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#32 今後のことを考えてみるが




 お泊りの最終日。

 夜通し激しく求めあっていた為、朝方いつの間にか二人とも寝ていた。


 目が覚めると、ベッドで裸のまま抱き合ってて、時計は既にお昼12時を回っていた。


 結構寝たはずなのに、体中が重くて怠い。

 朝方までしてて、シャワーも浴びずにそのまま寝ちゃったせいか、下半身がヒリヒリする。 頭もぼーっとしているので、とりあえずシャワーを浴びようと、気持ちを奮い立たせて体を起こす。


「う~ん・・・・」


 が、寝ぼけているアイナさんにしがみ付かれて、引き戻される。


 スッピンのまま寝ている彼女の顔を間近で見つめる。



「寝顔も、可愛いな」


「・・・・」


 声を掛けてみるが、起きない。



「ホント、顔小さいな。そんで、まつ毛、なっがっ」


「・・・・」


 やっぱり起きない。



 鼻をペロリと舐めてみる。


「・・・・」


 起きない。



 顔中舐めてみる。 


 ペロペロペロ


「うふん。  なぁに?」


 起きた。



「そろそろ起きましょう。 もうお昼過ぎてますよ」



 体を起こしてベッドから降りようとすると、両手を広げて「チューしてぇ」と甘えるので、唇に軽くキスをしてからベッドを降りる。



「シャワー浴びてから、食事にしましょう。 昨日の夕方から何も食べてないし、お腹空いたでしょ?」


「じゃあダッコで連れてって」



 アイナさんは寝惚けているのか普段と違い、子供みたいな口調で甘えてくる。


「はいはい」


 寝転がったままのアイナさんの首とヒザ裏に手を差し込んで持ち上げる。お姫様ダッコだ。



「だいじょーぶ? 無理して腰痛めないでよ?」


「ダッコしてって言ったの、アイナさんじゃないですか」


「だってぇ、甘えたくなったんだもん。うふふ」




 二人で一緒にシャワーを浴びていると、「アソコがジンジンして痛いわ。あんなにしてたものね。今日はもう止めた方が良さそうよ」と、普段の口調に戻っていた。


「俺もヒリヒリしてます。記憶が朧気だけど、最後入れたまま寝ちゃってましたよね?」


「そういえばそうだったわね。ワタル君ったら最中に動かなくなるから、あれ?って思ったら寝てるんだもん」


「流石に、途中で寝落ちする程なのは、やり過ぎでしたね」


「でも、今まで溜まってた物、全部出し切った充足感があるわよ」


「そんなに溜まってたんですか?」


「9年は溜めてたかしら?」


「ヤバイっすね。俺居なかったらどうなってたことやら」


「うふふ」


 狭いお風呂で密着してシャワーを浴びながら、呑気にお喋りをしていると、アイナさんは湯船の淵に腰かけて、髪が濡れて気怠そうな表情で俺の下半身に手を伸ばし、ニギニギといじり出した。


「今日は帰らないといけないし、ジンジンして痛いんでしょ?そろそろ止めておきましょうよ」


「ええ、分かってるわ。可愛いから遊んでるだけよ? デュフフフ」




 ◇




 シャワーを終えて、部屋着に着替えた。 久しぶりに服を着た気分だ。

 アイナさんは、俺のTシャツとハーフパンツを着た。スッピンでラフな部屋着姿も可愛らしい。 ホント、美人て何着せても様になるな。



 お昼はご飯を炊いて、俺が塩ジャケを焼いて簡単なサラダを作ると、アイナさんがお味噌汁を作ってくれた。

 もう定番となったダイニングのテーブルで横に二人くっ付いて食事をしながら、これからのことを相談した。



「アイナさんとの交際を認めてもらうには、何をすれば良いと思います?」


「うーん、普通に話すのじゃダメなの?」


「わかりません。 でも、俺は反対される可能性が高いと思います」


「どうして?パパはワタル君のこと、気に入ってると思うけど」


「それは、あくまで山霧堂のイチ社員としてです。大事な娘の彼氏とか結婚相手とは全く次元が違いますよ」


「どうしてそう思うの?「娘の結婚相手には、荒川君しかいない!」って思ってるかもだよ?」


「ありえません」


「だからどうしてよ?」


「以前、副社長が俺に言ってたんですよ。 アイナさんにはお見合いして早く結婚して貰いたいって。その話聞いてて、妙にお見合いに拘ってるように見えたんです。 だから、多分ですけど、副社長は会社や山名家にとってコネクションとなるような人とアイナさんを結婚させたいって考えてると思います。それに、俺にそんな話をするのだって「娘に手を出すなよ?」っていう牽制の可能性もありますし」


「パパが? うーん・・・会長にはその様なこと言われたことあったけど、パパからはまだ言われたことは無いわね」


「でも、お見合いの話は何度もあったんでしょ?」


「ええそうね。じゃあやっぱりそうなのかしら? でも私はイヤよ。お見合いなんてしたくないし、ワタル君以外との結婚だって考えられないわ」


「俺だってそう思ってますよ。アイナさんにはお見合いして欲しくないし、俺以外の男と結婚なんて、絶対に認められないですよ。 だから、どうすれば良いかを考えてるんです」


「そっか。 うふふふ」


「いや、笑いごとじゃないですよ?真面目に考えて下さいよ」


「だって、ワタル君、私が他の男性と結婚するの、認められないんでしょ? それってワタル君が私と結婚してくれるってことなんでしょ? もうそれって、プロポーズと同じじゃない」


「まぁそういうことになりますけど、結婚はまだまだ先の話で、いずれはってことです」


「でも、結婚はしてくれるんでしょ?」


「・・・・ええ」


「なんだか気になる間があったわね」


「だって、恥ずかしいですもん。そんな面と向かって結婚のこと聞かれたら」


「えー照れてるの~? あんなに激しく愛し合ったのに、今更?」デュフフ


「もう!とりあえず結婚の話は置いておきましょうよ! 今は、どうやって交際を認めてもらうかですよ!」


「照れてるワタル君ったら、可愛いわね。 アイナお姉様がギュっとしてあげるから、おいで?」



 結局、アイナさんは『ご機嫌お姉様』になってしまい、食事そっちのけでイチャイチャベタベタしはじめ、まともに話し合いは出来なかった。






 この後はセックスはせずに二人でのんびり体を休めながら過ごして、16時には帰る支度を始め、17時過ぎには通販で取り寄せたお土産を山ほど持って、アイナさんの自宅まで送り届けた。


 アイナさんを送り届けて帰宅した後、一人で寝室やキッチンを片付けながら、今後の事を考えた。



 俺がアイナさんと交際していると知った時、山名家の人たちはどう思うのだろうか?


 野心のある社員?

 出世が目的?

 山名家の財産狙い?


 しかし、俺にとってはどれも興味が無い。

 俺が欲しいのは、アイナさんだけだ。


 だから、野心も出世欲も無いことをアピールしたほうのが良いのか?

 逆に、野心も出世欲も無い無欲な奴だと、頼りない奴と見られないか?


 わからん。


 でも、どちらにせよ、一番必要なのは、仕事での実績では無いだろうか。

 飛びぬけて優秀な社員だと認めて貰えれば、アイナさんとの交際だって認めて貰えるのでは?

 逆に、大した実績も無い平凡な社員のままだと、身の程知らずとしか見えないだろうし。


 しかし、飛びぬける程の実績か。

 簡単なことではないし、すぐに事を動かせる程の身分でも無いから、焦らずじっくり考えて行くしか無さそうだな。






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