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守旧派は金で殺す、攘夷派は理で殺す。――幕末に転生した効率厨サラリーマン、内戦はコスパが悪いので和算と裏金で歴史を書き換える  作者: 関沢賢吉


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 この人も砲術の研究に興味あるのか?ってことは、もしかしたら裏で糸引いてるの、勝様かもしれん。でも正直、それは誰でも良い。興味がない。


 「友さんの研究を探らせてるんですか?それはいくらなんでも無理ですよ。まあ仮に探れてもきっと理解しきれないでしょうが。言えることは一つだけ。諦めて下さい」


 「諦めろ?バカを言うな。諦めるくらいなら直接問い正す」


 「それこそ愚策、相手されずに終わるだけですよ?」


 「なぜそんなことが言える?」


 「言えますよ。友さんと佐久間様は水と油。熱さや思いなど、数値化できない要素を嫌いますから。そして私と唯一、美しさや効率を共有できる相手ですし」


 「それが何のかんけ…」


 「だからそれを聞いてる時点で、佐久間様に対して、確実に興味を持たないと言っているんです。佐久間様は利益の利、友さんは理屈の理。同じ『り』でも、根っこの部分が全く違うんです。そこを理解しない限り、友さんと話をしたとて、理解することすら無理です」


 「そこまで言うなら、お前自身は小野殿の役に立っているのか?」


 「いえ、私にはもう到底無理です。あの領域にはついていけません。ですが、私は友さんの美しさを共感できます。そして、私ができることは、友さんが研究に打ち込める環境整備、それだけです」


 「それの何が楽しい?なぜ自らの知を追い求めん?」


 「知を追い求めることだけで世を変えられるとでも?それこそ思い上がりも甚だしい。良いですか?たとえ佐久間様がどんな高尚なことを述べようと、それを理解する人、検証する人、伝える人、実行する人、広める人、あらゆる人が周りにいなければ、ただの独り言と同義。そんな『知とは何たるか』という根源的な所を理解せず、ただ単に『新たな知を』と求めるなど、子供がおもちゃを欲しがるのと、何がどう違うのですか?」


 「ええい、言わせておけば」


 「ほら、ただの子供に何も言い返せず、最後は刀を振りかざす。佐久間様も地に落ちたものですね。『知で勝てなかったから刀で勝った卑怯者』として名を馳せれば良い。さあ、どうぞ」


 「藤二、そこまでにしろ」


 振り向くと勝様だった。


 「佐久間も抜くなよ。抜いたら流石に庇えん。とりあえず今日は帰れ。ワシが預かる」


 「だが」


 「だがもへったくれもない。お前の得意とする論で言い返せなかっただけだろ。いいから大人しく帰れ!」


 「チッ」




 「さて藤二、完全にやりすぎだ。反省しろ」


 久しぶりのゲンコツくらった。いてー。ところでいつから見てたんだ?


 「知で負けて地に落ちる、上手いこと言ったな」


 そこからなのね。


 「こんなところにいるとは、ワシに火急の用でもあったのか?」


 「はい。家の方に文を渡しに来たらたまたま会いまして、いささか口論になってしまった始末です。申し訳ありません」


 「わざわざ文を、ということは、なかなかの内容だと言うことか?」


 「はい、なかなかです。私どもでは判断しきれず、勝様へ、となりました」


 「それは、家の方が良いか、調所の方が良いか」


 「出来ましたら調所の方が」


 「では行こう。向かいながら、先程の話を聞くとしようか」


 てな訳で、事の顛末を話す。改めて話すと、俺って自分の周りを軽く見られるとスイッチが入っちゃうらしい。


 「小野殿もな、お前のこととなると人が変わることに気付いているか?冷静沈着で淡々と進める男なのに、お前が絡むと途端に頑固になる」


 えっ?そうなの?


 「やはり気付いておらんか。多分、箕作殿も内田殿も同じ認識を持っておるぞ。お主ら2人は何なのだろうか。師弟でも親子でも上下でもない、友が一番近いのかもしれぬな」


 友さんはこの世界では珍しい、いわゆるデジタル思考の持ち主だと思う。だから他人からの評価がそうなるのも分かる。むしろ珍しすぎて、異質として扱われてたのかもしれない。感覚が似てるんだろうな。感情、感覚なんかよりも理屈。感情100で動く人の方が多い印象だから、確かにその人らから見れば奇異に映るだろう。


 調所にはまだ杉先生がいたので、疲れてるとこ悪いが直接話してもらう。その様子見てたら、どうも情報自体は知ってたっぽい。でも真偽不明の噂の一つ的に捉えてた感じかな。ひとしきり杉先生と話し込んだあと、突かれたくない所を的確にツッコんで来た。


 「話は理解した。杉殿ありがとう。ところでわざわざ出島まで何をしに行ったんだ?」


 杉先生、箕作様の目がこちらに集中。みなさん正直過ぎるって。それに釣られて勝様もこっち見たじゃん。


 「またお前か、正直に吐け!」


 いやいや、吐くも何も。だいたい、またってなんだ?一冊手元に置いといて良かった。見てもらった方が早い。慌てて書庫に取りに行って、現物を見せながら説明する。数独も知っててくれたから、話が早い。


 こっちが入れてるんだから、こっちから出しても問題ないだろ?ってとこで驚いてた。入れたのと同じもんを出すだけなのが、そんなに驚くことか?こっちから持ってった物を説明し、また杉先生へバトンタッチ。持ってった物の対価が蘭書2冊と情報なんだ。十分お買い得じゃない?ここでやったことは、結局は翻訳でしかないんだから。


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