第427話 すいません、僕がやってます
城壁を空に作り出すと、九十度ひっくり返し、広い面を上下にした状態で魔物の溢れかえる地上へと落としていった。
ドオオオオオンッ!!
ドオオオオオンッ!!
ドオオオオオンッ!!
城壁が落ちる度に轟音と地響きが発生し、次々と樹海の魔物が潰れていく。
「な、何が起こっているんだ……」
「この魔物の大群に加えて、空から落ちてくる巨大な壁……何かの天変地異か……?」
「だが明らかに魔物を狙って落ちている……先ほどの現象といい、もしや神々が我らに力を貸してくれているのか……」
神々の御業と勘違いしている帝国兵たち。
ええと、すいません、僕がやってます……。
「「「グルアアアアアッ!!」」」
「って、城壁プレスを喰らっても、まだ生きてる魔物もいるんだけど!?」
信じがたいことに、城壁の下から這い出してくる魔物がいた。
しかも決して少なくない数である。
「これが樹海の魔物……普通に襲われたら一溜りもないよね……」
その強さに戦慄していると、
「「「うわああああああっ!?」」」
防壁の方から大きな悲鳴。
視線を向けると、巨大な蜘蛛の魔物が防壁に取りついていた。
あちこちに糸を吐き出し、兵士たち数人がそれに拘束されて身動きが取れなくなっている。
他の兵士たちがどうにか仲間を救出しようと試みるが、一人また一人と、糸を浴びて二の舞と化していた。
さらに別の場所では、全身から雷を放つ虎の魔物によって、兵士が次々と感電させられている。
他にも、宙を舞いながら強力な魔法を撃ちまくる真っ赤な身体のゴブリンや、周囲の景色に擬態することで姿を眩ますことができるカメレオンのようなリザードマンなど、凶悪な性質を持った魔物に、大いに苦戦していた。
「連れてきたよ!」
「っ! 助かる!」
とそこへ、影武者が瞬間移動で現れる。
引き連れてきたのは、セレンやゴリちゃん、ラウル、それに武闘会の本戦で活躍した面々だった。
「よく分からないまま連れてこられたけど、なかなか大変な状況みたいね!」
「ああんっ、早く助けなくちゃいけないわぁん!」
「他国の軍人の俺が手を貸すと色々と面倒なんだが、そんなこと言ってる場合じゃなさそうだな」
一瞬で事態を察した彼らは、すぐさま帝国兵たちの加勢に入ってくれる。
「な、何だ!? 加勢!? 一体どこから!?」
「しかも明らかに帝国兵ではないぞ!? どういうことだ!?」
突然の救援に驚きつつも戸惑う帝国兵たち。
だが今は余計なこと考えている暇などないと理解し、ひとまず援軍を受け入れることにしたようで、
「よく分からないが、力を貸してくれるならありがたい!」
「というか、めちゃくちゃ強くないかっ!?」
さらに影武者は、本戦には出れなかったけれど、二次予選まで進んだ猛者たちもどんどん連れて来てくれた。
「これほどの戦士たちが、どこからともなく湧いて出てくる……」
「やはり神の御業……」
防壁の上や都市の中まで侵入し、帝国兵が大いに苦戦させられていた魔物を、あっという間に殲滅していく。
ちょうど武闘会の直後で、力のある戦士たちが集結していたのは不幸中の幸いだったかもしれない。
しかも武闘会で戦ったライバル同士で、共闘する者たちもいた。
「ここで大きな戦功をあげて、サムライの力を見せつけるでござるっ! ……って、背後からっ!?」
「はっ!」
「マリン殿!? た、助かったでござる……」
「お気を付けください、アカネ様。ここに集うのは魔境の凶悪な魔物。あらぬ方向から攻撃を仕掛けてくることもあります。できる限り徒党を組んで、対応するのが適切かと」
「う、うむ……」
本戦一回戦で激突したアカネさんとマリンさんだ。
「チェリュウ殿、私が弓で援護しよう。周囲を気にせずガンガン行ってくれ」
「はっ、ならお言葉に甘えるとするぜっ! オラオラオラアアアアアアアアッ!」
こちらはフィリアさんとチェリュウさん。
「アレク殿! あの巨大蜘蛛、どう対応すればよい!?」
「ちっ、マザータラントかっ! やつの糸は強靭な上に耐火性もあってめちゃくちゃ厄介だ! 糸を作り出す器官を真っ先にぶっ壊すしかない! あのケツの辺りだ!」
「おいらに任せるべ! 一撃で粉砕してやるだ!」
さらにマリベル女王とアレクさん、それにドワーフのバンバさんも、協力して強敵に挑んでくれている。
実際に戦って相手の強さを理解しているからこそ、即席のパーティなのに信頼ができるのだろう。
「チョレギュ殿! ぜひ拙僧と力を合わせて――」
「邪魔だ、消えな! くそ雑魚ハゲ!」
……ガイさんはアマゾネスのチョレギュさんにあっさり拒絶されていた。
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