第430話 どこに捨ててきたらいいんだろ
ロックドラゴンをどうにかできないなら、都市の方を動かせばいい。
そう考えた僕は、都市を丸ごと三次元配置移動で空に浮かせることにした。
「以前、村ごと移動させたこともあったしね」
都市に向かって突っ込んできていたロックドラゴンは、当然その目標物が空に逃げていったため、思わず足を止めた。
何となくぽかんとした顔で、こちらを見上げている。
「相変わらず出鱈目すぎだろ……」
「武闘会でのアタシたちの戦いが、とってもちっぽけなものに思えてしまうわぁん」
「違いねぇ」
なぜか遠い目をして頷き合っているラウルとゴリちゃん。
「とはいえ、あくまでも一時凌ぎでしかないよ。この都市が帝国を護る防波堤だったわけで、このままじゃ何の解決にもなってない」
要塞都市を無視して北上し、他の都市に向かわれては何の意味もないのだ。
ただ、ひとまず時間を稼げたのは大きい。
「うーん、どうすれば……」
「つーか、こんな都市ごと持ち上げるなんて真似ができるんならよ、あのロックドラゴンごと持ち上げちまえばいいんじゃねぇのか?」
「っ、それだ! さすがラウル! 賢い!」
ラウルの提案に、僕はハッとさせられた。
即座に僕は、ロックドラゴンがすっぽり乗れる大きさの公園を、その足元に作り出す。
それを三次元配置移動で持ち上げると……。
「「「ロックドラゴンが浮いたああああああああああああああっ!?」」」
帝国兵たちが驚愕の声を響かせる中、僕はどんどん高度を上げつつ、ロックドラゴンを都市から遠ざけていく。
「~~~~ッ!? ~~~~ッ!? ~~~~ッ!?」
翼を持たないロックドラゴンは、生まれて初めて空を舞ったことに戸惑っている。
「どこに捨ててきたらいいんだろ?」
「やっぱ海じゃねぇか?」
「なるほど。そうしよう」
公園に乗せたロックドラゴンを、海に向かって運んでいく。
村の範囲の問題で、南方向にはあまり移動できないため東の方角だ。
途中、巨大な山脈を横断しつつ、運び続けること数時間。
ようやく海が見えてきた。
「でも、できるだけ深いところじゃないと」
陸に上がって来られては困るため、かなり遠洋まで出た方がいいだろう。
もしかしたら海中でも生きていける可能性もあるし。
マップ機能で海の深い場所を探っていると、陸地から三百キロほど進んだところあたりで、急激に深くなっていることが分かった。
長細い溝のようになっているので、海溝というやつだろうか。
さらに数時間かけてそこまで到達したところで、公園を傾けていく。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!?」
海に落とされることを理解したかどうかは分からないけれど、慌てたように咆哮を轟かせるロックドラゴン。
どんどん傾いていく公園に必死にしがみ付いていたものの、やがて耐えられなくなって勢いよくズリ落ちていく。
「~~~~~~~~~~~~ッ!?」
バシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!
盛大な水飛沫を巻き上げながら、巨大な身体が海に落下。
もちろんその大重量で泳ぐことなどできるはずもなく、ロックドラゴンは深海へと沈んでいったのだった。
ロックドラゴンの排除に成功した僕は、空に飛ばしていた都市を地上へ降ろしていった。
ただし単に地上に戻しただけじゃない。
まだそれなりに残っていた樹海の魔物の上へと、都市を降ろしていったのだ。
ロックドラゴンがいなくなった今、当然ながらこの超重量のプレス攻撃に耐えられる魔物などいるはずもない。
「「「~~~~~~ッ!!」」」
一部の魔物たちは慌てて樹海へと逃げ帰っていった。
「よく考えたら最初からこれをすればよかったね」
そうすれば、空を飛んでいる魔物以外はまとめて殲滅することができただろう。
「……その場合、私たちは必要なかったかもしれないわね」
「姉上、それは言わない方が……」
そうしてあれだけいた魔物が綺麗さっぱりいなくなり、要塞都市には平和が戻ってきたのだった。
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