第440話 十五歳になった
「本日はルーク様がこの世界に生を受けられた記念すべき日である! さあ、みんなで共に世界の救世主であらせられるルーク様を讃えるのだ!」
「「「ルーク様っ! ルーク様っ! ルーク様っ! ルーク様っ! ルーク様っ!」」」
壇上に立つ神官の言葉に応じ、信徒たちの熱狂的な声が大聖堂に響き渡る。
「ああ、ルーク様! この身をあなた様のために捧げるのぢゃ!」
周囲の熱量に負けじとありったけの声で宣言するのは、東方の美少女。
東方三国の一つキョウ国を治めるメイセイ神王その人だ。
その腕が大事そうに抱えているのは、つい先日、この村で開催されたビューティーコンテストのトロフィーである。
「ルーク村長様……あなた様は間違いなく、私とお兄ちゃんを救ってくださいました……」
一方、涙を流しながら心からの感謝を口にしているのは、身長百七十センチを超える長身の美少女。
ノエルの妹であるノニエだ。
兄と共にこの荒野の村に辿り着いたことで、命を救われた経験を持つ彼女もまた、実は熱心なルーク教の信者なのである。
礼拝堂の外の廊下まで埋め尽くす信徒たちの中には、セルティア王国の貴族や各国の要人たちの姿も少なくない。
村人だけでなく、世界各地から大勢の信徒が訪れているのだ。
三万人ものキャパを持つ大聖堂だが、廊下を含めても到底、一度では収まりきらない。
そのためこの日から一週間は、ルークの生誕を讃えるための特別礼拝が一日に五回ずつ行われることとなったのだった。
◇ ◇ ◇
今日は僕の誕生日。
十五歳になった。
「あれからもう三年なんだね。……あっという間だったな」
三年前、十二歳の誕生日を迎えてすぐ、祝福によってギフトを授かったあの日のことを、今でも昨日のことのように思い出せる。
アルベイル侯爵家の長男でありながら、『村づくり』という戦いに何の役にも立たないギフトを授かったことで、僕の人生は大きな転換を迎えることになったのだ。
「ラウルの提言で、事実上、家から追放されたときは悲嘆するしかなかったけど……まさかこのギフトがこんな力を持ってたなんてね」
『村づくり』のギフトのお陰で、荒野で野垂れ死にせずにすんだばかりか、各地から移住者が訪れ、どんどん立派な村になっていった。
そして気づけば、もはや大都市と言っても過言ではない村にまで成長した。
「いや、言葉がおかしいけど……」
一方、拡大を続ける村とは裏腹に、僕の身長は十二歳の頃からほとんど伸びていない。
しかもこの一年は完全に伸びがストップしてしまっていた。
「うううっ! 何で村ばっかり大きくなるんだよぉっ!」
そんな僕の誕生日から、この荒野に村を作り始めた建村記念日までの約十日間は、建村三周年を祝う盛大なお祭りが開催されることになった。
村のあちこちが華やかに飾り付けられ、踊りや演奏を伴う賑やかなパレード。
人々は思い思いに仮装したり美しく着飾ったりして、村の料理人たちが振る舞う食事を楽しんでいる。
どのお店も大盤振る舞いの大セールを展開していて、村は大賑わいだ。
もちろん村の外からも観光客が殺到し、ホテルの予約がどこも満杯になってしまったので、新しくギフトで増設したほどである。
「大聖堂にもすごくたくさん参拝客が来てるみたいだし……」
建村三周年ではあっても、別に宗教的に意味のある日が近いわけじゃないはずなのに、何でだろう?
そして宮殿、もとい僕の家にも、引っ切り無しに来客がきた。
僕の誕生日と建村を祝いたいと、プレゼントを持った要人たちが入れ代わり立ち代わり訪ねてきたのである。
数が多くなり過ぎて処理できないからと、村人たちにはあらかじめプレゼントは贈らないでねと伝えていたので大丈夫だったけれど、村外の要人に対してそういうわけにもいかなった。
「村長ルークよ、十五歳の誕生日を迎えたそうだな。それにこの村の三周年だと聞いた。大変めでたいな(むしろまだ三年なのか……それでこの大都市……ううむ、出鱈目にもほどがある……)」
セルティア王国の王様、ダリオス十三世もその一人だ。
自らプレゼントを持ってきてくれたらしい。
「あたくしからもプレゼントですわ!」
娘のダリネア王女も一緒だった。
王様のものとは別に自ら用意してくれたらしく、何やら立派な箱を渡される。
「(うふふふ……あたくしがありったけの想いを込めに込めて作ったぬいぐるみですわ……もちろん想い以外のものもたっぷり込めてありますの……ふふふふ……)」
……何が入っているか分からないけど、なぜだか箱越しでも異様な気配が感じられる。
「あ、ありがとうございます。でも、わざわざ来ていただかなくても……」
一国の王様が一介の村長のもとへ自ら訪れて贈り物を渡すなんて、普通はあり得ない話だろう。
「なに、普段からお忍びでよく来ておる。この村の娼婦たちはレベルが高――」
「……お父様?」
「こ、この村の名物料理の一つ、オーク肉のトンカツが余の大好物なのだ!」
ダリネア王女に睨まれ、王様は慌てて言い直した。
「ところで、十五歳となると、もうなかなか良い年であろう。どうだ? そろそろダリネアを嫁にでも……」
「あ、では帰りは瞬間移動でお送りしますね」
「ちょっ、待て、話はまだ――」
他にもカイオン公爵やタリスター公爵、シュネガー侯爵、さらにはセレンやセリウスくんのお父さんであるバズラータ伯爵など、王国の名だたる諸侯たちがやってきては、
「ぜひうちの娘を」
「我が娘を! 側室でも構わぬぞ!」
「え? まだセレンと結婚しないのか?」
どいつもこいつも……。
彼らの応対だけでどっと疲れてしまった。
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