第433話 昨年のリベンジを果たさないと
村に三度目となる冬がやってきた。
大陸でも北方に位置するこの村は、冬の訪れが早い。
降雪量も多くて、僕のギフト『村づくり』の力がなければ、村を行き来するのは難しかっただろう。
今は地下を通る鉄道のお陰で、雪の影響は皆無だ。
お陰で冬になっても、大陸各地から引っ切り無しに観光客や参拝者が村を訪れていた。
昨晩、早速とばかりに雪が降った。
二十センチを超える積雪になって、朝から子供たちがはしゃぎ回っている。
……中には子供以上にはしゃいでいる人もいるけど。
「おおおおおおおっ! 雪でござるううううっ!」
ばふっ!
「むむっ! ちょっと腕の部分が甘かったでござるな!」
ばふっ!
「よおし! 奇麗にできたでござる!」
雪の上に大の字に倒れ込み、自分の形を刻んで遊んでいるのは、東方出身の剣士であるアカネさんだ。
別に東方でも雪は珍しいものじゃないだろうに……。
そんな中、僕のところへ、ある提案をしてくる村人が。
「村長、今年も雪合戦をしよう!」
つい先日、エルフのフィリアさんと結婚したばかりのセリウスくんだ。
「え? 今年もやるの?」
「もちろんだ! 昨年のリベンジを果たさないと!」
昨年の冬、村を挙げて行った雪合戦。
ほぼすべての村人たちが参加したこのイベントは、東西二チームに分かれての殲滅戦だった。
つまりどちらかのチームの最後の一人がやられるまで行うというもので、そのルールのせいで決着までめちゃくちゃ時間がかかってしまった。
最後に残ったのが、東チームのセリウスくんと西チームのディルさんで、この一騎打ちは全然決着がつかず、他のみんながとっくに普段の生活に戻る中、一週間くらい戦い続けていたと思う。
最後に勝者となったのは西チームのディルさん。
疲労に耐え切れなくなったセリウスくんが転寝してし、その隙にディルさんが雪玉を直撃させたのだった。
「でも、耐久レースでディルさんに勝って、それでリベンジしたんじゃないの?」
「何を言ってるんだ、村長? 雪合戦のリベンジは雪合戦でしか果たせないに決まってるだろう?」
「あ、そう……」
真顔で言われて、僕は曖昧に頷くしかない。
やっぱり姉弟だね……セレンに似て、セリウスくんも極度の負けず嫌いのようだ。
「分かったよ。でも今年は制限時間を設けよう。ルールもちゃんとして審判もつけよう」
前回はかなり曖昧なルールでやったし、雪玉に当たったかどうかは自己申告だったので、たぶん誤魔化した人も多かったと思う。
「村人の数も増えてるし、希望者参加型にしようかな」
去年も別に強制参加とかではなかったのだけど。
開催を決定してから一週間後。
前日にまた雪が降ったその日、第二回雪合戦が開催されることになった。
ちなみに【環境生活部】と【経済産業部】が協力してイベント実行委員会を結成し、ルール設定や準備に取り組んでくれた。
前回は村全体をフィールドにしたけれど、今回は観光客や参拝客も多くいるので、特別に雪合戦用の無人フィールドを作った。
家屋が立ち並ぶ住宅地だ。
〈住宅地:複数の住宅が集まった区域。家屋の大きさ指定可能。犯罪、騒音防止〉
後々これを実際の住宅地として利用する予定の場所を、雪合戦のフィールドとして使ってしまおうというわけである。
今回はチームを東西南北の四つに分けた。
そしてフィールドの四か所にそれぞれの本陣を設け、事前に各チームに振り分けられた参加者たちが集合する。
参加人数は総勢約五千人。
つまり各チーム千人を超える大所帯である。
当然ながら審判員もかなりの人数が必要だった。
基本的には雪玉が身体に当たったら自己申告でアウトになるのだけれど、万一それを誤魔化したのが審判にバレるとペナルティが課されることになる。
前回同様、敵チーム全員をアウトにすれば勝ちとなる殲滅戦だけど、今回は四チームなので最後まで生き残った順に、十点、七点、四点、零点とポイントが加算されていく。
一つの試合の制限時間は三十分で、そのときに生き残っているチームが複数あれば、残った人数に応じて順位が付けられる。
試合は全部で三回行い、最終的にポイントを一番多く獲得したチームの優勝だ。
なお、武器や魔法の使用はOKだけど、それで人を攻撃するのは禁止されている。
「それじゃあ、第一試合開始!」
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」」
試合開始の合図とともに、各チームの出場者たちが一斉に雄叫びを上げて動き出す。
「でも各チーム、全然違う動きをしてるね」
各チームにはリーダーを置いているので、それぞれ作戦を練ってきたのだろう。
北チームのリーダーはセレンだ。
「やるからには絶対に勝つわよ!」
「「「おおおおっ!」」」
村人たちからも人気の高い彼女の鼓舞に威勢よく応じつつも、チームメンバーたちはその場からは動かず、何やら陣地周辺の雪を壁のように積み上げていく。
どうやら雪の防壁を作るつもりらしい。
セレンにしては珍しく守りを固める作戦に出たようだ。
「ファイアジャベリン!」
「しかもハゼナさんが陣地の周りの雪を魔法で溶かしてる!?」
北チームメンバーの冒険者ハゼナさんが、炎で周辺の雪を消失させ、敵チームが雪玉を作れないようにしていた。
一方、彼女たちの方はセレンが魔法で雪そのものを作り出せるので、雪に困ることはない。
セレンがこんなに賢い作戦を立てるなんて……と思ったら、チーム内にネマおばあちゃんがいた。
「いっひっひっひ、一方的に敵を嬲り殺すのは楽しいねぇ」
北チーム、強いかも……っ!
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