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守旧派は金で殺す、攘夷派は理で殺す。――幕末に転生した効率厨サラリーマン、内戦はコスパが悪いので和算と裏金で歴史を書き換える  作者: dora


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 あれからずっと家族の様子がおかしい。父はずっと何か考え込んでる。黙って考え事ばかり。必要なことしか口にしないところは変わらず。つまり表面上は変わらない。だがずっと考え込んでる。犯人は爺様以外あり得ない。何した?


 あとは母と祖母のスキンシップが増えた気がする。美祢がこっちを見て、恨めしそうな顔してる。そうか、俺を母と祖母に取られて悲しいのか、なんて考えてたら「にいに嫌い」と言われてしまった。逆だった。少なくとも俺は悪くない。冤罪だ。


 寺子屋の師匠も相変わらずよそよそしいというか何というか。こちらは内田殿と会ってからずっとだから、原因は読めてるから良い。改めて考えたら、普通に生きてて会えるかどうか分からんレベルの立場の人だもん。あまりにビクビクしてるから、いたずら心湧いて「宗家預かりってどんな立場の人?」って聞いたら、事細かに説明してくれた。「そんなことも知らんでお相手したのか、失礼な」って怒られたけど。


 宗家=家元。つまり関流なら関さんの家が家元。で、算法のセンスがその家元よりもあると認められた、トップの人ってことか。創業家として株は持ち続けてるけど、会社の経営は他人に任せてる、その任された社長ってイメージか?





 ってトップ?そんな人に「内田殿」なんて生意気な態度とって、やっぱり俺殺される?でも、殺す気あるなら既にやられてるよな、いや、油断した頃合いを見計らってってパターンも?俺殺しても何の得もないよね、あの人。そういえば爺様言ってたな、「関流で数独の研究してる」って。数独の権利奪うため?いやいや、得する権利なんて何もないよ?



 改めてビクビクし始めてたある日、珍しく父に声を掛けられた。


 「藤二、ちょっと寺に用があるから、ついて来なさい」。


 「俺も行く」。間髪入れずに弥一の声。


 「アンタはいい加減、書を身に付けなさい。今日は父上の部屋で字の練習」と母。

素晴らしい連携プレー。


 「じゃあ私が着いてってあげる」。こっちも美祢が参戦。こうなると


 「美祢はまだ小さいから、お外はだめ。美祢もそろそろ、仮名の勉強しなきゃね」。


 負けじと祖母が参戦。最後は「にいにばっかりズルい」と結局俺が被弾。俺、無罪だろ。そこはフォローしてくれないんだ。父と2人で出かけることになった。何故か母と祖母が目を逸らす。



 あっ、もしかして俺、罪人とかの扱いでどっか連れてかれるの?この世界での常識しらねーから、何がやらかしだったの?


 「寺子屋はどうだ?」とか「剣術はどうだ?」とか。これ知ってる。間を繋ぐためのどうでも良い話だ。俺も息子にしたことあるし。なかなか本題に入れない時のやつだ。本題はなんだ?やっぱりどっか連れて行かれるのか?


 「お前、江戸に行きたいか?」ん?ここまでとは趣向の違う質問だぞ?


 「みんなで?兄ちゃんも美祢も絶対行きたがるよ」


 「いや、お前一人だ」。ん?どういうこと?江戸で処刑されんの?


 「内田様を覚えてるか?」そりゃもちろん。騙し討ちされたし。え?内田殿の目の前で処刑されるためにわざわざ江戸に行くの?ってか、様?様か。そりゃそうだ。ん?何で内田殿が様を付ける身分って知ってるんだ?ははーん、また爺様の入れ知恵か?そんな知恵入れるヒマあったら、俺を助けろよ。


 「内田様がな、お前を内弟子にと仰ってるそうなんだ」













 は?内弟子?どういうこと?あの非合理な算法を叩き込まれるの?えー、それはやだなぁ。どうやってもアラビア数字の方が計算ラクじゃん。「あのやり方しか認めん」とか言われるなら、算法に拘る必要なんかそもそもないし。


・家督は弥一が継ぐから、いずれは自分で身を立てねばならん。

・自分も次男だったからよく分かる。曰く、余程の才がないと、婿入り探すか、養子に入るか、厄介者か浪人か。

・自分はまだ恵まれているが、婿は立場が弱いぞ。

・下級武士から幕府に繋がるなど、夢のまた夢のまた夢。身分と才があってもその立場に近づけるとは限らん。

・信じられんほどのステップアップ。

・光栄なこと、この上ない。




・でも、まだ小さい。嫌だったら親としてもう少しの間キチンと面倒見る。自分で考えて答えを出せ。その責任はこちらが取る。



 なるほどね、これを言いたかったのね。そしてようやく、点と点が繋がった。この話を爺様が父にしたから、家ん中がおかしくなったんだな。


 リアルな話、子供は金が掛かる。前世で息子が一人だったのも、もちろん出来なかったってこともあるが、夫婦で口にはしなかったが「もう一人育てる余裕ある?」って考えてたもんな。だからこそ「何としてでももう一人」ってならなかったし、お互いに。


 大事ならとこだから、ここで確認しとくか。


 「父上、内弟子って、父上が仕送りしなくてはならないのですか?」


 そしたらビックリ、衣食住全部向こう持ち。数学解いたら特待生。マジで?それ、「来い」でも「来ていいよ」でもない、「来て下さい」じゃん。言葉悪いが口減らしとして、この上ない破格の話だな。にも関わらず、俺の年齢を考え、真剣に悩み、挙げ句には断っても良いとまで言った父、偉いな。前世で父の年齢の頃、多分合コンばっかやってたぞ。前世で父と同年代の若手社員、推し活だ、サブスクだ、結婚はコスパ悪いだ、昇進したくないだ、好き放題言いまくってたぞ。偉い。尊敬する。


 「急に言われてお前も驚いただろ。よく考えて結論出せば良い。息子の将来を考えれば行かせるべきだと思う。でも、子を思う父としては、行かせたくない」。










泣いた。。。


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偉大な父だね 泣ける
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