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守旧派は金で殺す、攘夷派は理で殺す。――幕末に転生した効率厨サラリーマン、内戦はコスパが悪いので和算と裏金で歴史を書き換える  作者: dora


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 もう少しで爺様に渡された問題を解き終えそうだ。とはいえ、これにも塵劫記同様、きちんと前提条件が明示されていない問題があったため、「不適」とした。この出題パターン、気持ちの悪さしか感じない。これを出す意図が何なのか、何をしたいのか全く分からない。


 あとは、剣術の道場に通うことになった。弥一はすでに通っているのだが、そこに一緒に。どうも隙あらば土いじりしてるのを母が心配したらしく、通うことになってしまった。いずれ、と覚悟はしていたが、思いのほか早かった。算法に向かう時間が減るのがヤダな。


 こんなときの癒しは美祢だ。いつの間にやら歩くようになり、肉体的アドバンテージも減って、抱っこしてやることがキツくなったのが残念だが、テトテトしながら「にいにー」と来られると、可愛さが増している気がしてしょうがない。


 絵馬はあの後3回くらい出された。簡単すぎるのに若干腹立ったので、速攻解いてやった。お手伝いのお姉さんに一度、「何のために書いてるの?」と聞かれたが、「出されてるから」と答えておいた。釈然としない顔してたけど、後の世にはもっと訳の分からん言葉が広まるんだよ?「何のために登るのか?そこに山があるからだ」って。深く考えちゃダメだよ。それよりもニコニコしてた方が可愛いよって思わず言ってしまった。セクハラにならないよな。


 弥一と一緒に剣術道場に通って、やっぱり危惧してた状況になりつつある。「スジが良い」。それは「剣道の動きを知ってる」だけなんだ。ただ、それ以上に圧倒的に凄い子供がいた。宗次郎っていうらしい。あれはセンスある。間違いなく。前世も含めて、あんなにセンスを感じたヤツは見たことない。おかげで俺が霞むこと霞むこと。


 剣道は好きだった。好きだった上で、諦めた。別に何か大きなキッカケがあったわけじゃない。好きだったけど、好きだったからこそ、報われない努力があることを知った。だから怪我を言い訳にして辞めた。センスが努力を軽く凌駕する、ということだけは理解している。


 そして、宗次郎のセンスが光るが、実はそれを教えてる手伝いの兄さんも相当ヤバい。いくら子供相手とは言え、あれを軽く捌けるって、実は相当な実力者だと思う。打ち込んでっても軽くいなされる。俺みたいな小手先でどうにかしようとするんではなく、柳のように流される感じ。石田さんっていう薬屋の傍ら、たまに来て相手してくれてる。


 一番困ってるのが道場の先生代理みたいな、副館長みたいな人。先生は「勝太」って呼んでる。昭和でもなかなか見なかった熱血漢。オレンジ色の芸人の「やれば出来る」を強要して「だからやれ」を押し付ける感じが苦手すぎる。


 なまじ弥一が「うちの藤二はすごい」なんて言ってまわったせいか、無駄に目をかけられるのがしんどい。やれることはやる。でも、出来ないとこを必死にやるより、やれるのにやってないことをこなしたい。だからこそ、今の俺には剣術よりも和算だと思ってる。大体まだ体も出来上がってない。そんな子供に無理を強いるな。




 「この問いを解いた藤二というのはどこに住んでおるのだ?」。寺子屋で習っていると、突然そんな声が聞こえてきた。覗いてみると寺子屋の師匠が知らんおっさんに詰められてる。「俺がやったこと悪いの?」と考えながら聞いてると、昨日夕方奉納したのに、今日朝覗いてみたらもう解かれてる。流石にこれは早すぎるし、算法の名人がいるなら会いたい、とのことだった。


 「藤二なら今来てるので、少々お待ちを」。そう和尚が告げて、俺が呼ばれた。俺の姿を確認するなりそのおっさん、大笑いし始めた。「和尚、なかなか面白いこと言いますな。確かに藤二という名の子供かもしれん。でも、算盤もおぼつかないような年齢のこんな子供が、こんな算法を解けるはずないでしょ」とひとしきり笑った。


 「寺子屋始まってる時間に騒いで申し訳ない。しかし和尚も人が悪い。こっちは真剣に探してるのに、人を揶揄うなんて。ま、この藤二がどこの人か分かったら教えて下さい。それじゃ」と、勝手に満足して帰ってった。


 その後、空気がおかしくなり授業どころではなくなったので、結局休憩。授業は仕切り直しとなった。子供達は境内に飛び出て思い思いに遊び始めた。この空気、既視感あると思って必死で考えたら出てきた。学校の校庭に犬が紛れ込んできた時のあれと一緒だ。


 で、俺はお姉さんと一緒に和尚に呼び出された。なんでお姉さんも一緒に?と思ってたら、どうも俺がやってたこと全て報告してたらしい。挙げ句、毎回呼ばれるのが面倒だったので、今朝掛かってるのに気づいたので、下の方に付け替えておいた、と。軽くショック。


 次、俺の番。聞かれたことは、俺が神主の爺様に聞いたこととほぼ一緒。あまりに澱みなく流暢に答えたからか、なぜ知ってるかを聞かれたので、爺様のことも伝えたら「あの神主殿が言うなら間違いない」だって。あの爺様、実は凄い人なの?ってか、よくよく考えたら、この師匠が父に余計なことを言ったせいであの爺様と知り合いになったんじゃねーか。思わず文句を言ったが「周りを見てみろ、あれが普通の子供だ」の一言で撃沈。


 「あの問題の難易度はどんなものか?」と聞かれたので、素直に「今日のは特にひどい。塵劫記解ける人なら誰でも解ける。あの程度の問題を奉納するなんて、神様にも失礼だし算法への冒涜でしかない」と素直にぶちまけた。


 「お前にはやっぱり算術の授業は必要ないな、今日からは算術の授業を手伝いなさい」。俺の塵劫記進める時間がどんどん削られる。。。


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― 新着の感想 ―
未来の新選組局長と副長に剣術を習い、兄弟弟子が一番隊組長という贅沢さw
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