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万能「村づくり」チートでお手軽スローライフ ~村ですが何か?~  作者: 九頭七尾
第五章

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第447話 食べることしか考えてない

「魔境の森の様子がおかしい……?」


 狩猟から戻ってきたセレン一行から受けた報告は、森の異変に関してだった。


「魔物の数が明らかに変なのよ。最初は冬の間にオークの狩りを控えていたから、それでオークが増えているだけかと思ってたけど、増えてるのはオークだけじゃなかったのよ」


 深部はまた別だけれど、魔境の森に棲息する魔物の中で代表的なものは、オークのほかに、ゴブリン、アルミラージ、トレント、ブラックウルフ、グレートボアなどがいる。

 そのどの種類も、以前と比べて増加していたらしい。


「減らしておいたブラックウルフまで、少なくない数と遭遇したわ」


 食用にはできないブラックウルフだけれど、群れでオークを襲って食べることがあるため、積極的に討伐して数を減らしていたはずだった。


「数だけじゃないわ。さっきのオークキングもそうだけど、滅多にいないはずの上位種までいたのよ」


 第一部隊を率いるセリウスくんも頷いて、


「ぼくたちもそうだ。ゴブリンの上位種ゴブリンロード、それにトレントの上位種エルダートレントに遭遇してしまった」


 さらに第二部隊のバルラットさんも同意を示す。


「俺たちはブラックウルフの上位種、ダークウルフに襲われた。二十体近いブラックウルフを率いていて、なかなか厄介だった」


 どうやら三部隊ともそろって似たような事態に見舞われたようだ。


「魔物の増加に凶悪化……それが森全体で起こっているのだとしたら、村としても十分な警戒が必要かも」


 普段はこの荒野にまで魔物が出てくることは滅多にないけれど、このままどんどん魔物が増えていくと、縄張りを追われて荒野に逃げてくる個体も現れるだろう。

 もちろんオークキングの例だってある。


「ま、どんな魔物がどれだけ村に来たところで、今の村の戦力なら余裕よ」

「……それはそうかもしれないけど」


 セレンは楽観的だ。


「でも、しばらく狩りは控えた方がよさそうだね」

「えっ? 何でよ?」

「いや、だって危険でしょ? 何が原因かも分からないんだし」

「せっかくオークが大量発生して、最高の狩りどきなのよ? 美味しいオークキングだって、まだまだいるかもしれないし! って、そんなことより、早くオークキングの肉を味見してみましょうよ! じゅるり」


 ダメだ、食べることしか考えてない……。


「「「賛成~~~~っ!!」」」


 ……残念ながらそれはセレンだけではなかったみたいだ。


 せっかくだから最高の状態で食べたいと、オークキングの肉は村一番の料理人コークさんに調理してもらうことになった。


 素材の味を最大限活かせるようにと、シンプルに塩と胡椒だけを使ったポークステーキ。

 狩猟チームの特権ということで、一人500グラムずつが提供された。


「こ、これがオークキング肉のステーキ……」

「輝いて見える……」

「狩猟チームに入っててよかった……」


 量も限られているし、普通の村人たちには食べるチャンスがほとんどないだろう。


「「「いただきまーす!! ぱくっ!」」」


 一切れ口に入れるや、みんなそろって動きが止まった。

 先ほどまでの騒々しさはどこへやら、一瞬にしてその場が静まり返ってしまう。


 よく見ると目の焦点が合っていない。

 中には白目を剥きかけている人もいた。


「え? どうしたの? もしかしてあまり美味しくなかった……?」


 恐る恐る問うと、次の瞬間、



「「「うまああああああああああああああああああああああああああっ!!」」」



 絶叫が爆発した。


「なんだこの肉は!? 美味し過ぎるだろう!」

「美味すぎて、意識が飛んでしまったぞ!」

「俺は死んだ爺ちゃんが見えた!」


 美味しくて意識が飛ぶってどういうこと!?

 死にかけたような人までいるし!


 でも、めちゃくちゃ美味しそうだ。

 ぼ、僕もちょっとだけ食べさせてもらえないかな……村長権限で……。


 いや、さすがにそれは職権乱用かな……でも、一口くらい……誰か分けてくれたりとかでも……。

 そんな僕の淡い期待も虚しく、全員あっという間に完食してしまったのだった。






 オークキングの肉を実食したことで、狩猟チームは完全に一致団結してしまった。


「今がチャンスよ! オークキングを狩って狩って狩りまくるわよ!」

「「「おおおおおおおおおおおおおっ!!」」」


 どう考えても説得は不可能そうなので、仕方なく許可することに。

 ただし、三つある部隊がバラバラに移動するのではなく、できるだけ近い距離間で行動するようにと約束させた。


 これなら何かあったときに対処しやすいからね。


 そうして翌日の早朝、狩猟チームは再び狩りに出発してしまった。

 無理しないで無事に戻ってきてよ……と願っていると、


『なんか怪しい連中が衛兵たちと揉めてるよ!』


 影武者からそんな緊急連絡が。

 アマゾネスの集団が村に押し入ってきたとき以来だ。


 さらに村の【安全防衛部】の部局長であるサテンからも、念話が飛んでくる。


『大変です、村長』

『うん、影武者からも連絡が来てるよ。門のところで、衛兵と揉めてる集団がいるんだって? どんな感じの人たち?』

『そ、それが……彼らの一人が、こう名乗っているようなのです』


 サテンが告げたその名に、僕は思わず息を呑むのだった。


『私はエデル=アルベイルだ、と』


新作はじめました。よかったら読んでみてください。

『使えないと追い出された生活魔法使い、無限の魔力で生活無双』

https://book1.adouzi.eu.org/n9441ku/

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