第434話 悪いところが出ちゃったかも
東チームのリーダーは新婚エルフのフィリアさん。
そこに夫のセリウスくんも加わった強力な布陣だ。
「セリウス殿」
「うん、行くよ!」
ゴオオオオオオオオオオオオッ!!
彼らのチームを後押しするように、猛烈な風が吹く。
二人は共に『緑魔法』のギフトの持ち主で、魔法で風を発生させたのだ。
風魔法で直接攻撃するのは禁止されているけど、雪玉の勢いを風で加速させるのはルールの範囲内。
しかも敵の雪玉は逆風で押し返されてしまうので、圧倒的に有利な状況を作ることができる。
「うーん、東チームも強そうだね」
一方、西チームのリーダーはラウル。
「って、なんでラウルが!?」
「はっ、なかなか面白そうなイベントだったからな! 武闘会じゃ不覚を取っちまったが、今度は優勝してやるぜ!」
西チームにはラウルの副官であるマリンさんもいた。
王国軍は大丈夫なのかな……。
さらに前回優勝の立役者であるディルさんもこのチームだ。
ここも優勝候補の一角か、と思いきや、
「おらおらおらああああああっ! 攻めて攻めて攻めまくるぜえええええっ!」
試合開始の直後から、ラウルが自ら先陣を切ってガンガン前に出ていく。
それに叱咤されるようにメンバーたちも後に続いた。
「あらら、ラウルの悪いところが出ちゃったかも……」
そして最後の南チームを率いるのはゴリちゃんだ。
「アタシたちもどんどんイクわよおおおおおおおおおおっ!」
こちらも西チームに負けないくらい攻撃的だった。
同じく積極的だった西チームと激しくぶつかり、壮絶な潰し合いが繰り広げられる。
「サムライの投擲力を見せてやるでござる!!」
「えい」
「ぶほっ!?」
そんな中、自信満々で雪玉を投げようとしていた南チームのアカネさんは、西チームで弟のゴンくんの雪玉を顔面に浴びて即アウト。
「切腹いたすううううううううううううっ!!」
「くくく」
……また腹を斬ろうとしてるけど、もう放っておこう。
一方、ゴリちゃんとラウルは武闘会の決勝以来の好勝負を展開していた。
「どりゃああああああっ!!」
「はっ、相変わらず出鱈目なパワーだなァ!」
巨大な雪玉を凄まじい速度で投げつけるゴリちゃんに、雪の上とは思えない俊敏な動きを見せるラウル。
しかしそんな彼らの戦いに割って入ってきたのが東チームだった。
フィリアさんとセリウスくんの風に後押しされた雪玉が、乱戦状態の西と南チームの頭上へ降り注ぐ。
「ああんっ!? 当たっちゃったわぁん!」
「なっ!? くそっ!? オレもやられちまったじゃねぇか!」
二人の戦いに熱中していたこともあって、ゴリちゃんとラウルがあっさりアウトになってしまう。
さらにやはり風によるアシストは強力なようで、南チームと西チームが、東チームの猛攻で瞬く間に数を減らしていき、気がつけば全滅していた。
だが二つのチームを壊滅に追いやった東チームに、ここまで守りに徹していた北チームが襲い掛かった。
「「って、雪がない!?」」
東チームが気づいたときには、すでに周囲の雪が北チームによって消失していた。
攻撃手段を無くしてしまった東チームは、もはや北チームに一方的に蹂躙されるだけだ。
ていうか、雪が無くなったら次の試合ができないじゃん……。
結果、制限時間の三十分も立たずに、残るのは北チームだけなった。
「これで第一試合が終わって、北チームが一位、東チームが二位、三位は南か西かどっちかな? ……あれ?」
全滅したと思っていた西チームだけれど、どうやら一人まだ生き残りがいたみたいだ。
「……こういうこともあろうかと……一人、隠れていたのだ……」
隠密行動が得意なディルさんだ。
その後、北チームから追い回されてアウトになったものの、一人でも残っていたらいいというルールに則り、西チームが二位になった。
三位は東チーム、四位が南チームである。
「幸先のいいスタートを切れたわね! だけど、まだ一試合目! 次も気合入れていくわよ!」
「ああん、最下位になっちゃったわん! でも、勝負はこれからよぉ!」
セレンとゴリちゃんは対照的な結果になったね。
ただ、残り二試合あるので、まだまだ挽回は十分可能だ。
しかし北チームのせいで雪がかなり少なくなってしまったので、次の第二試合をすぐに始めることはできなくなった。
他の場所から雪を運んでくるという作業が行われたのだ。
さらに第一試合で一位を取ったこともあり、北チームは完全に他のチームから標的にされてしまった。
第二試合で三チームからの猛攻を受けることに。
その結果、第二試合では真っ先に全滅し、今度はラウル率いる西チームが一位を獲得、総合ポイントも一位へと躍り出た。
もちろんそうなると次は西チームが標的となり、第三試合では真っ先に全滅。
逆にそれまでずっと総合ポイントで最下位だったゴリちゃん率いる南チームが油断され、一位を獲得した。
「なんていうか、四つ巴らしい展開になっちゃったね……。さて、優勝チームは、と……あれ? 東チーム?」
優勝 東チーム 十八点(三位、二位、二位)
二位 西チーム 十七点(二位、一位、四位)
三位 北チーム 十四点(一位、四位、三位)
同率三位 南チーム 十四点(四位、三位、一位)
最終的に優勝となったのは、十八ポイントを獲得した、フィリアさん率いる東チームだった。
一度も一位になれなかったけれど、お陰で他のチームからターゲットにされにくくなり、こつこつとポイントを稼いでいたらしい。
「まぁ、一応白熱して盛り上がったから、いいんじゃないかな、うん……」
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