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【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!  作者: O.T.I
第六幕 転生歌姫の王都デビュー

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第六幕 5 『王城』

 マリーシャが来た翌日には王城からの使者がやって来て謁見の日取りが決まった。


 謁見の日までは邸で暮らすにあたって必要なものを買い込んだり、劇場との段取りをしたりと、割と慌ただしく過ぎていき、そして数日後にはその日がやって来た。






 いま私は謁見に備えてマリーシャにお世話をされているところだ。

 入浴を済ませて髪を乾かしドレスに着替えて…


 そうそう、ドレスと言えば…何か王城から大量に届けられた。

 これから必要になるだろうから、と言うことらしいけど、根っからの庶民感覚である私は少々…いや、だいぶ心苦しかったよ。


 まあ、マリーシャの説得もあり、せっかくのご厚意を無下にも出来ないので結局はありがたく使わせてもらう事にしたけど。


 今回は夜会とかに行くわけじゃないので、比較的シンプルなベージュのドレスにした。

 それでも流石は王城が手配したものだけあって、シンプルながら手の込んだ作りは見る人が見ればひと目で最高級の品であると分かるものだ。


 そして、母の形見であるペンダントを身に着ける。

 今回はこれが重要アイテムになるだろう。



「カティア様、それでは御髪を整えさせていただきます」


「うん、お願いね」


 まだ他人に身嗜みを整えてもらうのは慣れたわけじゃないけど、それでもここ数日のやり取りで多少は慣れたかな?


「マリーシャ、あなた一人では大変だったりしない?あ、人を増やしてほしいって言ってるんじゃなくて、単にあなたの負担が気になったんだけど…」


「ふふ、お心遣い頂きありがとうございます。ですが、それは無用なご心配ですよ。仕事量は問題のない範囲ですから。ただ、これから先はもう少し人手は必要かもしれませんね。私もお暇を頂くこともあるかも知れませんし」


「そうだよ、一人だけじゃお休みも取れないじゃない」


「今はまだ差し当たって…と言う事ですから。謁見が終わって正式にカティア様が王女として認められれば、その辺の調整もされるはずですよ」


「そう、なら良いのだけど。無理はしないでね」


「はい、ありがとうございます」



 私の身支度が終わってから、ミーティアの身嗜みも整えて準備完了だ。





 そうして身嗜みを整えた私とミーティアは、父さんとともに迎えの馬車を待つ。


「すぐそこなのに馬車でお迎えたぁ、随分大仰なこった」


「父さん、それ前にも言ってたよ」


「んぁ?…ああ、侯爵の夜会の時か。何だか随分と昔の事のような気がすんなぁ…」


「あれから色々あったからね」


 あの後だと…


 ルシェーラと遺跡に行って

 ミーティアに出会って

 軍団(レギオン)の相手して

 カイトに告白して…


 ブレゼンタムを旅立ってからも

 【私】と【俺】が一人の私になって

 リッフェル領の問題を解決して

 私がイスパル王国の王族であることが判明して

 レティに出会って

 鉄道に乗って…


 うん、凄く濃いね。

 波乱万丈な人生を過ごしているよ。


「だいたいはお前ぇ絡みのような気がするな?随分なトラブルメーカーぶりだ」


「え!?そんなこと無いでしょ!心外だよ!」


 全く…

 私は巻き込まれてるだけで、自分から首を突っ込んだことは無いよ!…多分。


「何れにしたって、これからも色々あんだろうよ」


「まあ、そうだろうねぇ…」


 と、そんな会話をしているとマリーシャが迎えの馬車が到着したことを伝えてくれる。


 じゃあ、行きますかね。

 ちょっと緊張してきた…











「リュシアンさん!それに…閣下じゃないですか!」


「カティア様、本日は私めが王城へとご案内させて頂きます」


 あ、流石に今日はそう言う扱いなんだね。

 まあ、しょうがないか。


 と、思ってたら…


「おう、嬢ちゃん。久しぶりだな!ダードも元気だったか?」


 以前と変わらぬ気さくな感じで話してくれる。

 うん、閣下にまでお姫様扱いされたら…笑っちゃいそうだ。


「お久しぶりです閣下、お元気そうでなによりです」


「おぅ、久しぶりだな。元気は元気みてえだが、少し痩せたんじゃねえか?」


「ああ…陛下にこき使われてっからなぁ…嬢ちゃんが『お父様、侯爵に休みをあげてくださいませ』とか言ってくれりゃあいいんだがよ」


 変な声色出さないでくださいよ。

 もしかして私のマネのつもりですか?


