第457話 あんたは引っ込んでなさいよ
やはり相手は魔族。
しかも六魔将とかいう、魔王軍の幹部だ。
ネマおばあちゃんでも、簡単に内情を暴露させるのは難しいようだ。
「ネマ老ですら、匙を投げるとは。……ここはひとつ、拙僧に任せてもらえぬか?」
「あんたは引っ込んでなさいよ。どうせ美人だからエロいことする気でしょうが」
なぜかガイさんが手を挙げ、それをハゼナさんが一蹴する。
「確かに素晴らしい美貌と魅惑的な肢体の持ち主ではあるが……決して劣情から来るものではない。この魔族からはどことなく邪悪な気配を感じるのだ」
「魔族なんだから当然でしょ?」
「いや、それだけではない。詳しくは分からぬが……何というか……そう、言ってみれば呪いに近い感じであろうか」
呪い、か……。
ガイさんの言葉に、僕は少し引っかかるものを覚えた。
実はこのダークエルフをいったん村人として登録し、それから村人鑑定を使うことで、強引に詳しい情報を得ようと試してみたのだ。
だけど、村人登録まではできたものの、鑑定が上手くいかなかったのである。
―――――――――――――
繝薙ン繝ォ繝撰シ昴◆繝舌◆繝呻シ昴◆繝吶◆昴ヰ繝ォ繝ォ繝呻シ昴◆繝
繝▲繝し繧っ繧ぃ
繝ぉ繝輔r縺▲縺溘s譚
台ここ縺ぃ縺励※逋さ骭い縺
励◆√◎繧後°繧画搗莠こ髑大ょ壹r菴
そ縺▲%縺ぃ縺ぁ縲∝しき蠑輔↓隧う縺励>諠◆あ繧貞せ励h縺◆→隧ヲ縺励※縺そ縺
溘□縺□縲ゅ□縺代←縲∵搗莠コ逋サ骭イ縺セ縺ァ縺ッ縺ァ縺阪◆繧ゅ◆縺ョ縲◆荘螳壹□荳頑焔縺上>縺九↑縺九▲縺溘▲縺ァ縺ゅk縲
―――――――――――――
というような感じで、鑑定結果が文字化けしてしまったのだ。
魔族だからかと思っていたけれど、もしかしたら何らかの妨害が働いていた可能性もあるかもしれない。
「ガイさん、一応、試してみてくれる?」
「うむ。では、拙僧と彼女と二人きりに……いや、冗談である、冗談」
ガイさんが使える浄化魔法は、アンデッドを浄化するだけでなく、呪いを解呪するのにも使えるらしい。
「南無!」
鉄格子の向こうのダークエルフを、浄化の光が眩く照らす。
「……はっ、何かと思えば。そんなものに何の意味がある?」
一瞬眩しそうにしただけで、ダークエルフは平然としている。
「うーん、まったく効果があったように見えないね」
改めて鑑定してみても、まだ文字化けしたままだ。
「拙僧の浄化魔法は、解呪専門のものではないゆえ……」
「もっと強い呪いってこと? そうだ、もし本当に呪いだったら……大聖堂で解呪できるかもしれないね。ミリア、今から行ける?」
「もちろん問題ございません、ルーク様。大聖堂であれば浄化も解呪も、そこの禿げ頭の魔法とは比較にもなりません」
そこで僕たちはダークエルフを大聖堂へと連れていくことにした。
牢屋ごと三次元配置移動で運んでいく。
「もはや牢屋ごと動かしてしまう程度では驚かないが……なぜか悪寒がしてきたぞ……?」
大聖堂が近づくにつれ、明らかにダークエルフの様子がおかしくなっていった。
「っ……何だ、この身体の震えはっ……? 貴様っ、一体私をどこに連れて行く気だっ!?」
全身から汗が噴き出し、ガタガタと全身を震わせている。
まるで何かの禁断症状でも出ているかのようだ。
セレンが首を傾げて、
「魔族だから、大聖堂の持つ聖なる空気を嫌ってるってことかしら?」
「うーん、どうだろう? それにしても反応が過剰な気が」
気持ちの悪さくらいは感じるかもしれないけど、アンデッドみたいに、聖域に立ち入っただけで浄化されるようなことはないはずだ。
「や、やめろっ……やめてくれっ……私をそこに連れていくなっ……」
少し前までの冷静さが嘘のように、必死に訴えてくるダークエルフ。
まだ大聖堂に辿り着いていないというのに、この反応だ。明らかに異常だろう。
やがて大聖堂に牢屋ごと到着したときには、ダークエルフはもはや悶え苦しみ、床の上をのた打ち回っていた。
「だ、大丈夫かな? 死んだりしないよね?」
「はっ、そんときはそんときだろ。テメェの命を狙った相手に、下手な同情なんてするんじゃねぇよ」
ラウルにも促され、そのまま牢屋を大聖堂の中へ。
礼拝堂では多くの人々が祈りを捧げていた。
その頭上を通って、牢屋を祭壇の目の前に置く。
「あああああっ!? あああああああっ!? あああああああああああああっ!?」
絶叫を轟かせるダークエルフ。
と、そのときだった。
「っ、見て! 身体から、何か黒い靄のようなものが噴き出してるわ!」
「間違いない。呪いであろう。強力な呪いが、この大聖堂の聖なる空気を浴びて、浄化されようとしているのだ。しかし何と禍々しい……」
やがて靄が薄れ、消失していく。
それと同時に苦しんでいたダークエルフが静かになり、ぱたりとその場に倒れ伏した。
「生きてる?」
「ああ、死んではなさそうだぜ。息をしてる。しかし、中にいるだけで呪いが解呪されちまうとか、どうなってんだよ、この大聖堂は……」
呆れているラウルを余所に、僕はダークエルフに村人鑑定を使う。
―――――――――――――
ビビルバ=ルバルベ=ベベル=バルルベ=ルベ
年齢:141歳
愛村心:低
推奨労働:スパイ
ギフト:黒魔法
力:C 耐久:B 器用:A 敏捷:B 魔力:S 運:C
身長174センチ 体重55キロ バスト102センチ ウエスト62センチ ヒップ99センチ
―――――――――――――
文字化けが完全に解消されていた。
少しでも面白いと思っていただけたら、↓の☆で評価してもらえると嬉しいです。





