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守旧派は金で殺す、攘夷派は理で殺す。――幕末に転生した効率厨サラリーマン、内戦はコスパが悪いので和算と裏金で歴史を書き換える  作者: dora


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 「江戸へ、行きます」。


 翌朝、父の目を見てしっかりと伝えた。俺は「親の心子知らず」ではない。「親の心を分かる」子供だ。どれだけ喜んだか、どれだけ苦悩したか、親の立場を経験したからこそ、本当の意味での共感は出来なくても、理解は出来る。


 一言、「そうか」だけ。分かる、分かるよ。感情ぐっちゃぐちゃだよね。だからこそ、無表情を貫く以外ないよね。


 それから急にいろんな準備が始まった。と同時に、母と祖母が涙脆くなった。爺様の所へ再度父と2人で行って、あとは寺子屋やら剣術道場やらへ挨拶。弥一は相変わらず「遊び行って良いか?」とか呑気なこと言ってるが、寂しそうな顔をしてるの隠しきれてない。美祢は多分、分かってない。それがまた寂しい。忙しさの反面、荷造りは簡素なものだ。俺が持って行くのは算法の本3冊と「例の箱」のみ。あとは身の回り品。


 正直、娯楽の少ない世界を舐めてた。村での噂の伝播力半端ない。知らない人にまで「凄いな」と声を掛けられるようになっていた。ちょっとしたお祭り騒ぎに近い。これはマズイと思った時には、もう遅かった。気が付いたら「将軍様の指南役」にまで膨れ上がっていた。格好のおもちゃだ。そういえば前世で「俺はマス◯ミのおもちゃじゃない」って叫んでた人いたな。


 文◯砲食らった有名人ってこんな感じだったのかな?有名になると知り合いや親戚が増えるってこういうことなのか、なんて引きこもってたら、少しずつ空気が変わって来たのを感じた。まだ75日経ってないのに、なんて注意深く観察したら、理由が判明した。祖母だ。なるほど。人の噂が何よりの好物だからこそ、抑え方も分かってるってことか。祖母の話に聞き耳を立ててると、事実だけは否定しない。誇大の部分は否定、訂正。不明点は軽く否定、と使い分け。結果残ったのは、「寺子屋で師匠の代わりに教えてた神童」のみ。情報統制能力すげーな。実はこの村のあらゆる噂の発信源、祖母なのか?


 問題は、母の過干渉と、それによる美祢の嫉妬。ここんとこ手も繋いでくれない。寂しい。


 そんなこんなで出発の日。ホントは内田殿がウチまで来て、「下さい」、「お願いします」がお約束みたいだけど、収まったとはいえ一度は話がデカくなったこともあり、一家総出で大国魂神社へ出向き、俺の引き渡しをする流れになった。引き渡しって表現、なんか捕虜っぽくてやだな。


 出発の日、文字通り村の人総出で見送ってくれた感じ。居ると思わなかった道場の人らも居た。宗次郎に「お前凄いな」と言われたから、思わず「お前の方が凄いよ」と言ってしまった。なんで言われたか分からんような顔してたけど、これだから天才ってヤツは嫌いだ。



 神社に着いたら、すでに内田殿が待っていた。お付きらしき人いないから、またお忍びなのかな?ホントに偉い人なのか疑わしい部分もあるけど、そういうことが無いように、ある意味爺様が身分保証的な役割も果たしてんのかもな。どっち側からしても、保証人的な。


 お約束のやり取りが始まって、母と祖母は涙ぐんでる。それに釣られたのか美祢も泣き始めた。弥一も必死に我慢してる。それを見て、俺も感情的になった。でも、俺にはやるべきことがある。


 「では、よろしくおね」


 「お待ちください!何点か確認したいことがあります!!」




 その場に居た全員からギョッと見つめられた。条件確認するの、そんなおかしいことか?証人は多ければ多いほど良いじゃん。言った言わないになりにくいし。気にしない。


 「行く前に確認しておきたいことが2つあります。1つ、関流の解法を身に付けろ、ということでしょうか。もう1つ。日野に帰省する機会はありますか?」








 みんなして口ぽかーん。


 「ガッハハハハ。確かにな。お主にとっては分からぬことだらけだろうから、確かに不安もあるだろ。まずな、内弟子とはいわば、その家の子になるというのと同義じゃ。ただ、まだまだ童。里心を抱いて当然。内田殿どうじゃろ、お主がこちらに参る機会に一緒に連れてくるくらい良かろうて」。


 「ええ、それくらいなら何も問題ございません。あと、算法についてだがな、詳しいことは後ほどだが、心配することはない」。


 「分かりました。よろしくお願いします」。


 うん、やっぱり確認は大事。これ聞いとかなかったら、もしかしたら今生の別れ、とかだったらイヤだ。美祢に忘れられるかもしれないし。


 「ではこれで良いかな?」


 なんか、さっきまで流れてたシリアスな空気がいつの間にか無くなってた。また俺、やっちゃったの?何が?どこで?


 でも、やっちゃったものはしょうがない。何となくの流れとか、空気読んでとか、そういう言語化、明文化してないもの好きじゃないし。


 最後の別れの時は、美祢が抱きついて来てくれた。










 泣いた。


誤字報告ありがとうございます。感想もありがとうございます。

普段週末しかPCで開かないため、遅くなりまして申し訳ありません。

思ってた以上の方に読んでいただけて恐縮です。

今後ともよろしくお願いします。エタることのないように頑張る所存です。

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