「気持ち悪ぃ声出すんじゃねえよ。しかし侯爵サマよ、ウチのカティアはお姫様だぞ、オヒメサマ。嬢ちゃん呼ばわりはちと問題じゃねえか?ん?」


「はっはっは!残念だったなダードよ、既に陛下の許可は頂いてるぞ!」


「私を『嬢ちゃん』呼びするのに陛下の許可を貰うとか意味が分かりませんが…今更閣下に姫様とか言われても笑っちゃいますけど」


「…父娘揃って同じようなこと言いやがる」


 あ、そうなんだ。

 親近感湧くね。

 民からは『英雄王』なんて言われてたりする方なんだけど、閣下の話を聞くと結構気さくな印象だ。


「まあ、今までと同じように接してくれたほうが嬉しいです」


「おう。そんで、そっちのちっこいのがミーティアか。本当に嬢ちゃんにソックリだな」


「はじめまして!ミーティアです!」


「おっ?ちゃんと挨拶できて偉いぞ〜」


「ふみゅう〜」


 といって閣下はミーティアの頭をナデナデする。

 ミーティアも嬉しそうなんだけど…

 あああ…せっかく整えたのに髪が崩れちゃう!






 そんなふうに久しぶりの再会を喜んで話が弾んでいると、リュシアンさんがもうそろそろ行こうと促す。


「さあ皆さん、積もる話もございましょうが続きは移動しながらにしましょうか。陛下がお待ちかねです。…あまり待たせると王妃様共々こちらに突撃してきかねません」


 ああ、閣下と同じタイプかな…

 もしそうなら話しやすそうで良いなと思うんだけど。

 










 そうして私達は馬車で王城へ向かう。


 馬車は王家の紋章が施された豪華なもので、街中ではこちらに気付いた人々は行く手を阻まないように脇に避けて頭を下げていた。



 私達が暮している旧貴族邸から王城まではそれほど離れてはおらず、ほどなくして王城の正門までやって来た。

 堀に囲まれた王城の跳ね橋を通って門をくぐり、その後も何箇所か門をくぐるところで検問のようなものがあったが、リュシアンさんが軽く挨拶するだけでフリーパスだった。


 アクサレナの王城はもともとは砦だったものを改修を重ねて規模を拡大していったもので、質実剛健で武骨な雰囲気、如何にも尚武的な気風を如実に表している。


 観光気分で馬車の中からあちこち眺めていると、やがて馬車は停車した。

 どうやら目的地に到着したようだ。



 リュシアンさんにエスコートされて馬車を降りる。

 そのまま城の中に案内されて歩いて行く。


 流石に王が住まう城というだけあって相当な広さで、かなり歩いたにも関わらずまだ目的地には着かないようだ。

 外から見たときは無骨な印象だったが、内部は適度に調度品が配置されて、華美になり過ぎない程度に華やかな雰囲気を醸し出している。


 そして、ようやく目的の部屋までやって来た。

 今日は謁見という名目だが、謁見の間ではなく関係者だけで別室で行うことになっている。



 ユリウス=イスパル国王陛下…私の実の父親。

 一体どんな人なんだろうなんだろうか。


 …実は前からずっと気になっていることがある。

 彼の名前と、彼が『英雄王』と呼ばれる所以。

 果たして…




 リュシアンさんが扉をノックする。


「失礼します。皆様方をお連れいたしました」


「入れ」


 入室の許可が出て扉が開かれる。



 そして、ついに父娘の初対面が果たされるのであった。


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