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守旧派は金で殺す、攘夷派は理で殺す。――幕末に転生した効率厨サラリーマン、内戦はコスパが悪いので和算と裏金で歴史を書き換える  作者: 関沢賢吉


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 冬になると蝋燭需要が増える。日が短いから当然だ。蝋燭屋さんの書き入れ時なのに、石鹸ばかりが売れると悲鳴をあげている。何でもお客から、蝋燭は他でも買えるけど、石鹸は他では買えない。だから、石鹸よこせなんて言われるらしい。


 蝋燭屋さんに指示をしたのは1つだけ。石鹸を小さく切り、蝋燭を買いに来た「女性にのみ」試供品、おまけとして渡すこと。そしたら1週間もしないうちに、石鹸目当ての客が殺到したらしい。


「来年には蝋燭屋を辞めて泡屋にでも商売変えせにゃならんかもな、ガハハ。おい、手を止めるな」


 状況確認に来たら手伝わされてる。やっぱり女性の方が敏感だ。話が回るのが早い。秒だ、秒。大当たりだ。婆さんの背中で肌で感じた伝播力。SNSなんかないのにバズる。


 連理玉も良い感じにバズってる。誰か冷静にツッコまないのかな?せっかく蘭書売ったのに、結局手元に残ったのはわずかな金と訳の分からん玩具だけやないかい!って。佐久間氏はどんな手を使ったのかは知らないが、コピー品作ろうとして、失敗ばかりらしい。本当におっちゃんの言ってた通りだ。マネ出来んって。


 そんなこんなで年越し。年末に調所が閉まるので、蘭書持って帰りたい希望が多数。ここの人ら、どんだけ勉強好きなんだろ。良い感じに人も増えてる。吠えない、罵倒しない、冷静に討論が出来てる。素晴らしい環境だ。今年はここの環境整備に追われた感じだけど、我ながら頑張った。来年はいよいよ、何となくどうで◯ょうのせいで頭に残ってる嘉永六年。どんな年になるのかな。ちょっと駆け足すぎたから、少しはのんびりしたいんだけどな。



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side 内田五観&箕作阮甫


 「ようやく今年も終わりましたな。長かった」


 「本当ですな。まさかこんなに追われる日々になるとは」


 「蕃書調所の設置をこちらから求めたからこそ文句も言えんしな」


 「今年こそ藤二様々で、まさかの蘭書の量からして雑多に並べるしかないと覚悟しておったわ」


 「アイツの効率がこうも活きてくるなど、話を聞いてるだけだと、想像も出来んかった」


 「そういえば、小野殿の話聞いたか?」


 「うむ、正直驚いたぞ。言われたことを、ただ黙々と淡々とこなすだけのお人だと思ってたのに、まさかお上のご指示に意見するとは。しかも理由を問い正すと『藤二との約束』だなんて」


 「ワシらはアイツに振り回されておるが、小野殿だけは、アイツと知り合ってからというもの、随分と変わられたようだな」


 「でもそれは、藤二にも同じことが言えるぞ。小野殿に対してだけ、感情で動くようなところが見受けられる。思考が似ているからこそ、近しい関係を築いておるのかもしれぬな」


 「それこそ、歳の差関係ない友人とかか?」


 「ワシはそのように感じてるぞ。それと杉殿、どうも見ていると藤二から何かを得ようとしているかのようにも見えるし」


 「確かに杉に関しては、その気持ちがあるのは間違いない。どうも自分の修めるべき学問が見えてきそうだと、そう言っておった。焦らんでもそのうち見つかるであろう」


 「弟子の道筋を師匠が示してやらんで、藤二を使うのか。アイツも大変だな」


 「確かに大変だが、アイツ自身が何かしてやることを求めていないだけ、まだマシでないか?何ならアイツは自ら多忙になるように動いておるし」


 「そのおかげでワシらの仕事がラクになっている以上、何とも言えんがな」


 「確かに。でも、アイツに任せてしまった方が、アイツもワシらも効率が良い。背負わせすぎるのもどうかとも思うんだが」


 「効率と言えば、実験の際のアイツの異名、聞いたか?」


 「異名?ワシが聞いたのは『困った時の藤二頼み』って言葉だが」


 「そうか、ワシは『とうじん様』って呼んでるのを聞いたぞ。天神様と掛けているんだろうが」


 「アイツが神様か。出世したもんだな。だがな、そう言いたくなる気持ちは分かるぞ。蘭書に書かれている実験の材料、やり方は分かる。でも、どうなったら成功なのか、失敗なのか、何が原因なのかは分からん。失敗の原因を探ろうにも何が駄目だったのか、全てが駄目なのか、一部が駄目なのか皆目見当もつかん。それをアイツは、まるで正解を知ってるかの如く指摘し、書かれている成功に導く。なんならこちらが成功だと思ったものですら、指摘してくる。だからこそ自然と、アイツの助言を皆が求めるようになる。本当に不思議なヤツだ。天神様が子供に憑依したのかと思うのも自然な流れ」


 「それでとうじん様だからな。もう勝様のところまで行ったら、半分こちらの手は離れてるようなもんだが」


 「まさしく」


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