第422話 きっとこれはもう運命ねぇ
三回戦の第一試合はアレクさん対マリンさん。
開始から一進一退の激しい攻防が繰り広げられるも、両者なかなか決め手に欠く状況が続いた。
だけど最後はやはりベテランの経験値がモノを言ったのか、アレクさんが勝利を収めた。
「ラウル様、申し訳ありません」
「いや、むしろ頑張った方だ。あの男、決して突出した強さというわけじゃねぇが、クレバーな戦い方をしやがる」
敗退となって謝るマリンさんに、労いの言葉をかけるラウル。
「後は俺に任せておけ」
これでラウル率いる王国軍の出場者は、ラウル一人を残すのみとなった。
そして第二試合はゴリちゃんとセリウスくんとなった。
実は前回の大会でも、準決勝でぶつかった二人だったりする。
「前回は手も足も出なかったけれど……今のぼくは一年前とは違う! 行くぞっ!」
「うふぅん、ということは、あのとき以上にアタシを熱くさせてくれるのねぇっ!」
自ら宣言した通り、セリウスくんはこの一年の成長を証明するように、ゴリちゃん相手に一歩も引かない戦いを見せた。
ただ、ゴリちゃんは攻撃を受ければ受けるほど、強くなるという特異体質(?)の持ち主だ。
全身を覆う闘気が強さを増していくにつれ、次第にセリウスくんが劣勢に。
「イクぅぅぅぅぅぅぅぅううううううううううっ!」
最後は恍惚な表情で絶叫するゴリちゃんの猛攻に耐え切れず、前回に続いてセリウスくんは敗れ去ってしまった。
「ハァハァ……うふふ、確かに去年より、ずぅっと強くなってたわぁん」
第三試合はフィリアさん対ラウル。
セリウスくんが負けたこともあって、自分こそはと意気込むフィリアさんは、試合開始から一気に勝負を決めにかかった。
風を纏う猛烈な速度の矢を次々と放ち、接近することすら許さずに、ラウルを倒してしまおうとしたのである。
「……っ!? チィッ!」
これにはさすがのラウルも驚いた様子だった。
それでも迫りくる矢という矢を剣で斬り飛ばしながら、少しずつ距離を詰めていく。
もちろんフィリアさんも移動して距離を取ろうとする。
「んなところで使いたくなかったが、仕方ねぇっ……奥の手だっ! 縮地っ!」
「っ!?」
最後は突如として姿を消したラウルが、次の瞬間にはフィリアさんの目の前に出現し、そのまま強烈な斬撃一発で勝利をもぎ取った。
「い、今、一体何をしたのでしょうか!? まったく動きが見えませんでしたが……」
「……恐らくは……縮地……相手との距離を瞬間的に詰める、特殊な走法……だが、人間には不可能な芸当だと言われている……まさか、それをこうして、この目で拝めるとは……」
解説のディルさんも驚愕する中、ラウルはベスト4に進出。
そして最後の第四試合は、セレン対ララさん。
獣人の高い身体能力を生かして戦うララさんは強敵だったけれど、セレンが快勝し、優勝候補の一角としての実力を見せつけた。
「さあ、これでベスト4が出そろったああああっ! いよいよ明日、準決勝、そして決勝が行われます! 果たして王国最強の称号は誰の手に!?」
そして翌日。
王国中がこの武闘会の話題で持ちきりとなる中、準決勝が始まった。
第一試合はアレクさん対ゴリちゃん。
実は前回大会の準々決勝でもあった対戦カードだ。
「またこうして戦えるなんて、きっとこれはもう運命ねぇ♡」
「……俺はもう二度と、やり合いたくなかったよ」
嬉しそうにウィンクするゴリちゃんに対して、アレクさんは疲れたように返す。
前回の対決では、ゴリちゃん相手に圧倒され、成す術もなくやられてしまったアレクさんだ。
すでにベテランであるアレクさんが、この一年でその差を埋めるというのは難しい。
案の定、まったく歯が立たずに敗れ去ってしまった。
「準決勝とは思えない、一方的な試合展開でした! アレク氏と同じパーティで活躍しているディルさん、残念ながらここで敗退ですね」
「アレクには悪いが……ベスト4まで残った者の中では……圧倒的に格下……これでも十分、善戦した方だ……」
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