最終話:エピローグ
ξ˚⊿˚)ξ <これにて完結ですのー。
ξ˚⊿˚)ξ <読み終わって良かったと感じられたら、感想とか★とか頂けると幸いですのー。
今年の社交界は戦のためにいくつもの催し物が潰れてしまいました。
そしてその代わりという訳でもないですが、社交シーズンの最後に戦勝記念の宴が王宮にて行われることになったのです。
残念ながらノーザランのお父様、お母様はこちらに来るのは難しく、年が明けたらルートヴィッヒ様と今日の衣装を持って挨拶に行こうという話をしています。
わたしは仕立て上がったばかりのドレスに身を包みます。
銀糸と輝石を縫い込んだ白。光を反射して仄かに輝く生地は遠目に見ると青みを帯びた銀。裾の刺繍はアザミの意匠。
肩出しの首元にはお義母様からお借りした侯爵家の家宝の1つとも言える首飾り。
茶色の髪は結いあげられ、紫水晶を散らした髪飾り。
わたしはドレスを纏ってゆっくりと身をまわす。
ふわりとスカートがわずかに持ち上がって戻った。
「どうでしょう?見れなくはないと、良いのですけど」
ルードヴィッヒ様は眼鏡を外して天を仰ぐと、目を覆った。
「ああ、私のテサシアよ。君のあまりの美しさ、可愛らしさに直視できない私を許しておくれ」
「ルートヴィッヒ様も素敵です」
そしてわたしたちは広間へと進んだ。
戦勝の喜びと陞爵の高揚、陛下の言葉と乾杯の後にダンスの時間に。
まずは王太子殿下とミズキ様が中央で踊られる。そして次の曲でそこにわたしたちが加わる形。
「行きましょう、テサシア」
ルートヴィッヒ様の甘い声が耳を打つ。
流れる曲は小夜曲、奇しくもあのレガッタの日に踊った曲。
ルートヴィッヒ様の右手はわたしの左手を優しく、しかししっかりと握り、わたしは彼に導かれるように、ボールルームの中央へ。
レガッタの日と比べてわたしは変わることができたかしら。この身を包む衣装はあの時のドレス100着よりも高価だけど、わたしはそれに相応しい存在となれているのかしら。
踊る場所も庶民の酒場から王宮の広間へ。高い天井に描かれた絵画、水晶のシャンデリア、音楽家たちによる演奏。
お美しいルートヴィッヒ様はあの日と同様に自信に溢れ、その御髪もお顔も、眼鏡も一分の隙もありません。そして夜会用のイブニング・テールコートは黒よりも黒いミッドナイト・ブルー。
あの日よりもさらに華やかな装いです。
わたしは彼の正面に立ち……、ですがその緊張が解きほぐれていくのを感じました。
「……使ってくださっているのですね」
それはルートヴィッヒ様の胸元を飾るチーフが、わたしの刺繍したものであると気づいたから。
ルートヴィッヒ様は頷かれます。
「当然でしょう」
ふと、視野が広くなった気がします。王太子殿下もその横のミズキ様も優しくこちらに微笑みかけ、アヴィーナは婚約者の横でこちらに手を振っているのが見えます。
「踊っていただけますか、テサシア、我が最愛」
「ええ、喜んで」
わたしは真っ直ぐと手を伸ばします。絹の長手袋に包まれたわたしの手をルートヴィッヒ様が取り、視線が交わりました。
今宵、わたしは彼としか、彼はわたしとしか踊らない。これが婚約の証。
そしてダンスが始まりました。
――And they lived happily ever after.
The End.





