第420話 もはや切腹以外に
一回戦の第二試合には、マリベル女王が登場。
『戦乙女』のギフトを持つ彼女は、タリスター公爵領ブロックから予選を突破してきた戦士に勝ち、二回戦へと駒を進めた。
そして第三試合にはガイさんが登場。
相手はアマゾネスのチョレギュさんだった。
「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏……相手の身体に魅惑されてはならぬ……南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏……勝てばあのムチムチの身体も拙僧の思うままに……」
ガイさんは必死に念仏を唱え、煩悩を抑え込もうとしているものの、全然抑え切れてない。
「がああああっ!?」
あ~あ、負けちゃった。
「もっと強い男はいねぇがあああああああっ!」
そしてチョレギュさんは、さらに強い男を求めて二回戦へと勝ち進むのだった。
第四試合には、アカネさんが出場した。
その相手は、ラウルの副官を務めている女性兵士のマリンさんだった。
女性同士の戦いとなったこの試合、両者一歩も譲らぬ白熱した戦いになったものの、最後は『槍技』のギフトを持つマリンさんが勝利を収めた。
「ま、負けた……東方のサムライの力を示そうとしたにもかかわらず、逆にこの大観衆の面前で、一回戦敗退という情けない姿を晒してしまったでござる……もはや切腹以外に――」
そしていつものようにアカネさんが腹を切ろうとしたときだった。
「いい試合だったぞ!」
「負けた方も素晴らしい戦いだったな! 東方の剣士って強いんだな!」
「次もまた出てくれよ!」
観客からそんな声が。
「……う、うむ。今日のところは、やめておくでござる……」
みんなの応援のお陰で、切腹をやめてくれたみたいだ。
ていうか、本当に腹を切るところ一度も見たことないけどね?
第五試合には前回の覇者、ゴリちゃんが登場した。
相手はカイオン公爵領ブロックの猛者だったけど、ゴリちゃんが圧倒的な実力を見せつけて勝利。
「マジであいつに勝てるやついるのかよ……」
「現状、断トツの優勝候補だよな……」
その強さに観客が逆に引いてしまうほど。
第六試合にはノエルくんが登場して危なげなく勝利すると、第七試合ではセリウスくんが、ラウルが送り込んできた王国軍の精鋭に勝利。
次の第八試合が終わったところで一日目が終了となり、残りの八試合は二日目へ。
二日目の第九試合ではフィリアさんが、第十試合ではチェリュウさんがそれぞれ勝利。
そして第十一試合で、ついにラウルが登場した。
相手はバルラットさんだ。
狩猟チームで最初期から活躍している実力者だけれど、ラウルはそのバルラットさんを圧倒した。
「あ、あれが噂の、王国軍最年少の将軍ラウルか……」
「彼ならゴリティアナに対抗できるかもしれないな」
第十二試合には元盗賊の親玉ドリアルが出場するも、敗北。
第十四試合では、前回の準優勝者セレンとカシムの対戦となった。
「クハハハハッ、どれが本物か分かるかなァ!?」
「分からないなら全部斬ればいいでしょ」
「ぎゃあああああっ!?」
カシムが作り出した影分身を、ひとつ残らず斬り伏せていくという荒業で、セレンが勝利。
最後の第十六試合には、ガンザスさんが登場。
その相手はなんと、猫族のボス、リリさんだった。
どうやらカイオン公爵領ブロックから予選に出場し、ここまで勝ち上がってきたらしい。
……なお、ララさんも出場したけど、一次予選で敗退したとか。
一対一なら、圧倒的な耐久力を誇るガンザスさんに分があるかと思われたものの、敏捷さで優るリリさんがヒットアンドアウェイを幾度も繰り返し、最後はガンザスが堪らず膝を屈する形となった。
「無念……」
「ぜぇぜぇ……くそっ、打たれ強すぎだろ、このジジイ……」
試合が終わるなり、リング上に大の字に寝転んでしまうリリさん。
体力の限界だったみたいだ。
「獣人の戦士よ! 次こそは負けぬぞ!」
「てめぇとはもう二度と戦いたくねぇよっ!」
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