第458話 良い訓練になりそうだ
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ビビルバ=ルバルベ=ベベル=バルルベ=ルベ
年齢:141歳
愛村心:低
推奨労働:スパイ
ギフト:黒魔法
力:C 耐久:B 器用:B 敏捷:B 魔力:S 運:C
身長174センチ 体重55キロ バスト102センチ ウエスト62センチ ヒップ99センチ
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ダークエルフの鑑定結果が見れるようになった。
さらに詳しい情報も確認できる。
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ダークエルフ族を率いる族長にして、魔王軍の幹部〝六魔将〟の一人。黒魔法と謀略を得意とするが、高い魔力量を誇り、戦闘能力にも秀でる。本来は排他的で、他の魔族との交流もほとんど持たない一方、それほど好戦的ではない。一族の命を懸けてまで人間の国々を侵略する気もないが、邪神の呪いによって魔王の命に服従せざるを得なくされている。
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「これって……」
「う……わ、私は一体……?」
鑑定結果に書かれていた内容に驚いていると、気絶していたダークエルフが意識を取り戻した。
「ここは……? っ、人間っ!? ……そ、そうだ……私は、確か……」
周囲を見渡してしばし唖然としていたけど、やがて気を失う前の状況を思い出してきたみたいだ。
そして突然、その場に膝をついたかと思うと、
「……申し訳なかった!」
深々と頭を下げていきなり謝罪してくる。
「こんなことを言っても信じてもらえないかもしれぬ! だが、私は、いや、我がダークエルフの一族は、決して貴殿ら人間を滅ぼそうと考えるような魔族ではない!」
先ほどまでの態度からの急変に、その場にいた誰もが面食らった。
「おいおい、何だ? つまり何者かに操られて、無理やり人間の都市を襲いました。だから私には何の責任もありません。……って言いてぇのかよ?」
「ルークの命を狙っておきながら、随分と都合のいいことを言うわね?」
「……貴殿らの怒りはもっともだ。もちろん、何の咎も負わないなどとは言わぬ」
ラウルとセレンの指摘に、ダークエルフは神妙に頷きながら、
「私自身にも、一体何が起こったのかは理解できぬ。ただ突然、自らを魔王と名乗り出した男と相まみえた直後から、なぜかその言葉を絶対視し、服従しなければならないと思うようになってしまったのだ」
「本当かしら? 嘘を吐いて、上手くこの場を切り抜けようと思っているんじゃないの?」
「ですが先ほど、この大聖堂で確かに強力な呪いが解呪されたのを見ました。それが魔王によるものだったのでは?」
セレンが疑いの目をする一方で、ミリアは信憑性があると思ったようだ。
僕もそれに同意した。
「……多分、彼女の言ってることは本当だと思う」
なにせ鑑定結果に書いてあった内容と辻褄が合う。
それによると魔王の呪いというより、邪神の呪いのようだけど。
邪神がどんな存在なのかは分からないけど、神というからにはそれだけ強力な呪いを施せてもおかしくはない。
「その呪いって、もしかして他の魔族たちもかかってるってこと?」
「……恐らくそうだ。我が同胞たちも、本来なら魔王に従うような者たちではない。他の魔族たちも同じだろう。人間に対する恨みを持つ種族もいるが、それでも今の魔族は皆、魔大陸で生まれ育った者たちだ。大きなリスクを冒してまで、人間の大陸に攻め込むほどの動機はないはず」
つまり邪神の呪いは、すべての魔族に影響を与えるほどの広範囲に及んでいるようだ。
「だったら片っ端から魔族を捕まえて、呪いを解いていけばいいってことね」
「簡単に言うが、骨が折れるぜ? どう考えても殺す方が遥かに楽だ」
とりあえずすでに捕縛した魔族については、大聖堂に連れていって呪いを解いていくことにしよう。
ただ、ラウルが言う通り、全魔族に対してそれをするのは難しいだろう。
「でも悠長にはしてられない。またどこかの都市を襲撃してくるかもしれないし」
まぁ緒戦で悉く敗北を喫したわけで、そうすぐには再攻撃とはいかないだろうけど。
「……魔族である私がこのような提案をするのはおかしな話かもしれぬが、この戦いを手っ取り早く止める方法がある」
「と、いうと?」
ダークエルフは真剣な顔で告げた。
「魔王を倒す。それが一番の近道だ」
「ここが魔大陸……?」
「ほう、なかなか悪くねぇな。凶悪な魔物がうじゃうじゃいそうで、うちの兵士どもを連れてくれば良い訓練になりそうだ」
瞬間移動を使い、僕は再び魔大陸へとやってきた。
「魔王のところまで案内してくれるんだよね?」
「ああ。この大陸には、足を踏み入れるべきではない危険地帯も数多くある。そこを避けつつ魔王の元へと辿り着くには、現地をよく知る者の案内が必須だろう」
精鋭部隊を結成し、魔王を倒すために乗り込んできたのだ。
しかもダークエルフのビビさん――本名が長いのでそう呼ぶことにした――が自ら魔大陸をガイドしてくれるという。
「ちなみに今は地図上でこのあたりだと思う」
「随分と杜撰な地図だな。いや、人間たちが作ったものなら当然か。紙とペンがあれば、もう少し正確なものを描いてみせよう」
そう言って、すらすらと紙に魔大陸の地図を描いていくビビさん。
簡単な地形だけでなく、危険な地帯や種族ごとのおおよその縄張りなども書き込んでいる。
「すごい。ビビさんがいれば、先に上陸した父上たちよりも早く魔王のところに辿り着けそうだね」
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