第428話 余計な力が入っちゃうわぁん
武闘会出場者たちのお陰で、都市に侵入してきた凶悪な魔物が次々と討伐されていく。
その中でも群を抜いて活躍していたのが、やはりセレン、ゴリちゃん、ラウルの三人だ。
「はああああああああああっ!!」
防壁の上を疾走しながら、魔物を斬りつけていくセレン。
斬られた魔物は、その傷口部分から瞬く間に凍り付いて、氷像と化していく。
「な、何なんだ、あの女の子は……」
「剣と魔法、まさかその両方を極めているというのか……?」
「あっちのピンク色のマッチョも凄いぞ……っ!」
「拳一発で魔物が吹き飛ばされていく……っ!」
一方ゴリちゃんはその人知を超えた怪力で、自分より何倍も大きな魔物すら一撃で粉砕してしまう。
その信じがたいパワーに、帝国兵たちが唖然としてしまうほどだ。
「うふぅん、あの決勝の興奮がまだ冷めなくて、ついつい余計な力が入っちゃうわぁん♡」
「はっ! 来年こそボコボコにして、恐怖でしばらく寝れなくしてやるよっ!」
そんなゴリちゃんに負けじと、ラウルが魔物を斬り捨てていく。
「あの男もとんでもねぇぞ!?」
「樹海の魔物を瞬殺していくなんて……」
だがそのときだ。
空で回転していた城壁が、いきなり吹き飛ばされた。
ドオオオオオオオン!!
信じられないことに一体の巨大な鳥の魔物が、城壁を無理やり突破してきたのだ。
そのまま都市の上空まで侵入してくる。
いや、よく見ると鳥じゃない。
獅子と山羊の頭に、大蛇の尾、背中にはドラゴンのような巨大な翼が生えている。
「キマイラ!?」
「くっ、都市の中にっ……」
街の中心部まで飛んでいく異形の魔物キマイラ。
地上にはまだ避難途中の市民がたくさんいて、このままでは多大な被害が出かねない。
けれどそんなキマイラに、空から迫る巨大な影があった。
「あれはっ……機竜!?」
「ここはおらに任せるだ!」
帝国から押収し、村で預かっているドラゴン型の古代兵器、機竜だ。
操縦者であるドワーフの青年、ドルドラの声がスピーカーを通じて響いてくる。
「「「~~~~~~~~ッ!?」」」
機竜が放ったレーザー光線が、キマイラの翼を深々と切り裂く。
いきなり飛行能力を喪失したキマイラは、そのまま地上へと落下。
「「「うわあああああああああっ!?」」」
ちょっ、地上に人がっ!
「あ、やってしまっただ……」
ドルドラさんの後悔の声が聞こえてくる中、僕は慌てて公園を空中に作り出す。
キマイラはそこに墜落した。
「ふう、危ないところだった」
「村長、助かっただ!」
機竜もまた公園の上に着陸すると、墜落の衝撃で目を回しているキマイラに、容赦なく攻撃を見舞っていく。
「あっちはどうにかなりそうだね。それに、魔物もかなり減ってきた」
防壁の外に広がる大地を覆い尽くすほどだった魔物の大群も、すでに三分の一、いや、それ以下になっている。
それに樹海から新たに湧き出してくる魔物も、ようやく少なくなってきていた。
生き残っている魔物からも、心なしか当初の勢いがなくなり、怯んでいるように見える。
このままいけば、どうにか都市を護ることができそうだ。
そう思った直後のことである。
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
いきなり轟いた落雷のごとき咆哮。
ビリビリと大気が震え、そのあまりに圧力に思わず身体が委縮してしまう。
「な、なに、今の……? って、あれは!?」
よろめきながらも視線を向けた先。
樹海が動いていた。
一体何が起こっているのか理解できない。
でも確かに、樹海を構成する木々が、こちらに近づいてきているのである。
「いや、違う……木々も動いてるけど……たぶん、地面そのものが動いてるんだ……地面……っていうか……何だ、あれは……?」
「ウオオオオオオオオオオッ!!」
「っ!?」
再び咆哮。
まだかなりの距離があるため、はっきりとは分からないけど……あの動いている地面から聞こえてきた気がする。
「村長ちゃん! あれは樹海が動いてるんじゃないわぁっ! 巨大な魔物の背中に、樹海の一部が乗っかってるのよぉっ!」
「え、あれが魔物っ!?」
やがてそれが樹海から姿を現す。
背中に樹海の木々を乗せた巨大な岩の塊は、よく見るとドラゴンの形状をしていて――
「まさか、ロックドラゴンっ!?」
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