ん!」


 そう。

 購入したのは良いが、これまで使う機会がなかったのだ。

 照明の魔法を使ってると他の魔法が使いにくくなるからね。

 コレを使えばその心配もない。


「なんですか、それ?」


「ふふ〜ん、まあ見てて。…え〜と、『反唱』…起動したかな?それから[光明]っと」


 ぽわっ、と柔らかな光が私の手に持った魔符に点る。


「って感じね。一度魔法を使うとこの魔符がそれを持続してくれるんだ。魔力の温存ができるし、もう私の制御を離れてるから他の魔法を使うのにも支障がでないってわけ」


「へえ〜、便利ですねぇ…どこで売ってるんです?」


「これはね、ブレゼンタムの魔道具店で買ったんだ」


「う〜ん、ブレゼンタムかぁ…任務に使えそうだし、ちょっと欲しいなって思ったんですけど、遠いなぁ…」


「あ、アズール商会の傘下って言ってたから、多分そっちの伝手で注文できるんじゃない?」


「そうですか、じゃあ今度問い合わせしてみよっと」


 任務に使えそうって理由なあたり、なんだかんだで結構真面目なとこあるよね。


「やはり魔法が使えると便利だな。一応、魔道具のランタンを持ってきたのだが…」


「そしたら念の為に併用していきましょう」


「分かった」


 そう言ってオズマさんはランタンに明かりを点して腰に括り付ける。


「じゃあ行きましょうか」


「は〜い!」


「オズマ、あんた前衛だから先頭よろ」


「…分かった」


 …?

 ケイトリンって斥候タイプのような気がするんだけど…

 まあ、坑道にはトラップとかは無いだろうし、前衛先頭でも問題はないか。


 そして私達は探索を開始するべく、坑道に入って行くのだった。
















 



 坑道の中は魔法やランタンの光に照らされてなお、その先が見通せぬほど闇が濃く不気味な様相を呈している。

 採掘を行っている鉱山であれば坑道には照明が設けられているだろうが、ここは休止中ということもあってそれらは撤去されたようだ。


「おばけ、出そうなの…ぶるぶる」


 ああ…この子おばけが怖いんだったっけ…

 ゴーストとか出ないよね…?


「大丈夫だよ、ミーティア。もしおばけ(ゴースト)が出ても、ママがやっつけちゃうから」


「うん…」


 あらあら…いつも元気なミーティアが随分しょんぼりしてるよ…

 ホントに苦手なんだね。

 やっぱりまだまだ子供なんだな…と思うと、何だか逆に安心してしまった。

 それでも取り乱したりはしないので、やはりしっかりした子だとも思う。



 坑道は思っていたよりは広いが、天井は私でも手を伸ばせば届くくらい、幅は三人が横並びで歩けるくらいで、武器を振り回すには少し狭く取り回しには注意が必要だろう。


「さて、魔物の脅威度的には…Cランク程度だったか…」


「はい。こう言ったところに住み着く魔物の定番と言えば……早速お出ましのようです」


 歩きながらオズマさんと話をしている途中、この先数メートルほどのところに魔物の気配を感じ、警告を発する。


「お、さすがカティア様。斥候スキルもバッチリですね」


「あれは…ブラッドバットだな。確かに定番だ」


 洞窟などに住む魔物で、巨大な吸血コウモリだ。

 単体での脅威度はEだが、大抵は群れになるのでその場合はDランク相当だ。

 今回も10匹程度の群れになっている。


 とうにこちらには気付いているようで、キィキィ鳴き声をあげながら一斉に襲いかかってきた。


「[氷弾・散]!」


「[ひょうだん・さん]!」


 私とミーティアの魔法によって生み出された氷の弾丸が散弾のように撒き散らされる。


 キィッ!ギキィッ!!


 狭い坑道では避けるスペースなどあるはずもなく、飽和攻撃に晒されたコウモリたちは悲鳴をあげて次々と撃ち落とされていく。

 威力が分散されるのでこの一撃で倒すには至らないが、地面に墜ちたところをオズマさんとケイトリンが確実に仕留めていく。



「はい、おしまい!っと」


「こっちも片付いたぞ」


「よゆ〜よゆ〜!あっという間だね〜」


「まあ、群れでもDランク程度だから…まだまだ序の口だね」


「ああ。油断すんなよ、ケイトリン」


「あんたもね」




 ともかく、まだ探索を始めたばかりだ。

 薄暗く狭いので戦いづらいという事もあるし、オズマさんの言う通り油断しないで慎重に行こう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