第414話 掠っただけかよ
「こっちに来るわ!」
セレンが叫んだ直後、サハギンロードが凄まじい速度で接近してきた。
「がっ!?」
「アレクさんっ!?」
アレクさんが肩を斬られてしまう。
あまりの速さに反応し切れなかったみたいだ。
恐らく自ら水流を操作することで、流れに乗り、泳ぎを何倍にも加速させているのだろう。
サハギンロードはほとんど一瞬で僕たちの間を抜けると、Uターンして再び迫ってくる。
「ぼくに……任せて……っ!」
みんなを護るように前に出たのはノエルくんだ。
構えた盾でサハギンロードの突進を受け止めようとする。
「っ!? すり抜けた!?」
だけどサハギンロードはノエルくんのすぐ脇を抜け、後ろにいたチェリュウさんに躍りかかった。
水流を操ることで、一瞬で泳ぎの軌道を変えたのだ。
「チェリュウさん!」
「おらあああああああああああっ!!」
「~~~~ッ!?」
突き出された三又の槍を、チェリュウさんは信じられない反応速度でギリギリ回避すると、そればかりか反撃の蹴りをサハギンロードに叩き込んだ。
「チィッ! 掠っただけかよ!」
残念ながらそれは上手く敵をとらえることができなかったものの、まさかカウンターがくるとは思っていなかったのか、サハギンロードが慌てたように距離を取る。
そうだった。
チェリュウさん、最近ずっと乙女モードなので忘れかけてたけど、戦闘民族であるアマゾネスたちの中で負けなしだったほどの戦士なのだ。
もちろん他のみんなだって負けてはいない。
「確かになかなかの速さねぇ。でも、アタシのところに来てくれたら逃がさないわぁん?」
「こっちに来たら凍らせてやるわ」
「セリウス殿、二人で風を起こし、逆向きの水流を生み出せばやつの速度を落とすことができるはずだ」
「あ、ああ、やってみよう……っ!」
いつでもこいとばかりに、次の攻撃に備えている。
「さっきは油断しちまったが、もう目は慣れたぜ。次は一発痛いのをお見舞いしてやる」
さらに一度は不覚を取ったアレクさんも、ガイさんに傷を治療され、剣を構え直す。
「ギュギョ……」
付け入るスキがないのか、サハギンロードは距離を取ったまま攻めてこない。
「はっ、そっちから来ねぇなら、こっちから言ってやるぜ!」
そう宣言して距離を詰めていったのはカシムだ。
直後にその身体が二つ三つと分身していく。
それは『暗黒剣技』というギフトを持つカシムの、技の一つ。
僕の影武者と違って、本当に実体のない影なので、攻撃されても素通りするだけだけど、本物を見分けるのは至難の業だ。
影なので水流で吹き飛ばすこともできない。
四方八方から迫ってくるカシムから、サハギンロードは慌てて逃走する。
「おいこらてめぇ! 逃げてんじゃねぇぞ!」
「いや待て、カシム! この水の流れっ……」
そのとき何かに気づいたように、マリベル女王が叫んだ。
「身体がっ……流されるっ!?」
「ルーク!?」
真っ先に影響を受けたのは、残念ながらこの中で一番小柄な僕だった。
サハギンロードはただ逃げていただけではなかった。
この礼拝堂内を泳ぎながら、大きな渦を生み出していたらしい。
僕に続いて、他のみんなも渦に巻き込まれ、ぐるぐると礼拝堂内を回転していく。
これではもはや自由に動くことすらままならない。
「はあああっ! せいいいっ! はあああっ!」
唯一、ゴリちゃんだけが流れに逆らって泳いでいる。
……そういえばゴリちゃん、泳ぐのもすごく得意なんだった。
「ああんっ、流されちゃうううっ!」
だけど渦の回転が速くなっていくと、そんなゴリちゃんでも逆らうことができなくなってしまう。
そんな中、さらに回転の勢いを速めようと泳ぎつつ、サハギンロードは三又の槍を手に、身動きの取れない僕たちに襲いかかってくる。
「この流れをどうにかしなくちゃ……そうだ! 城壁生成!」
回転の向きと垂直になるよう、僕は礼拝堂内に城壁を作り出した。
少しでも面白いと思っていただけたら、↓の☆で評価してもらえると嬉しいです。





