第471話 間に合ったみたいだね
轟音と共に部屋の壁に大きな穴が開く。
そこから突入してきたのは、巨大な僕だ。
「「「って、スーパー村長!?」」」
その正体は、見た目が僕そっくりに作られた巨人兵。
「よかった……間に合ったみたいだね」
僕はホッと安堵の息を吐く。
実は念のため、この巨人兵を魔大陸に向かわせていたのだ。
「こっそり飛行能力も追加しておいてよかった」
スピーカーから聞こえてくるのはドナの声だ。
どうやら彼女が操縦しているらしい。この場所を伝えるために、僕の影武者も一緒に乗っているはず。
「ドナのことだから、きっと勝手に性能を強化してるだろうとは思ってたけど……」
結果的にそれが役に立った。
普通の巨人兵では、海を越えてこの魔大陸まで辿り着くことができないからだ。
「なんだ、この巨大な人間は……?」
魔王が自分よりも巨大なスーパー村長を見て驚いている。
いや、本物の人間じゃないからね?
「聖水も持ってきた」
「ありがとう! それが無くてピンチだったんだ!」
こんなこともあろうかと、スーパー村長には聖水も運んでもらっていた。
でも敵も聖水を警戒しているはずで、どうやって受け取って使用すればいいのだろうと思っていると、
「聖水砲も作った」
「聖水砲!?」
スーパー村長がどこからともなく取り出したのは、巨大な発射機だった。
「発射」
そこから凄まじい勢いで水が発射された。
もちろんただの水ではなく聖水だ。
「「「ああああああああああっ!?」」」
大量の聖水を全身に浴びて、魔族たちが絶叫する。
呪いの黒い靄があっという間に身体から出ていき、消失した。
それは魔王も例外ではなかった。
先ほどのようにより濃密な靄が噴き出してくる。
『ば、馬鹿なっ……何という量のっ……聖なる力だっ……我が呪いがっ……消えて、い……』
一瞬だけ邪神の姿を形成しかけたけれど、すぐに薄れて掻き消えてしまった。
「……わ、私は一体……?」
魔王が困惑しながら周囲を見渡す。
その雰囲気は明らかに先ほどまでとは別人だ。
相変わらず筋骨隆々の戦闘魔族らしい体躯の持ち主だけれど、むしろ柔和な印象すら受ける。
どうやら正気を取り戻したらしい。
「そうだ……あの日、突然、頭の中に声が響いてきて……うっ……何だ、この記憶は……? 私は何をしていたんだ……?」
邪神に操られている間のことを思い出したのか、頭を抱えて呻き出した。
「まさか、この私が魔王だって……? しかも魔族たちを扇動し、人間の大陸に攻め込んで侵略しようとした……? な、なんて恐ろしいことをっ……」
「おいおい、本当にさっきまでのやつと同一魔族かよ?」
あまりに激変した態度に、ラウルが少し呆れている。
「そういえばダイモン族は本来、温厚な魔族だと聞いたことがある」
「温厚? 戦闘魔族って言われてるんじゃないの?」
思い出したように言うフィリアさんに、疑問をぶつけるのはセレンだ。
「それはやつらを怒らせた場合だ。自分たちから攻撃を仕掛けるようなことはまずない」
「ビビさん、また正気に戻ったんだね」
「ああ、お陰様でな。しかし済まなかった。警戒はしていたが、またも簡単に呪いに侵されてしまうとは……」
「……我も右に同じだ」
悔しそうにするビビさん、そしてガオガルガさん。
「ええと……魔王、と呼んだらいいですか?」
「っ……その呼び方はやめてくれ! 私にはモリルモアという名がある!」
「じゃあ、モリルモアさんと呼びますね」
魔王あらためモリルモアさんに声をかけると、酷く焦燥し切った様子で謝罪してきた。
「本当に申し訳なかった……っ! 信じてもらえるか分からないが、どういうわけか、私は今の今まで我を失ってしまっていたようなのだ……っ!」
……身体の大きさは変わってないはずなのに、急に小さくなったように見える。
まぁそれでも僕と比べるとめちゃくちゃ大きいのだけど。
「大丈夫です。それが邪神の呪いのせいだって分かってますから」
「邪神……そうか……そのせいで、私は……」
大きな身体で項垂れている。
「と、とにかく、これで恐らく他の魔族たちも呪いから解放されたはず」
影武者たちに確認してみると、どうやら魔族たちがそろって撤退を始めたようだった。
呪いの根本を絶ったことで、正気に戻ったのだろう。
その後、魔族の各種族の長たちと、今回、魔王軍の攻撃を受けた国の長たちが集い、会談が持たれることになった。
「……開催場所がなぜ僕の村なのか」
「各都市に加勢して魔族を退け、しかも魔大陸に乗り込んで魔王の呪いを解くという、圧倒的な貢献をしたのですから当然でしょう。むしろ人類と魔族の歴史に残る偉業と言っても過言ではないかもしれません。さすがはルーク様です」
「僕は今回、そんなに活躍してない気がするけど……」
幸い被害が少なかったことで、すぐに人魔間での和解が成立した。
「友好の証ということで、魔大陸北端に街を作るのはどうだろう?」
「良いアイデアだ。ぜひ鉄道で各都市と繋いで、気軽に観光に行けるようにしよう」
「テツドウというのが何か分からぬが、友好関係を築く上で役立つというなら我らも最大限の協力をしたい」
なんか勝手にそんな話まで進めてるんだけど?
しかも完全に僕の能力ありきだよね?
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